富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

テオ=アンゲロプロスな朝

癸卯年九月廿二日。早朝にカーテンを開けると友人M記者の言葉を借りればテオ=アンゲロプロスな霧の朝のなかにあつた。気温摂氏12.0/23.4度。薄曇。

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昨日3日は(昨日、偶然に岩波書店『図書』2017年2月号を読んでゐて書かれてあつたのだが)昭和24年に作家・田中英光三鷹禅林寺太宰治墓前で自殺した日なのださう。そして同日、湯川秀樹が日本人初のノーベル賞受賞発表で志賀と谷崎が文化勲章受賞(道簱泰三「デカタンと理想」より)。この号(図書)では篠田謙一「宣教師のDNA」が面白かつた。2014年に文京区小日向のマンション建設現場で三体の白骨埋蔵が見つかつての分析について。この場所は通称「切支丹屋敷」で白骨は宣教師シドッチと禁教のなか帰依した日本人夫婦のものとわかる。DNAの分析によるものなのだが白骨の発見がもつと早かつたらDNA分析技術が400年も前の白骨からその民族的特徴まで分析できる技術になく今よりももつと先だつたら今度は白骨のDNA分析に必要なミトコンドリアなどが劣化して分析できなかつただらう、と。まさに今のタイミングだからこそできた奇跡のやうなこと。

電車のなかでは努めて手軽な小冊子なら1冊読むやうにしてゐるので、もう1冊、新潮『波』2019年3月号も読んだ。五木寛之泉麻人の対談「トリローがいた時代」が面白い。三木鶏郎の社会風刺がNHKで放送されてゐた時代。鶏郎の〈日曜娯楽版〉などのプロデューサーであつた丸山鐵雄が丸山眞男の兄だとは知らなかつた。この頃の『波』で連載されてゐた土井善明の連載(おいしく、生きる)も素晴らしい。西洋料理がナイフとフォークを用ゐて肉を切り分け……は自分で食材を自分で「料理にする」過程であつて、だから塩、胡椒での味付けまで。それに対して日本料理は味付けまで出来上がつたものが食べやすいやうに皿に盛られ美意識や情緒までが料理に工夫される。前者が食べる側も人間の力が強いのに対して後者は(こゝまで土井は論を踏み込んではゐないが)成程そこまで用意されたものが供されては人間が受け身になつても当然かもしれない。荷風について(川本三郎の連載「荷風の昭和」⑩)で病気がちの散人が「国手」とまで称賛する大石医師の診療所を清洲にまで足げなく通ふのだが「清洲」といふ地名は深川の「清登」と日本橋の大川の「中洲」から一文字づゝ拝借しての清洲。こんな年になるまでいろ/\お恥ずかしいほど知らないことばかり。

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本当は香炉で炭を炊いて、が良いのだけれど(松榮堂の「みやこ炭」が手軽と久ヶ原T君から)電気式香炉(日本香堂電子香炉「sizuro」)も重宝してゐる。煉香や焼香が焦げず適度に香が薫るのがよろしい。3年も愛用してゐたら中の電熱線が1/3ほどもう劣化して熱くならないことに気づいた。修理すれば直るかも知れないが(修理は値段によつてはするつもりだが)Amazonでもう一つ新規購入。

本日、観世能楽堂で第54回の花影会あり(こちら)武田宗和師の〈関寺小町〉披露される。最奥曲の〈関寺〉はまだ未見。この機会を逃したくなかつたが本日、水府で外せぬ用件あり残念。