富柏村香港日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴る日剩でござゐます

矢島翠『ヴェネツィア暮し』


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感染リスク高い業種からワクチン接種をと大公報。その大公報による食物及衞生局常任秘書長劉利群攻撃につきさすがに親中派の新民党主席・レジーナ葉劉淑儀(元保安局長)も「呼籲外界停止對劉利群進行文革式批鬥」とまるで中共の反右派闘争か文革の如き特定人物批判は止めるべきと。林郑市長になつてから市役所上級公務員職の離職は49人で過去3代の行政長官時の離職率を大きく上回るもの。有能な公務員が怖くて仕事もできない中共の香港市役所。

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菊正宗酒造に注文した酒粕が届く。菊正宗の高級酒・嘉寶から出た酒粕ださう。箱を開けただけで豊満な酒の香り。これに触発され昼酒をいたゞく。酒はもちろん菊正宗。


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酒のアテは出汁とつたあと残つた昆布くらゐで良い。鳥蕎麦を煮て、その具で酒の残りを干して蕎麦を啜る。


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一流のバーで飲んでも家飲みでも角ハイボールだけは足し算も引き算もない。角ハイの、このお気に入りのグラスは2つセットで香港で何処からだつたか頂戴したが1つは割れてしまつて今もう1つしか持っていない。角ハイでもジョッキグラスはよく見かけるが、このタンブラー型のグラス(270ml)はほとんど見かけず「これは入手が六ッかしくなる」と慌てゝメルカリで漁つて半ダース6千円でゲットしたぜぃ。

矢島翠『ヴェネツィア暮し』平凡社ライブラリー 読了。矢島翠は加藤周一の伴侶で東大英文科卒で共同通信記者の経歴あり。何の雑誌だつたか書籍特集で上野千鶴子さまが2冊の本で『星の王子さま』と一緒に勧めてゐたのが、この本。

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わずか10ヶ月ほどのヴェネツィア暮らしで、なぜこんな珠玉の随筆がかけてしまふのか。

ヴェネツィアほど、歩行者の身うちを、耳には聴こえない音楽のよろこびでみたす町はあるだろうか。
なぜならここでは多くの街路はまことに細く、まことにひそやかで、数多くの小さな橋の階段の上り下りをふくみながら、急に大小の広場の晴れやかなひろがりに出会い、斉唱とこだまのひとときを持ったのち、また無数の方角に向かって寺院や屋敷や民家の壁と壁とのはざまに散って行くからだ。ちょうど弦楽器や管楽器のソロで奏でられていた旋律が、相寄って力強く高鳴る合奏となり、やがてまたいずれかの楽器にデクレッシェンドでひき継がれていくように。そしてその継起において、歩行者がどの方向に向かって小路をたどろうと、彼の行き先には水が、大小の運河が、さながら通奏低音のように、見え隠れするのである。
さらに特徴的なことは、この音楽には、雑音がはいらない。おそらくほかの町では、自動車や電車やモーターサイクルの音が、本来なら歩行者のからだにひびいてくるはずの町の旋律の大部分を殺してしまっているのだろう。それに対して、このヴェネツィアでは、広場の人々のざわめきや、小路の壁にこだまする話し声や雑音は、町の音楽のなかにやわらかくとけ込み、その音域を一層ふくらませている。

ヴェネツィア暮し (平凡社ライブラリー)

ヴェネツィアを広く深く語り尽くしてしまふが当時でも高潮によるヴェネツィア市街への浸水「アクアアルタ」は深刻で矢島翠もそれを憂ひはするが「しかし」ヴェネツィアといふ美しくとも一年の環境保全にかなりの資金が投じられ世界中の関心が集まるが、そんなことよりも米ソ冷戦での核武装危機のほうが、これからの世界にとつてどれほど深刻な問題か、と。この知性にもつと触れたかつたが千鶴子先生の指摘の通り寡作なのがまことに残念。

