富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

癸卯年閏二月二十日

気温摂氏2.4/21.4度。快晴。日較差が19度では本当に着るものに困る。昨日、我孫子駅での駅そば立ち食ひで、うつかりテケツを撮り損ねた5月30日の国立能楽堂40周年特別企画での大槻文蔵師〈源氏供養〉は「ぴあ」でも今日一般発売があり午前10時のスタートでぎりぎり正面最後列の隅の席を確保。ほんの数席しか「ぴあ」に回らなかつたやうで直後には売り切れ。母が銀行に行く用事あり付き合つたのだが地方銀行の本店で銀行員も待ち客も「老人狙つた詐欺ではないか?」といふ目つき表情が可笑しい。カウンターで対応が遅いので母と四方山話をして待つてゐたが馴れ/\しい会話も「そこまで親しくなつての詐欺か」と思はれなくもない。客対応が遅いのは昔ならカウンターはあくまで接客で小皿に載つた現金や通帳、書類などが裏方に回り実際の出納や事務処理を済ませカウンターに戻つてくるから何人もの客を同時進行で捌いてゐたものだが今は人員削減なのか、かなりの作業をカウンターの職員が行ひ1人の客のやりとりが済むまで次の客を呼ばないから。それでも現金出納の客はほぼATMコーナー利用でカウンターは手続きなどの高齢者多し。カウンターで一人の老人が倒れたが救護にかけつけた職員が倒れてゐる客を「大丈夫ですか」といきなり上半身起こしたのには驚いた。

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午後遅く家人と散歩に出る。桜も週末の雨と強風ですつかり散つてしまつたが母校の小学校は移転してゐる先なのだが校庭の外の北側の崖の桜はまだ見事。

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家人がこのいつもの散歩コースで最近、道を通せんぼする猫がゐるといふので出かけてみたのだが今日も本当に道路で、まるで安宅の富樫のやうにしつかりと佇んでゐた。近づくと少し嗄れた声でニャーと鳴いてする/\と近寄つてきて甘えてみせる。腹んばいにはなるは家人が背中を撫でれば腰を上げて気持ち良さげ。野良で少し汚れてはゐるが毛並みも柔らかく周囲に民家も空き家のなか独り何うやつて暮らしてゐるのか。撫でるのを止めてアタシらが歩きだすと後をついてくるどころか先導で道案内のやうに歩いては道路に腹んばいになり甘えてみせる。実に可愛らしいこと。保和苑の紫陽花は北側の斜面なのでまださすがに小さな蕾だが、この陽気ではいつ例年以上に早く咲いてもおかしくはない。

水府ハ谷中ノ桂岸寺境内

谷中も猫の多いところで常磐共同墓地の一角でいつもの猫2匹がのんびり。家猫で飼ひ主優しいお婆ちゃんが二匹が外で遊ぶのを祠の横のベンチに座り眺めてゐる。


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そば処みかわ。午後5時の口開け客。もう初鰹の季節で散歩で喉も乾いたのでビールをぐび/\と飲み(残念ながら瓶ビールはアサヒドライ)鰹のたゝきを頬張る。天ぷらの盛り合はせで、お酒は笠間の〈稲里〉。せいろそば啜る。一つだけ気になつたのはBGMで琴の演奏がCDで流れてゐること。今どきだからか蕎麦屋コルトレーンのサックスでジャズが流れてゐ流方が、まだしっくりすると感じるとは。燈刻に散歩しながら帰る。

みんなの寅さん―「男はつらいよ」の世界 (朝日文庫)

