富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-04-18

四月十八日(水)早晩に中環。Color Six現像店にて写真現像受領。Aberdeen街のカメラ屋数軒冷かす。幸いに出物なし。一通り歩いてHollywood道歩きFCCのバーでドライマティーニ二杯。IHT紙など新聞数紙に目を通す。久々に心地よき黄昏時。本日の気温は朝の摂氏17度から28度にまで上がる。湿度26度は香港の1965年の観測史上二番目の低さ。HMWでEnrico Carusoのデジタル編集のCD三枚組購う。先日ネット配信音楽でVesti la giubbaが流れアタシですらCaruso、と判ったが、傷音なく「?」と思えばデジタル編集で雑音消去され蘇っていた由。無印良品で日用雑貨、ジャスコでパン粉と冷凍の今川焼など購い帰宅。コロッケを揚げて食す。あまりにも日常的な晩だがかなり久々のことで日常にリテラシやかに安堵。
▼昨日の朝日(衛星香港版)の大江健三郎「定義集」より。大江健三郎が「37年前に」岩波新書から出した『沖縄ノート』について。沖縄(渡嘉敷島座間味島)での住民の集団自決。日本軍の守備隊長は住民に対して集団自決の命令を発しておらぬ、として、大江先生、今になって事実誤認として裁判で訴えられる。時代の趨勢か。大江先生が紹介するのは今年四月から採用された高校用の日本史教科書での記述。
「集団自決」においこまれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もあった。(東京書籍)
追いつめられて「集団自決」した人や……(三省堂
県民が日本軍の戦闘の妨げになるなどで集団自決に追いやられたり、日本軍により幼児を殺されたりする事件が多発した。(実教出版
なかには集団自決に追い込まれた人々もいた。(清水書院
これについて大江先生、この教科書を使う高校生や高校の先生へ、と曰く「これらの文例で、私が傍点を打ったところを(富柏村の引用ではゴシックにしている部分)、誰が・なにが、追いやり・追いつめ・追い込んだか考えてください。また、れる・られるという助動詞を取り去って能動態にしてください。文章から主語を隠す(井上ひさしさんが指摘する通り)、そして受け身の文章にしてツジツマを合わす。そうすることで、文章の意味(とくにそれが明らかにする責任)をあいまいにする。それが日本語を使う私らのおちいりやすい過ち、時には意識的にやられる確信犯のゴマカシです。あなたはこれらの文例を書き直すことで自分を鍛えてください」と。時節柄、である、もし高校の社会科教師がこの大江先生の文章をコピーして日本史の授業中に配ったら「思想犯」として要注意のレッテル貼られ、ノーベル文学賞受賞の作家を危険視する校長や教育委員会からの指導とか入るのかしら。怖い、怖い。

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富柏村写真画像 http://www.flickr.com/photos/48431806@N00/