富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-04-26

四月廿六日(月)夕方、中環。FCCで一つ打合せ。一寸時間があつて新聞を讀んでゐたら信報で廖醇祖(Joe Liao)といふ若手のデザイナーの紹介記事あり。センスといふか感性に惹かれる(http://liao.cz)。K君をFCCに招き打合せ兼ね軽く夕食。HMWでホルストの「惑星」、これは「このNAXOSを聴け!」(松本大輔青弓社)で紹介されてゐたRoyal Scottish National Orchestra、David Lloyd-Jones指揮、があるのを見つける。NaxosだからHK$46、Naxosといへば香港資本で地元レーベルかしら。それとデュ=プレ&バレンボイム指揮(イギリス室内管)のハイドンのチェロ協奏曲1番などCD購入。ふらり、とDunhill紳士用品商店の楼上のバーに寄る。Dunhill商店の中にあるが直接の経営でなく店子であることは先日の視察の時に明らか。バーテンダーやウェイターが全員、女性。ヒュー=ヘフナーがオーナーぢゃないんだから。しかも音楽と客の喧噪激しく何処がダンヒルのバーなのよ?と驚くばかり。注文したドライマティーニがどんなだつたか、は言を要すまひ。帰宅して「確かにこれでHK$50?」の惑星やデュ=プレのハイドンなど聴きながら読書。途中になつてゐた三國連太郎沖浦和光の「芸能と差別の深層」と岩波書店「世界」五月号読了。豚インフルエンザに関する「集団ヒステリーの検証」(シュピーゲル誌特約で元小樽市保健所長・外岡立人氏訳)など興味深く讀む。
▼小甜甜の遺産に絡む遺書偽造嫌疑のかゝる風水富豪陳振聰、遺族側との民事裁判で相手方の弁護士費用二億元の負担も済まぬが今度は税務局が小甜甜の生前贈与の廿億元は贈与でなく風水費用として所得税3.4億元を追徴。負債が五億元ではもはや「遺書正当」主張しての上訴裁判も費用的にまゝなるまひ。
▼雑誌「世界」が地味なやうで内容は派手。沖縄の基地問題で対談は大田昌秀・元知事と佐藤優だ。大田氏の1998年の県知事選落選は大田支持表明してゐた公明党が実は稲嶺君(現知事)支援が一つの要因、もし大田県政があと一期続いたら基地返還も現実化したのに、と糸数慶子女史(参院議員、沖縄の社会大衆党副委員長)。
▼同雑誌で日米政府の「核密約」につき、取材報道した毎日新聞の西山元記者(78歳)と当時の外務省アメリカ局長で2006年に「密約はあつた」と証言した吉野文六氏(91歳)の豪華お達者対談も面白い。西山記者は当時(1972年)停職となり逮捕、最高裁で有罪となつたが「核密約があったこと」など当時「小学生でも「あった」と思つたくらい」の常識。それにしても吉野翁が最初、西山氏との対談には難色示し「私は西山さんとは街で偶然に出会って、お茶でも飲みましょうか、というようなロマンティックな展開を想像していた」が「ところが私も歳で偶然を期待するにもだんだん時間がなくなってきたので、この機会にのらざるを得ないと思ったのです」と、うーん、何とも大人の世界。この余裕が素敵。核密約巡り外務省と担当課長と取材する記者が44年経ち「ロマンティックな再会」とは……何とも美しい言葉の綾。

世界 2010年 05月号 [雑誌]

世界 2010年 05月号 [雑誌]

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