NHK教育で能の〈船弁慶〉を見る。合狂言といふものを初めて見たが古典演劇T君によれば、これは例外的な野心作でアイがシテ・ワキに絡むのは異例と。なるほど。後場に入るのが通例の舞を前場に置いたりワキの弁慶を前面に立てたりと世阿弥の甥の子・信光の天才なのだといふ。ただ盛り沢山は食傷ぎみになりがち。昨日はラジオで同曲目で二日続けても乙なもの。

日本問答


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愛国者による香港統治」は中共がスローガン掲げ選挙に適用ばかりではなく市役所高官も愛国度審査始まつたやうで(大公報)最初に槍玉にあがつたのは環署署長だつた劉利群で、彼女がこの度の昇格で食環署所轄とする食物及衞生局の常任秘書長(局長に次ぐNO.2)になることで「引起市民的強烈不滿及各界的普遍質疑」あり昨日、愛国的市民が市役所に対して、この昇格についての再考を求めたといふ。この劉女史が何故に反愛国的と批判されるかといへば一昨年の反送中・逆権運動の頃に市街地地下道や陸橋に抗議スローガン等多く貼られたレノンウォールにつき所轄の食環署がポストイット剥がさぬばかりか愛国派のポスター等は撤去したといふこと。かうして市役所高官につき厳しい愛国査定で「非国民」は排除されてゆく。一網打尽に身柄拘束され保釈中の55名の議員や抗議派市民につき定期的な警察への「報名」が前倒しでいつ保釈取り消しで身柄拘束になるか恐れありと蘋果日報 (香港)区議会議に「政府に忠誠」条例案は拒めば失職(朝日新聞) といふ状況で「愛国者」といふ名の土共だけが選別されてゆく。 

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今日の朝日新聞読書欄にあつた坂口安紀『ベネズエラ』の書評(酒井豊貴)。

チャベス政治の特徴は法の支配を尊重しないことだ。彼は超法規的な手段により新憲法を制定した。そして新憲法のもと最高裁や国家選挙管理委員会の重要ポストを全てチャベス派で固めた。軍も警察も掌握した。もちろんこの体制に権力のチェック・アンド・バランスは働かない。最高裁チャベスが国会の承認なしで重大な決定ができるよう憲法判断を捻じ曲げた。国家選挙管理委員会の委員は反チャベス派市民のリストを公表した。そこに名前がある者は銀行の融資を拒まれたり職を追われたりした。チャベスへの反感が社会で強まるなか政権の目的は政権の維持となった。

この「チャベス」を中共に置き換へて香港統治の状況と読むことができてしまふのが悲しい。たゞ難しいところだが重要なのはベネズエラチャペス政治の場合は

そこに利権が群がり経済政策は歪んでいった。貨幣乱発はハイパーインフレを起こし、経済の崩壊は治安をひどく悪化させた。

なのだが我らの優秀なるテクノクラート集団としての党政府は利権を蝕む小役人らも少なくはないが表向き、党政府は利権で経済政策が歪むこともなくハイパーインフレや経済破綻は生じさせてゐない。中国経済の実態はかなり逼迫してゐるといはれるが米国だつて同様で国家財政の不透明さでいえば日本など中国を嗤つてゐられない。中共には中共ベネズエラにならぬだけの了見といつたものがあるのだらうか。

本日農暦正月十六日。快晴。春風強し。日曜日で朝からNHK FMピーターバラカンからゴンチチ<世界の快適音楽セレクション>を聴き邦楽百番〈舟弁慶〉 に至る。歌舞伎でも勧進帳だとか、この舟弁慶など所謂「松羽目」物は好きで能も少しずつ見るやうにはなつたが昔ならさすがに音だけで長唄は聞いてゐられなかつたが、映像なしで長唄だけ聞くといふのも実にこれはこれで楽しいものだと思ふやうになつた。終日在宅。ふと思つたのだがお人にも会はずあちこち出かけもせず必要最小限の交際で静かに暮らしてゐる、この感じってどこかで知つてゐるやうな……と思つたらハルキムラカミワールドぢゃないか。これで書斎でヤナーチェクでも聴きながら好きなバーボンをオンザロックで飲んでグレートギャツビーとか読んでたら机の上に小さな人が現れて足元の愛猫がとつぜん言葉を話し始めて……どこか不思議な世界へと。あーやだ、やだ……って一応さう言つておくが。