佐藤忠男先生の著作『みんなの寅さん「男はつらいよ」の世界 』(朝日新聞社)読む。佐藤先生らしく文章は平易、で内容は「寅さん」の核心をつく。テキヤも立派な職業なのだが、なぜ寅さんが遊び人と見做され本人もバカを自認するのか。それが仕事に定着せずフリーターの若者が増え、それでも生きていける世の中になると寅さんは不思議な存在でもなくなつてしまふか。定住民と旅する人といふ区別の存在と、その解消。この一連の寅さんのシリーズのなかで佐藤先生は「母親に自分をアイデンティファイして父親の横暴に反撥する男たち」が「いい奴」として描かれてゐる、と。慧眼。アタシの大好きだつたのは初代のおいちゃん。その森川信がなくなつたのが還暦で、つまり映画の当時50代後半だつたとは。「寅さん」も懐かしいが香港の映画祭、偶然だがこのイースター連休の頃が開催真っ最中で今年もやつてゐたのかもしれないが(こちら)何年も続けて奥様と香港で映画鑑賞にいらっしゃる佐藤先生と何度かお話させてゐただいたのも懐かしいかぎり。

▼昨日の観世流お能、桃々会のパンフレットに畏友・村上湛君の解説あり興味深く読む。〈卒都婆小町〉で僧と成れの果ての小野小町とのやりとり(卒塔婆問答)で小町が僧をやりこめるのだが抽象的な内容で謡曲集を読んでも解題読んでも難解。それを湛君が禅宗の理論で「僧の一元的な解釈を小町が価値観の相対性で説く」とする。「極楽の内ならばこそあしからめ そとは何かは苦しかるべき」は、仏の価値観が絶対的な極楽の内なら悪かろうが、その外にあり相対的な人間世界で卒都婆に腰かけても不都合はないはずだ。また〈海士〉は〈鐘巻〉そして〈道成寺〉も藤原氏の氏寺・興福寺に関はる曲で「帝王の妻となつた藤原氏の女の伝説」としての位置づけ。早舞の、さらに(小書)懐中之舞の面白さ。事前にきちんと読んでから舞台を見ると舞台が更にどれだけ面白いものになるか。政府与党では独自の解釈が危険だが、優れた評者による独自の解釈は本当にタメになるのは彼ら評者が権力の外にあるから。まさに上述の「そと(卒塔婆)は何かは苦しかるべき」が通じる。

昨日の桜花賞。日曜日に秋と春のG1開催日に能楽堂で何が恥ずかしいかといへばお能が夕方かそれ以降に終はつたときに見所から出ながらスマホを開けてJRAのサイトでG1競走の結果を見ること。誰にも見られないやうに出口に至るまでにそっとするのだが先日きれいな和服姿のご夫人がお能のあと須磨帆で競馬競走結果ご覧になつてゐて少なからず同趣の方の存在を知つたところ。昨日の桜花賞は◎リバティアイランド(川田騎手)ダントツの人気(1番人気、単勝1.6倍)で馬券としては通常は単勝1点買ひのアタシもこれぢゃ面白くないから◎から4番人気の◯ドゥアイズ(吉田隼)、3番人気の▲ハーパー(ルメール)と騎手推しで△ペリフォーニア(5番人気)と賭けたら◎が恐るべし末脚(32.9秒)で4角後方3番手から!3/4馬身差で差し切り2着に6番人気のコナコースト(鮫島駿騎手、6番人気)。3着から△▲◯と入りコナさへ来なければ1〜4着的中🎯だつたのに。コナコーストも結果論だが前走(1ヶ月前の阪神のGⅡ)で2着だが00秒差のほゞ同着でラスト33.7秒を叩いてゐるのだから留意すべきだつた。それにしてもリバティの強さには恐れ入るばかり。

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畏友・吉田一郎君がさいたま市議会選挙で北区に立候補して得票は北区ばかりか全市でダントツトップの14.6万票とはお見事。後続の自民党公明党など組織票ある当選者の得票が8千票だと思へばまさに独走ぶっちぎり。それも無所属。大宮再興。議会での積極的な言論と毎号楽しみな本人自作の『市政レポート』の面白さと駅前での訴への成果がこれ。応援サイト(こちら)。本当に立派なものである。議会ではかなり疎んじられるが、この市民の投じた票数を見れば自公の先生方や市長らもヨシイチを無碍にはできない。少なくとも言へることは非自公、非リベラルの票が維新に流れてしまふ関西のポピュリズムよか、さいたま、否、大宮自立の方がずつと健全であることだらう。