富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陰暦十一月初二

陰暦十一月初二。晴。気温摂氏2/11度。バラカンさんがラヂオ(バラカンビート)で話してゐたが近ころ来日のキングクリムゾンはタイミングよく防疫隔離3日制限のときに來日だつたさう。あの3日制限がまた2週間となつてゐたら来日公演は中止となつてゐた。LP〈クリムゾンキングの宮殿〉発表から52年也。晩にNHKテレヴィN響第1940回定演(10月22日収録)見る。桂冠ブロムシュテット指揮でグリークの〈ペールギュント〉とドヴォルザークの8番。番組後半で「この秋コンクールで活躍した若手」といふことで反田恭平によるショパン〈3つのマズルカ作品56〉と小林愛実による同〈24の前奏曲〉とチェロの上野通明でドビッシー弦楽四重奏曲作品10の演奏あり。


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大公報の一面トップは「维护特区宪制秩序 须尊重中共领导地位*1」(香港特区の憲制秩序擁護には中共の指導する地位を尊重すべき」だなんて法治も人権も自由もなき社会で何が憲制かと思ふが「憲制」に「秩序」がつくところがなんだが何れにせよ中共が率ゐることの大切。社説では「坚决捍卫宪法权威 完善实施制度机制」(憲法の権威を断固として擁護し制度、体制の改善を図らう」で「宪法和基本 保障「一国两制」实践」(憲法基本法は「一国両制」の実践を保障する)と盛りに盛つた憲法記事が続くのも昨日が中国の「憲法の日」だからで、鄧小平主導下で1982年の12月4日に現行憲法が制定されて40年の節目で(来年だけどw)海外から中共の非立憲的な、非民主的な体制が非難されるからムキになつて中共の立憲制度を讃美するのである。それにしてもそもそも憲法中国共産党の指導が前提となつてゐるのだから体制変革を認めない憲法など国民の自由な判断など排除されてゐるわけで、そこでの立憲制といはれても「それはちがふだろ!」と思はれて当然なのだが。ちなみに中共憲法での中国共産党の扱ひなのだが、憲法の本文には一言も「中国共産党」は出てこないのである。しかし「前文」こそ日本国憲法同様に大切なわけで、そこには

1949年、毛沢東主席を領袖とする中国共産党に導かれた中国の諸民族人民は、長期にわたる困難で曲折に富む武装闘争その他の形態の闘争を経て、ついに帝国主義、封建主義及び官僚資本主義の支配を覆し、新民主主義革命の偉大な勝利を勝ち取り、中華人民共和国を樹立

に始まり

中国の新民主主義革命の勝利と社会主義事業の成果は、中国共産党が中国の各民族人民を指導しマルクス・レーニン主義及び毛澤東思想の導きの下に真理を堅持し、誤りを是正し、多くの困難と危険に打ち勝って獲得……

中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に、マルクス・レーニン主義毛沢東思想、鄧小平理論及び"三つの代表"の重要思想に導かれて、人民民主独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、改革開放を堅持

社会主義の建設という大きな仕事は、労働者、農民及び知識分子に依拠し、団結できるすべての勢力を団結しなければならない。長期の革命と建設の過程において、中国共産党の統率的指導のもとで、各民主党派と各人民団体が参加し

と何度も「中共の指導」が謳はれ、最後

中国共産党指導の下における多党協力及び政治協商制度は長期にわたり存在し、発展するであろう。

と結ばれるのである。これは憲法といふよりも「中共独裁を正当化するための国家文書」といふ性質のものだが中共にしてみたら欧米の民主、自由を前提とした憲法も、それは「人類普遍の原理」ではなく欧米的な一つの見方でしかない。ともあれ香港は中国の領土で中国の一部でありながら「一国両制」によつて香港基本法が「ミニ憲法」扱ひで中共憲法はあくまで国家憲法として基本法の上級最高法として担保されてゐるだけで「表にしないこと」が暗黙の了解であつたと思ふ。基本法の前文では

国家の統一と領土の保全を維持し、香港の繁栄と安定を保持するため、また香港の歴史と現状を考慮して、香港の主権回復にあたっては、中華人民共和国憲法第31条の規定、また「一つの国家、二つの制度」の方針に基づき、香港では社会主義の制度と政策を実施しないことを国家は決定した。

とあり

中華人民共和国憲法に基づいて、全国人民代表大会が特別に制定した中華人民共和国香港特別行政区基本法は、香港特別行政区で実施する制度を規定しており、国家が香港で実施する政策の基本的方針を保障するものである。

と一国両制の保障は憲法で保障されてゐるとする。基本法の本文では1つだけ

第11条 中華人民共和国憲法第31条に基づき、香港特別行政区の制度と政策は、社会・経済制度、住民の基本的権利と自由の保障に関連する制度、行政管理、立法および司法の制度を含め、いずれも本法の規定に基づくものとする。香港特別行政区立法機関が制定するいかなる法律も、本法に抵触してはならない。

と、これも保障項目。その憲法第31条は

国家は、必要のある場合は、特別行政区を設置することができる。特別行政区において実施する制度は、具体的状況に照らして、全国人民代表大会が法律でこれを定める。

とあるが特区設置の整合のみ。1984年に中英合意がされるが鄧小平による「一国両制」が合意に2年先立つ1982年憲法に「特区」として明文化されてゐる。「これだけ」なのである。それが今では香港で中共憲法がなぜこゝまで強調されるのか。当然のことながら「一国両制」なんてノンキなことをいつてゐられない状況の緊迫なのである。

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香港民研が来る19日の立法会選挙について世論調査で「白票、不投票」問ふことぢたい違法か何うか、明研側はあくまで有権者の投票傾向を調査するもので一定の政治的意図はないとするが香港市役所廉政公署(ICAC)はトップが、この違法性について検討と公言。ICACは本来、汚職摘発が職務では?さすがにこの世論調査をいきなり国安警察が乗り出すわけにもいかず、この調査が「背信行為」といふ前提でカネも絡まないが今では独立調査権や信義など何もないICACに仕事させたか。何うせ民研も蘋果日報同様に海外の政治機関から資金提供を受け……といふことで国安法で潰すシナリオも用意されてゐるのだらうが。

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*1:以下、大公報は香港発行なので繁体字なのですが、やはり中共簡体字が似合ふので簡体字に。読みづらいですが。