田中裕子&松岡正剛『日本問答』(岩波新書) 本日読了。高校生のとき気の合ふ教師と生徒等で放課後に喫茶店で「雑談」といふ課外授業があつた。先生は文系、理系ごちゃ混ぜ。音楽ではキース=ジャレットの即興演奏のことを知り憖つか化学を齧つた程度の学生が爆弾を作るリスクを聞き文学では安部公房のことを語り……懐かしい青春の好奇心の日々。そこで先生二人が松岡正剛のことを語つてゐて『遊』といふ雑誌があると教へられ帰りに本屋で『遊』を買ひ求めた。国鉄のディスカバージャパンや谷村新司の〈いい日旅立ち〉を知的にしたらかうなるのか、と思つた。少なくともジャパンの魅力の再評価だつた。その松岡先生と法政大の田中裕子総長との『日本問答』を読む。

  • 関東への朝鮮系渡来人の入植。埴輪や土器、墳墓の技術者である土師臣真中知(ハジノオミノマツチ)、檜前浜成(ヒノクマノハマナリ)・武成(タケナリ)が入植は浅草。三社祭の三社。
  • ロラン=バルト『モードの体系』は日本では有職故実。公権力から武力を北面の武士アウトソーシングしての公家の存在。
  • 御所。枯れた松の漢方による治療。ぱらり壁の補修・再現。天皇不在の寝殿で30年毎の檜皮葺。大葬の礼と天皇即位礼のためだけの装束着付けの伝承。
  • 月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして 業平
  • 不受不施徹底の過激?な協議や行動で煙たがられた日蓮宗一向一揆による奈良興福寺襲撃で細川晴元が抑圧に日蓮衆徒の力を利用。……今日の自公連立もこれか。
  • 國體。会沢正志斎。藤田東湖。吉田松蔭。そこで「國體」は断絶するはずが明治以降の軍人たち、とりわけ二二六の青年将校が好む。

日がな自宅で読んでゐて朱舜水の話題となり水戸学に話が及ぶ。偶然だが陋宅は朱舜水邸の跡地にあり近くに大日本史編纂所跡、会沢正志斎邸跡や水戸弘道館、吉田松蔭旅居邸跡などあり。

水戸学というのはあくまで水戸藩士たちの意識を変えるためのものであって、それ以上のものではなかったんです。それそも江戸時代には(略)近代的な意味での身体性、つまり外から見える、あるものの表象としての身体性はない。だから水戸学が國體をいい出したときも、あくまでも手段にしかすぎなかったはず。ところが明治以降になると、その手段に過ぎなかった〈國體〉が目的化して〈國體〉さえ守れば日本は安泰だというふうに変わっていってしまった。(田中)

まさにその通りだらう。陋宅近辺のことが、かう語られてゐると直に風のやうに感じ入る気すらあり。

水戸学以降の〈精神=身体=国家〉という方程式は黒船と開国による「外からの襲撃」によってぐっと押し詰められたものだった。その押し詰まったところに、かつての儒や仏教や、あるいは神祇や国学が守ろうとしてきたものが寄せ集められ、それらが尊王攘夷というイデオロギーに向かって換骨奪胎された。そこへ一人ひとりの藩士という個人といえば個人、身体といへば身体を問う考え方がくっついてきたときに脱藩が起こりテロも起こっていった。(松岡)

このへんから北一輝から広く見れば三島由紀夫までの系列があるだらう。

日本問答 (岩波新書)

水戸左近の櫻


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本日元宵。香港で一般市民対象にワクチン接種開始。721元朗事件の裁判公判続く。元朗站に「暴徒」がどれだけゐて善意の地場「白衣」市民がそれを何う成敗したのか、林卓廷議員が現れると白衣社中の暴力がなぜ昇級したのか。どこまで作為的で背後に何があるのかの解明が今後の焦点だらう。

