富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陰暦十一月初三

気温摂氏6.9/14.1度。雨のち曇。塚田孝『大坂の非人: 乞食・四天王寺・転びキリシタン』(ちくま新書)通読。

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水戸市立博物館の特別展〈昭和ラプソディ〉参観。明日が最終日で参観者多し。懐かしい昭和で参観者は年配者ばかりかと思ひきや昭和が新鮮に映る若い世代にもかなり好評だつたのだとか。それでも年配者が「こんな店あったけ?」「これどこよ?」と語りあふのを耳にして違和感もあつたが考へてみれば昭和40年ももう57年前で今日これを眺める年配者が70歳でも中学に入るくらゐのことで飲食店や喫茶店のマッチなど見ても、そりゃわからないだらう。商業地の育つたアタシにとつては懐かしい店ばかり。展示はTY氏ら当時のことに詳しいシニアの語り部の尽力でかなりの懐かしい史料を蒐集展示。泉町1の伊勢甚と志満津の両百貨店の包装紙や紙袋、風呂敷。中央ビルの宴会場ゴールデンホールでの結婚式の引き出物。よくぞこんなものまで残つてゐたとあばらかべっそん。水戸の馬口労町に開店した茨城で最初のスーパーマーケット・西部ストア。商店や喫茶店の個性あふれる燐寸。当時は洋品屋や砂糖問屋などまでオリジナルの燐寸があつた。商店街の商品チケット。この鮨の「可奈女」と和菓子の「千葉屋」の意匠は我が祖父によるもの。前者は屋号と鮨桶、醤油皿に箸と湯呑みをデザイン化。伝統的な和風からかなりアバンギャルドな意匠で配色もじつに美しい。かういふセンスの実にある祖父であつた。「下市」の商店街の連続写真も貴重なコレクション。

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水戸芸術館正面の広場に面した道路区画を通行止めにして市民バザーだか本日開催。朝からの天候不順で数へるほどの人出で寂しげ。この反対側が新市民会館。今後は両施設のコラボによる市民イベントの場合この道路が歩行者天国となつて〈MitoriO〉なるエリアとして賑はひが期待されるのだとか。

本日、水戸見川千本桜プロジェクトのイベント@水戸市国際交流センターで末席を汚し茨城県日立市の桜のことを聞く。日立市は駅前の平和通りの桜が日本の桜100選の一つであるほど、あちこち桜が見事。

日立市の桜の名所、花見スポット・桜祭り案内(茨城VRツアー)

だが実はこれは日立鉱山の煙害に由来するといふ。鉱山の鉄鋼石精製で鉱毒水が排出され煙害も深刻。

日立鉱山の鉱害問題 - Wikipedia

農地は枯れ山肌は禿山となり自然回復を目指し煙に強い樹木を探し出すなかで伊豆大島の火山噴火にも耐える耐へるオオシマザクラが着目され、これを日立市に移植。それがその後ソメイヨシノになりソメイヨシノも戦後の植樹がかなり弱るなかでさらに別種のサクラへの植ゑ替へなど日立市では行政、企業と市民が一体となつてサクラの賑はひを維持してゐるのださう。この会で衆議院議員福島伸享先生にご挨拶。

佐伯啓思「アベノミクスの功罪」朝日新聞

これは何だか読んでゐてさっぱり佐伯先生のいはんとしてゐるところがわからなかつた。晋三が保守でないことは明らか。それをなぜ佐伯先生が守らなければいけないのか。

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週刊文春12月1日号(連載)鹿島茂「私の読書日記」がエマニュエル=トッドの新刊『我々はどこから来て、今どこにいるのか?

上巻:アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか

下巻:民主主義の野蛮な起源

を取り上げてゐる(Facebook)。

プロテスタンティズム→識字化の流れは、直径家族地帯ばかりか核家族地帯にも新人類たる「読む人間」を誕生させ、ヨーロッパにメンタリティーの大変容をもたらしたが、まさにそれにより、未分化核家族にあった親族網が破壊され、新しいタイプの共同体が生まれた。これが国民国家である。この国民国家は、ドイツ、スウェーデンなどの直系家族地帯では軍事国家を、イギリスのような核家族地帯では民主国家を生み出した。

なんてトッド先生の原著がすごいからなのだが鹿島茂のまとめ方も実に見事で書評でつい原著を読んだやうなつもりになつてしまふ。