富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

第51回桃々会@観世能楽堂

癸卯年閏二月二十日。本日、耶蘇は復活祭で旧暦では観音誕。気温摂氏2.6/15.9度。快晴。こんなに朝も寒いとは気にならず。朝のNHK-FMの“Weekend Sunshine”では今朝が坂本龍一の訃報後の最初の放送でバラカンさんは教授にロバート=ワイアットの“At Last I'm Free”をかけた。


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常磐線岩間駅前で朝市が賑やか。岩間駅前には木造の優しい設計のコミュニティホールもあつて託児所だか高齢者のデイケアもあり今どき駅前が大切な場所。元々は西茨城郡岩間町だつたが広域合併の結果、今では笠間市といはれてもまるでピンとこない。高浜駅はいつも筑波山がよく見える。暑くなるにしたがひ筑波山がぐっと大きく見えてくる。


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東京に向かふとき各停(常磐線快速)だと土浦で特快に乗り換へてしまふので我孫子は停まらないのだが今日は快速に乗つたままで我孫子で下車。

駅ホームに絶品あり! 我孫子駅の立ちそば屋〈弥生軒〉でジャンボ唐揚げそばを食べてきた – 食楽web

ちょっと個性的な食感の蕎麦にジャンボな唐揚げが載つてゐて不思議とマッチしてゐる。朝の十時前だといふのにホームのそば屋は唐揚げそばを啜る客多し。みんな(アタシも他人のことを云ないが)「朝からこんなもの食べちゃいけません」と医者に叱られさうなオヤヂばかり。次の快速まで数分あつたので慌てゝ改札口に行き駅のスタンプは改札の外にあることを確認した上で「途中下車できない切符なんだけどスタンプだけ押してきてもいい?」と尋ね駅員に許可をもらひスタンプをゲット。こんなことをしてゐたら今日の朝10時から発売の5月30日の国立能楽堂での大槻文蔵師の能〈源氏供養〉のテケツ(本日があぜくら会先行予約開始)取り忘れ気づいたときには全席完売と失敗(しく)じる。


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東京駅に着き少し時間があつたので東京駅の地下から新丸ビルに抜け日比谷公園まで散歩。聖地巡礼の如し。


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日比谷公園でずいぶんとミャンマー人の若者が多く「さうか東京では日比谷公園が彼らの週末の集会場所なのだ」と思つたらさうではなくて本日はミャンマー正月で、それを祝ふ集会が日比谷公園の元「野音」で行はれてゐるとは。

ミャンマー正月祝うイベント…平和と民主主義を願い支援も 東京・日比谷公園(日テレ)

ステージの左右にはウィンミンとアウンサンスーチー肖像画が掲げられ、この集会はミャンマー国軍の軍政(国家行政評議会)に反対する国民統一政府(当然、軍政府はこれを認めてなどゐないのだが)支持のものだとわかる。日本には5万人余のミャンマー人が居住してゐると思ふが今日この日比谷公園には1万人くらゐ集まつてゐるのではないかしら。入場券や整理券があるわけでもゲートを通れば誰でも入場できてイベントエリア内も少し歩いてみる。圧倒的に若者が多いが、ミャンマー語での会話にかなり日本語のチャンポン。かなり真面目そうな学生から技能実習生、高級車で関係者駐車場まで入つてくる富裕層のお坊ちゃま、ちょっとチンピラまがひのお兄ちゃんたちまでさまざまな個性豊かな彼らだがミャンマーの軍政に反対であることが今日のこの盛り上がり。関係者駐車場には練馬と足立ナンバーの自動車が目立つてゐた。銀座若松で豆かん。観世能楽堂。始めの連吟と仕舞の済んだタイミングで見所に入る。

観世流の関根家で祥人さんが2010年に半百で亡くなり父の祥雪さん(祥六)も他界でもう七回忌。関根家は強い意志抱く祥丸さん(1993〜)が観世流ご宗家の指導と全面的な協力あつて桃々会も今日の舞台はじつに見応へあるものとなり盛会。囃子方まで大御所ずらり(ご不在は笛で松田弘之先生、本日は宝生能楽堂シテ方・武田孝史〈求塚〉に出番)。卒都婆小町(小書:一度之次第)といふ老女物の秘曲を先日は大槻文蔵師、そして本日はご宗家で拝見できる喜び。野村萬斎さんと太一郎さんの狂言〈武悪〉も1時間近い二人の緊張感あるやりとり。そして祥丸さんは能〈海士〉。子方は清水義久君で間狂言は野村裕基さん、笛は注目の杉信太朗さん、地謡に御曹司、井上裕之真さんら将来の能狂言を背負つて立つ若手の活躍。良い意味でだが、まるでロックのセッションのやう。祥丸さんは謡がお上手で面をつけても声も通りお姿も立派。今はまだ動きとして大きく、懸命に舞ふのが一番で、これをご宗家や文蔵師なら何うなるか、松田先生の笛ならどんな音色になるか想像するだけでも楽しいところ。村上湛君より祥丸さんへの期待、京都の杉家の笛の特色など興味深い話を聞く。二十年後とかご尊父の年齢を超えた祥丸さんの〈関寺小町〉なんてアタシたちはもう見られないかしら。

銀座サンボアに本当に短かい立ち寄りでハイボール飲む。最近はサンボアでもこちらの日曜日にゐるバーテンダー君のハイボールが殊更に美味いと思ふ。有楽町駅まで歩く時間に余裕なく丸ノ内線で東京駅に急ぎ特急で水府に戻り水戸駅で家人と待ち合はせ夕食は銀杏坂にある〈狼〉といふトルコ料理屋へ。トルコ出身のご主人になぜ屋号が〈狼〉なのか尋ねたら彼の名前の由来が日本語でいへば狼なのださう。

トルコの奶酪、フムス(ひよこ豆のペースト)と燻製ビーフケバブ。家人はアニス系のお酒は苦手だがアタシは大好き。トルコおん大地震から2ヶ月余。ほんの少し義援金に寄付。

▼今日はお能で海人の物語だつたがテレビではNHK-BSで朝ドラ〈あまちゃん〉再放送が今週月曜から始まつてゐる。東日本大震災のあと、このドラマの放映から10年ださう。3月までの〈舞い上がれ!〉よか、この再放送の方が視聴率高いとか、高くないとか。朝ドラは牧野富太郎をモデルにした〈らんまん〉も好調で楽しみなところ。