歴史的景観理解促進事業「水戸の歴史的景観」水戸生涯学習センター

 といふシリーズ講座の第4講で「水戸左近の櫻」拝聴。NHK大河ドラマで水戸と斉昭公、慶喜将軍脚光浴びるところ斉昭公の正室となつたのが有栖川宮家の吉子女王(姉の喬子女王が将軍家慶御台所)で、その登美宮降嫁にあたり仁孝帝より左近櫻の枝分け拝領。左近櫻は御所紫宸殿(南殿)前庭にある山櫻で右近の橘と一対はよく知られたところ。左近衛府(さこのえふ)の前にあり勅命で左近衛府が管理ゆゑ左近の櫻。小石川水戸藩邸に植樹され水戸弘道館開館に伴ひ講道館政庁前に移植。明治には元水戸藩士・小澤敏行邸にも株分けされ徳川吉子夫人による碑文もあつたが、その旧・櫻町の場所も荒れて戦後には常陽銀行社宅となり石碑は弘道館に移設され弘道館には宮内庁から3代目の左近の櫻が譲られ偕楽園にも植樹。その偕楽園の櫻は一昨年の台風19号により倒木。講師のI先生はさうした吉子女王に因む左近の櫻の歴史を丁寧に説明されさらに近年「公園整備」の進む偕楽園の景観について鋭い言及。偕楽園が「紐育中央公園に次ぐ世界第二の規模の都市公園」として周辺地域まで開発されるなか光圀公の七面山の当時からの景観をどれだけ毀されているか。本日の講演の間にはI先生の作による新作講談〈水戸左近櫻譚〉を講談師・日向ひまわり師匠により読み語りあり。

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鉢の木の最中

和室を片付けて床の間のつぎに机まはりも整えてはみたが和机の右手に祖父愛用の小抽斗を据ゑても、どこか足りない感はやはり手炙りの火鉢がないこと。茶人T君が使つてゐない朱塗の手あぶりがあるから差し上げるわ、と送つてくれる。これを左手に置いただけで何とも落ち着く。

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この小抽斗の木は如鱗杢(じょりんもく)といふのださうな。T君は「これで天板に懐紙の束を置いて鈴で押さえたら淀君の御座所」と笑ふが懐紙はあつても鈴がない。

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そも/\鈴で呼んでも傭人などゐないだろ。懐紙の上にTiffanyのレンズを置いてみる。

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「そのうち仏さまのお厨子など置いたらだんだん鏡花の書斎のように」とT君。こんな厨子棚がほしくなる。

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扇月丸藤巴紋散松梅橘蒔絵厨子棚(岩国柏原美術館蔵)

書院なら桂離宮の新御殿一の間にある桂棚とか。

組紐は道明といふ話になつて、やはり趣味人とかういふ話をしてゐるのが本当に愉しいわけですがアタシはUSBメモリに道明の組紐っておそらくこれは世界中でアタシだけかしら。

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スガは緊急事態解除も記者会見開かず「ぶら下がり」には応じたが「同じ質問ばかり」と18分に不愉快(東京新聞)

午後7時前にNHKで天気予報見てゐたら画面が突然、スガ官邸に。山田報道官隠しで記者会見に取り消しのスガが「ぶら下がり」。早く切り上げたいが取材の記者も晋三の時には見せなかつた積極性でスガを苛じる。スガは執拗な質問に不愉快さまして何ともマイナスばかりの18分に。

スガもヒドいがニカイもヒドい。なんでこんな連中に国政を担はせてゐるのか。

人新世の「資本論」


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香港市役所は夏をメドに市民1人あたりHK$5,000を5回に分け「派糖」の由。今回は現金でhなく電子マネーで消費は香港内に限られ公共交通機関の運賃等は適用外。実名登記でゼニながら色がついてゐる。

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スガが大臣務め影響力のある総務省でスガの倅が東北新社総務省幹部接待。東北新社がスガのダメ息子取り込んだ目的は明らかだが、こんな事態に電通は何をしてゐるのだらうか。

斉藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書 読了。話題の本で「ピケティを超えた」とか21世紀の資本論だとかいはれるが一読したかぎりでは、それほど六ッかしいこと書かれてゐるわけでなく平易。マルクス資本論など読んでゐなくても大丈夫。

