富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

道徳を否む者

fookpaktsuen2014-04-19

農暦三月二十日。耶蘇の節句で連休二日目。昼前に小一時間ハーバー沿ひジョギング。晝にそうめん茹で厚焼き卵で日本酒呑んだら走つたアトなので酔ふ。かういふ飲み方はよくない。晝寝。黄昏ときに三鞭酒飲む。ペニンスラのハーフボトル。晩は自家製の豚挽肉と茄子のパイ。Tollot-Beaut Chorey-Les-Beaune 2008年飲む。なんだか飲んでばかりゐる無聊な一日。増井元著『辞書の仕事』(岩波新書)読了。広辞苑、岩波国語辞典の編集者の辞書あれこれ。気軽な辞書談義だが、やはり真面目なのは辞書編集者ゆゑ。辞書編集といへば三浦しをんの原作、映画『舟を編む』(石井裕也監督)で地味な仕事が脚光浴びたが、この書とは直接の関係はないらしい(三浦しをんが岩波と三省堂の辞典編集部を取材してゐるので著者も取材受けてゐるかもしれないが)。「明るい農村」といふNHKのかつてのテレビ番組で「農村」に「明るい」といふ形容は正しいのか?といつた辞書利用者からのコメント対応など面白い。辞書をぱら/\と捲りながら、この書を読んでゐたが実は一昨日この日剩にJKリフレのこと綴り、ふと気になつた言葉が「抜き」。リフレは本番も所謂「抜き」もないことで買春ではなく風俗業取締り免れるのだが、では、この「抜き」が辞書にあるか、といふと説明がない(当たり前か)。「栓を抜く」とか何か一本、細い棒のやうなものを抜く、で悶々としたムラ/\感を「抜く」は強ひていへば「毒気を抜く」といふやうな「消す、除き去る」かしら。きだみのる山田吉彦)の『道徳を否む者』(新潮社)と岩波新書『モロッコ』の二冊も読み返す。この二冊は『気違ひ部落周遊紀行』などと一緒にソフィアの仏語に学ぶK君に譲る約束をして、いずれも古書で入手は易しからず殊に『道徳を否む者』は探しに探した思ひ出深い書なので、もう一度きちんと読んでをきませう、と。昨年二度も台湾で基隆に往き「基隆の町から離れた社宅に家族で住みランチ船で基隆の站に辿りつき鉄道で台北の中学に通ふ若者」の話がアタシの頭の片隅にあり、さてあれは誰の話だつたか、と思ひ出せずにゐたが、『道徳を』読み返して「あ、きだみのるだったか」と判明。同じく台北に通ふ少女との淡い恋、学校で軟派の上級生に恋される話などが親戚の家を勘当され引き取つてくれたアテネフランセの老先生との物語のなかで紡がれる。K君はこの夏からルクセンブルグに留学で、冬に東京でK君と話してゐて、ふと「きだみのるのやうな大きな人に是非なつてね」と思つた次第。晩にYoutubeでピーター=バラカン氏のNHK FM Weekend Sunshine大瀧詠一追悼特集(1月25日放送)聴く。


辞書の仕事 (岩波新書)

辞書の仕事 (岩波新書)