富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

珠海に遊ぶ

fookpaktsuen2014-07-19

農暦六月廿三日。海南島に上陸の台風は去り次の大型台風が今度は台北に向かふ。Z嬢と紅磡経由で羅湖。境界橋の「深圳欢迎您」といふ看板に「べつに歓迎してもらはなくてもいゝんだけど」といふZ嬢の深圳入りは2010年以来の由。深圳商業城階下にあるバスターミナル。自爆テロ対策か保安厳重。以前は地面階でバスまで直行できたが一旦、樓上のターミナルに上がり切符購入で、ここで身分証チェックはしてゐないが監視カメラでしっかり撮られてゐて、バス乗り場に下る改札も乗車券のバーコード読ませ、荷物チェックもあり。10:40発マカオ行きバスに乗車。二年ぶりのこのバスは珠海まで二時間半のつもりだつたが出発前の乗客の顔写真撮る!スタッフの説明では珠海まで3時間といふ。深圳市街出て高速(G4、京港澳高速←なんて大胆な名前だ)で東莞抜けるまで順調だつたが虎門(阿片戦争のあつた珠江河口の町)の立体交差で渋滞あり更に湾岸の新しい高速(S4、広深沿岸高速)との威遠での合流まで5kmほど抜けるのに1時間要す。通路向かふの若者嘔吐するし。幸いに食べておらず清涼飲料水吐いただけなので悪臭に悩むことはなかつたが(といつても最初からマスクは持参してゐる)いきなり床にオエッ……ジャーっ!と炭酸水ぶちまけたが隣席にゐた友人は「しょーがねーな」と空いてゐた後ろ席に移つてしまふだけで本人たちも他の乗客も運転手に告げるわけでもなく何事もなかつたやうに、車床に彼の嘔吐汽水が車の走行の勢ひや急停車で前後に流れてゐるだけで誰も気にせず、といふか無視で、その場が収まつてゐる。何かのトラブルがある、といふのは前提で、その場合、だう対処するか……ある面この人民の智慧?に学ぶべきところもあり。虎門大橋渡る。こゝからの絶景を、中共第三の大河河口の凄さ、ここから中山にかけての珠江デルタの水郷の景観をZ嬢に見てもらひたい、といふのが今回のバスの旅の一つの目的。iPhoneの地図機能は相変はらずGoogle Mapは全然機能せず蘋果の地図が中国に関しては精緻。だがZ嬢と車内の四方山話で「麻布の釣り堀」の話となり場所を探すと南麻布3-6-9で重慶指すのだから(笑)相変わらずご立派。それにしても珠江デルタの網目のやうな高速道路の整備。物流は週末もなく大型トラックの数数多。4時間かけて辿りついた珠海市街は2年前より更に美観。高級コンドミニアムやマンション、お洒落なオフィスビルが緑豊かな市街のなかに点在で「こゝはどこ?」な、台風一過の青空で気分はまるでサンタモニカ。澳門口岸のターミナル、終点でバス下車。ランドマークといふ名の恐ろしく下品なショッピングセンターの中を抜けタクシー(メーター制だ、文明の勝利!)で市街北上してHoliday Inn Zhuhaiに下榻。インターコンチの顧客優遇で客室は準套間に昇格。昼餉逃したので近所の桂林米粉中共で何を食べていゝか解らぬ場合、何処にでもある桂林米粉蘭州拉麺はまづ間違ひない。部屋で寛ぐ。早晩にホテルロビーで珠海在住の独逸H君と待合せ。白タク(20元)で粤海東路。蕎麦人←Z嬢は深圳も含め手打ち蕎麦「蕎麦人」初めて。酒肴随分と並べ海老天まで酒を飲む。田舎そば、で〆。個室で最低消費もナシ、快適。H君はビール党で三時間でジョッキで十杯は飲んだかしら。アタシは生ビール一杯と菊正宗(300mlの樽酒冷酒)。今晩はH君がZ嬢にご馳走する!と前から言つてくれてゐたのでゴチになる。珠海でも金湾区の三灶に返るH君に白タクでホテルまで送つてもらふ。
蓮實重彦先生のW杯観戦後の感想、朝日?で読む。オシム監督の勝ちにゆく魅力溢れる蹴球をボスニア・ヘルツェゴビナサラエボ事件から百年で!民族対立乗り越へW杯で初の一勝実現したことが最高の喜びだつた、と。しかし全体としては、勝つ=相手に点を取らせない、で勝ち上がるのを最優先すれば「どうしても岡田化が進む」。サッカーはどちらかのチームが防御に徹するとゲーム自体が成立しない(日本のギリシャ戦が、それ)。運動の快適さ放棄してまで「国が期待する」勝利に拘る、そんな「スポーツの死」に付き合ひたくもないしW杯はそろ/\限界、と蓮實先生。
▼晋三の集団的自衛権について。今年4月に東大→早大になつた長谷部泰男先生が晋三の政権が「憲法というものに自分たちではコントロールできない穴を開けてしまった」、これからは「憲法でできないことになっている」という理由が通用しなくなってしまう」と、まさに立憲政治の否定が晋三によつて(普通の常識程度ある政治家ならこんなこと出来ないのだが、やはり頭が悪いからか)出来てしまつた、といふこと(毎日新聞)。内閣法制局の役割は会社の顧問弁護士。顧問弁護士は企業の行動が法廷の範囲内にあるかどうか客観的に判断するのだが、もし社長が「かういふことをしたい、これを合法だと言ってください」と言ひ顧問弁護士が「わかりました、合法です」はあり得ない……こんなこと中学生でもわかるはずだが晋三にはわからない。

日本は東アジアでは数少ない真っ当なリベラルデモクラシーの国だったはずなのに、かえって地域の不安定化要因になっている。もう少し落ち着いた成熟した視点を持ってもらわなければ困る、と国際的に見られている。安部政権は戦後レジームからの脱却と言っているが、脱却した後にどこに行くのか、どこに戻るのか、何を失うのか、実は首相自身が確たる理解を持っていないのではないか、と懸念している。