産業革命以降の資本主義社会が人類を絶対的不幸をもたらすばかりか地球破壊するだけのエネルギーをもつほどになつてしまひ我々は「脱成長」の経済社会を創造しなければいえないといふもの。後期のマルクスはすでにそこまで思想的発展してゐたといふこと。

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ところで「人新世」といふ言葉が耳に馴染みがない。「ひとしんせい」は英語の Anthropocene の和訳語ださうで「人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与える発端を起点として」提案された「想定上の地質時代」のことださう。-cene は地質年代で「世」の接尾語で Anthoropo- がついてゐるので「人の」だが「人新世」といふ言葉は何だか坐りが悪くないか。中国では素直に「人類世」と読んでゐる。するとこの書名は「人類の時代の資本論」って元々、マルクス資本論ぢたい人類の知の思想であり人類以前にそんなものないのだから何だか意味がわからないが、要するに人類の経済成長と産業化が地球を破壊するほどの大きな力をもつてしまつた現代のこの時代を人間がまだ自然と共存してゐた時代に対して「人新世」と理解すれば良いだらう。だが、やはり「E電」くらい「定着しさうにない」新語だ、きっと。

人新世の「資本論」 (集英社新書)

中村喜四郎


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一度DQ(Disqualification)されたら被選挙権を5年失ふといふ香港の安定と成長のための政治制度改革推進。中共だと思へばまだマシなのか。一国両制というものはもはや存在しない。

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夕方、家人と常陽銀行の常陽史料館で「現代の名工 能面・能装束展」参観。金春流能楽師の山中一馬氏協力で現代作家による能装束や能面、扇などを展示。

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水戸京成で アールブリュット展(主催)水戸好文ロータリークラブ 鑑賞。水戸市の特別支援学校8校に通ふ子どもたちのアート作品展。アートブリュットは Art Brut で「アールブリュ」と呼びたいが Brut は三鞭酒なら「辛口「だが「生のまゝ」で、かうした展覧に似つかわしい感覚。それにしても特別支援学校の子どもたちの作品はどれも見事で、この子たちのこうした才能はいはゆく健常児とも違ふ着眼やその作品制作への執着が作品を面白くする。草間彌生のやうな作品もあれば高等部の卒業生が卒業前に描いた学校の思ひ出の絵画が「体育館の軒下」なのは、担当した美術教師もなぜこゝか?と尋ねたら小学校から通つた学校で、小さなときによくそこにもぐりこんでゐたのだといふ。

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茨城県は県独自の緊急事態宣言を昨日解除。この発表が一昨日の祝日だつたから飲食店など翌日からの対応も大変で、何でこのタイミング?だつたが国の緊急事態宣言対象の県が解除を国に求めるなかで県知事としては機敏な対応を見せるべきところだつたのか。飲食店の夜の営業時短もなくなり久々にで自宅近くの馴染みの店に寄る。疫禍で多くの飲食店が打撃受けるなか逆にあまり儲かつてゐなかつた店が持続化給付金を何うしてゐるかとか1日あたり4万円も飲食店が会社形態の場合に雑収入で課税所得になるとかいろいろ話を聞く。

常井健一『無敗の男 中村喜四郎全告白』文藝春秋 読了。茨城は保守王国といはれ自民党が強い。今は梶山清六の倅がドンだが昭和から平成にかけ自民党県本部を仕切つたのは国会議員ではなく県議会議長務めた山口武平。自民党本部マターや総裁選にも影響する人物で中央の派閥領袖が挨拶に訪れ重要なことは事前に電話で根回しするほど。自民党の国会議員も首相こそ輩出してはゐないが一番その近くまで行つたのが梶山静六で昭和にはロッキード事件の橋本登美三郎だとか丹羽喬四郎(雄哉の父)、池田隼人子飼ひの登坂重次郎、将来期待されながら半百で急逝の塚原俊平など全国区でも名の通る自民党議員がかなりゐる。その茨城で利根川に沿つた県南西部の旧茨城3区に昭和51年、27歳で立候補してトップ当選したのが中村喜四郎議席5は喜四郎、公明党某に前述の丹羽と登坂それに社会党某が当選で赤城宗徳⑩(絆創膏徳彦の父)と北沢直吉⑦(元外交官)といふ自民党ベテランが落選。喜四郎も父とリリーフ務めた母の地盤あつての当選だつたが喜四郎本人の選挙センスで以来、獄中にあつた1度の衆院選不出馬除き14期当選。ゼネコン汚職で国会会期中の現職議員逮捕となつたが裁判中も選挙では負けない。自民党は喜四郎から距離を置いたが地元民の熱心な、教主さま崇めるやうな支持。この喜四郎や家族が何をこう選挙に燃えるのか不思議なほど。政治家としての利権等で旨味を覚へたやうな人ではない。茨城でも「開発」の遅れた地元をどれだけ活気あるものにするか、という信念もあらうが国政については喜四郎は自民党を離れ独自の路線をゆく。当初は地方区は自分で比例は自民と自民支持だつたが自らを支持せぬ自民党に愛想をつかし公明党学会票を取り込むが公明党の親自民の姿勢に「平和の党もはやなし」で2015年7月には安保立法退席、2017年5月には共謀罪反対と反自民の姿勢明らかで共産党とも親しくするほど。

私は自由民主党に20年ほど籍を置いていました。その間に田中角栄さん、中曽根康弘さん、福田赳夫さん、こういった人たちの政治を見て参りました。あの頃の自民党政治は権力を濫用することもなく、権力を動かすことには抑制的で、常に自己批判をし、何か問題が起きたらそれを解決していくだけの自浄作用を持っていました。そして、自民党には保守派からリベラル派まで幅広くいて、反対する者がいたら排除せずにみんなの意見を丁寧に聞いていkづあけの責任を持とうという姿勢が、昔はありました。しかし今、私は無所属となり、立憲民主党・無所属フォーラムという会派に入って自民党を見てみると、数の力にモノを言わせ、権力を振り回し、政治主導という名の下ですべての問題を押し切る。自民党には政権を担当するだけの謙虚さがまったくなくなってきた。民主主義とは程遠いところまで行ってしまった。(2019年8月 埼玉県知事選 野党新人候補の街頭演説階にて)

この私的にアタシなど何ら違和感はない。応援したいくらゐ。だがかつて将来は首相候補とされてゐた自民党のプリンスも、もう古希でこの後はない。勿体ない。だがシナリオありきで、かなり意図的に狙はれたであらう汚職逮捕など試練もなければ、これほどの人物になつてゐなかつたのかもしれない。

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この著者・常井健一氏も茨城県岩間町(現:笠間市)出身。ライブドアから朝日新聞出版を経て豪州国立大学に客員研究員として留学後にライターとして独立。政治物では小泉純一郎のルポが評価された人だが、この喜四郎ルポもルポとして本当に面白い。とにかく常井氏の徹底したデータ収集と調査、裏どりなど見事で、喜四郎といふ特異な保守政治家の個性を余すことなくルポに仕上げてゐる。

無敗の男 中村喜四郎 全告白 (文春e-book)

東京みやげ


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中共は香港で「愛国者による香港統治」を実現するには選挙制度を完全なものにしなければならないと明言。何が愛国者なのか、いずれにせよ党奴となる輩だけが認められ、それが当選する選挙制度がなければならない。全てが中共といふ党の存続あるのみ。721元朗事件の裁判。検察がどれだけ政府寄りで警察を守り警察が元朗の地元土共と癒着してゐたか……裁判官にしてみたら公正な裁判の妨げになる検察の論告に苦言もしたくなるが、さういふことをした裁判官にはもう裁判官の席は残つてゐない。

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こんなことを続けて、それも香港だけではなく中国全土で……中共は強権ながらどん/\党自らを追ひ込んでゆき絶対的臨界域へと向かつてゆくが、それのメルトダウンがいつなのかはまださう近くはないし誰にもわからない。


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朝日新聞出版が受け持つてきた美術誌『國華』。その昨年晩秋に発行となつた第1501号が新版画特集。近くの県と市の図書館にもこの雑誌もなく入手する機会逸したまゝだつたが昨日、三井記念美術館のショップにこのバックナンバー在庫あり入手。写真印刷が便利堂、本文印刷が精興社大口製本印刷といふだけでも日本の印刷文化の粋である。

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銀座YOSHINOYA靴店で昨日お買ひ上げ

天気の良い天皇誕生日浩宮さんはお人柄からして2月23日が似合ふ。昭和さんのGW入りの4月末だとか上皇さんの聖誕節前の冬の賑やかな季節でもなく2月23日。素敵だ。即位されて本当に晴れの日がないまゝだが、その中でも国民と寄り添ふ、民草の安寧を祈る日々なのであらう。


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先日、床の間だけ片付けたが和机まはり迄手がつけられずやつと今日になつて整理整頓。少し和室の設へが落ち着いてきた。本日終日ステイホーム。

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左は即席、右は完成形

葡萄酒を飲むときにレストランなら給仕に恭しく酒を注がれ瓶からの雫はナプキンできれいにされるが家ではさういかない。ナプキンなんて使へない。そこでティッシュなんて使ふと汚らしい。雫が垂れないやうに専用の注ぎ口なんてのも市販されてゐるが、それも嫌。ふと懐紙を適当に折つて葡萄酒瓶の首に巻いてみたら(写真左上)これが実に良い。そこで食後にきちんと折り直してみると(写真右上)アイロンを上手にかけた真白いシャツの襟首のやうでまことに美しいぢゃないか。

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まず懐紙を角から少しズラしたところで三角に折り、そこから重ねたまゝ一寸半ほどで折り返してゆく。 


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葡萄酒瓶に一度当てて口径の当たりをつけて折り目が重なってシャツの襟になるあたりで余計な部分を内側に折り始める。反対側がセーラー服かスカーフのやうに背に垂れるのも面白い。

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昨日日本橋高島屋に小川軒のレーズンヰツチの売店が出てゐたので土産に買つてきて紅茶でいたゞく。レーズンヰツチといへば小川軒で小川軒といへば代官山だが小川軒も暖簾分けなどあり代官山の他に御茶ノ水、目黒と鎌倉にもありそれぞれがレーズンヰツチを出してゐるとは知らなかつた。

小川軒の「レーズンウィッチ」食べくらべてみよう(デイリーポータルZ)

食べ比べをしてゐる方がゐて、そこでの評価はクオリティなどで明らかに代官山が優等なのだが自分が気楽に好きとなると評価が異なるのが興味深い。素朴に鎌倉が人気。

小村雪岱スタイル


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大公報は蘋果日報社主ジミー黎英智台北で米国在台在外公館ある通称「アメリカ村」で地産あり蔡英文も関連と報じジミー黎の米国疑惑訴へるが台湾にもメディア進出の彼が台北に地産あり、それが台北でも近年、高級住宅地として評判の南部、米国台北事務所のある一帯といふだけではないかしら。隣接で地下の秘密通路で連結されてゐるといふなら面白いネタだけど。蘋果日報が伝へるのは721事件の裁判開始。一昨年721は抗議活動での中聯辦侮辱と元朗での自警団による抗議派武力制圧で警察もそれに加担といふ反送中から逆権運動で大きなターミングポイントとなる日であつた。


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家人と日本橋。開店早々の三越本店をぐるりと見て歩いてから午前11時の予約で三井記念美術館小村雪岱展。完全予約制で参観も人混みなく余裕あり館内も静かで、このやり方はコロナ終息しても続けてもらひたいくらゐ。


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展覧は入つてすぐ鏡花『日本橋』の雪岱による装丁の展示があり、そこに若宮さん率ゐる彦十蒔絵の『日本橋』見立てた〈苫舟〉。ここは撮影可。

大正~昭和初期に装幀や挿絵、舞台美術などで活躍した小村雪岱(1887-1940)。泉鏡花著『日本橋』の装幀を手掛け人気装幀家に。本展では江戸の粋を受け止め東京のモダンを体現した「意匠の天才」雪岱の肉筆画、版画、装幀を中心に、その源流である鈴木春信から「東京モダン」への系譜を紹介。

小村雪岱の間口の広さと奥行きはとても数行で語るに能はず。こちらの展示詳細ご覧あれ。お昼になり時間もあまりないので三越本店の地下を眺めたら築地寿司岩の出店あり握り寿司つまむ。狭い見世で五人相手のカウンター。板前さんが愛想もよく優しく人柄の良ささう。店員を叱つたり怒鳴つたりされると客のほうが恐縮する。メトロで銀座へと向かふ。香港でお世話になつた方に春節に合はせ日本の美味しい果物かお菓子でも贈りたいと思つたが発送にいろいろ面倒な条件あり断念。そこで宮脇からお扇子を、と。銀座線の車内で須磨帆で確かめた今日は月曜で銀座の宮脇さんは休業。家人は築地に向かふのでアタシは地下鉄を京橋で飛び降りて日本橋まで戻り高島屋へ。宮脇の扇子を数は少ないが扱つてはゐる。ミッション済ませ銀座へ。

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若松で「豆かん」頬張りたいが、まだ休業中

三原橋で築地から銀座へと上る家人に遭遇で職質。路上で荷物検査されたが叱られるやうな買ひ物はしてゐない。無罪放免で歌舞伎座へ。

第二部。仁左玉で客の入り上々。〈於染久松〉と〈神田祭〉。前者はチラシに〈土手のお六〉〈鬼門の喜兵衛〉とあり、これぢゃ登場人物名で何から?と思つたら幕開けは柳島妙見大菩薩の門前で、こゝから始まつて何ややつて油屋まで?と思つたら門前に油屋番頭(彦三郎)現れコトの次第をかく/\しか/\と語り始め、これぞコロナ禍での短縮芝居だが柳島妙見の場はあつといふ間に終はり舞台廻り莨屋に。大和屋の土手のお六と松嶋屋の喜兵衛。大和屋のお役には見てゐて何うしてもこちらの気持ちが同化しない。お染七役の早変はりなら、それで「へぇー」なのだらうけどお六だけで、お六はといふと悪女でも奥ゆきのある役作りは六ッかしい女なわけで見てゐて、これが大成駒だつたらとか、さういふことばかり考へてしまふ。大和屋相手の喜兵衛でアタシの印象に残るのは成田屋の昭和末の歌舞伎座。悪党なのだけど魅力たっぷり。〈神田祭〉はこの二人でどれだけ踊つてきたのかしらと思つたが孝玉の初共演が昭和52年で仁左さま孝夫時代は平成9年までなかつた。この二人の初共演が昭和44年で、もう50年以上前。七十代の二人が粋な鳶と艶やかな芸者役で客を魅了するのだから。

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芝居が跳ねて歌舞伎座出る際に松嶋屋の番頭さんにお会いする。疫禍で役者さんも大変だが番頭さんも神経がすり減るやうな日々でせう、かうして芝居を見せてもらへるのも縁の下の方々の支へあつてのもの。家人と待ち合はせ六丁目、靴のYOSHINOYAへ。洋物でも帽子のトラヤ、革鞄はタニザワ、パイプ煙草は菊水と馴染んできたがYOSHINOYAだけは今日が初めて。とにかく履き易いと聞くし余生を考へればそろ/\こちらの靴を履かせてもらつてもバチは当たるまい。一見なのにまるで常客のやうに扱はれこそばゆいかぎり。
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銀座ライオンでハーフ&ハーフをぐいと飲んで数寄屋橋は泰明小学校近くの蕎麦屋へ。


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コリドー街がナンパの聖地なんていはれてコロナ前は賑やかだつたが、その近くにこんな地味でよくできた蕎麦屋があらうとは。まぁ酒肴だけでも選びに迷ふほど澤山あつて。二階の席で給仕のお姉さんもまぁ親切で愛想が良い。


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 晩の営業自粛で夜七時も過ぎれば昔でいへば終電の頃のやうに飲食店が店しまひ。有楽町あたりも休業の店も多い。