四月廿七日（火）銀座木挽町歌舞伎座明日の興行最後に建物改築。御名残四月大歌舞伎なんて松竹も昨年からうんざりするほど歌舞伎の中身より小屋の「お名残」の商売。それでもアタシには物心ついた頃から、の芝居小屋。小学生の頃は芝居好きの祖母によく連れられ出かけた歌舞伎座で鮮烈な印象は誰よりも梅幸。そして勘三郎、松緑、幸四郎……と誰もが先代だが、不思議と大成駒の印象がない。大成駒の檀那は祖母がテレビの歌舞伎中継みながら「成駒屋は女形にしては背丈がありすぎるけど、足が悪いのを上手に逆手にとって、この科なを作るのがねぇ」と褒めてゐた。勿論、小学生のあたしにとっては歌舞伎より芝居跳ねてから四丁目のキンタロウで玩具買つてくれるのが嬉しくミニカーで映画「チキ／＼バン／＼」の自動車やサンダーバードのペネロープ号も素敵。歌舞伎座はあたしも自分では覚へてをらぬが幼い頃のアルバムを開くと（ともう何十年も見てをらぬが）歌舞伎座の貴賓室で祖父母や両親と皆畏まつて写る一葉の写真あり。松竹の戦後の重役であつた三木翁は同郷で祖父の懇意、で招ひてくれたのだらう。芝居といふと七五三のやうな一張羅着せられ、銀座の玩具店もだが天一だと天國だの、と祖母が連れていつてくれる天婦羅の美味いこと。天一の天婦羅の値段を知らず高校生の時に懐かしく独りでふらり、と立ち寄り天丼の値段に驚ゐた。今月の歌舞伎座の切符はプラチナチケットの類ひだらうが久が原のＴ君より今日の第二部の二階席二列目中央の切符が二枚ござゐ〼が如何？と先日連絡いたヾき流石に香港からは参れず残念なかぎり。
▼小沢一郎政治資金疑惑。あの人が悪人でもどこか憎まれないのはやはりあの岩手弁だからかしら。朴訥。角栄の越後訛りと一緒。それにしても検察審査会が何をどう公正に判断しやうと自由だが「善良な市民の感覚」って一寸気持ち悪い。客観性と法的な基準に則り判断があるべきで「善良な」なんてよくも恥ずかし気もなく……。戦前、軍部独裁を暗黙であれ許したのも当時の「善良な市民の感覚」。ファシズムの怖さ、がこれ。ところで民主党元老の立場で小沢一郎庇ふ渡部先生がマスコミの取材に「小沢君も」「鳩山君も」と君づけで福島弁で語つてゐるのにテロップは「小沢氏も」「鳩山氏も」と改竄。天皇が八丈島訪れても島民が「天皇陛下が来たって聞いたから」が「天皇陛下がいらっしゃったと聞いたから」にしてしまふのと同じで「改竄はどうであれ禁ずるべき」だらう。
▼SCMP紙一面が“HK to get border controls on cash”と報道。通過規制の緩さは香港の真骨頂だつたが「テロ資金」対策でFATF（www.fatf-gafi.org）の指導もあり（アタシはテロよりこのFATFの方が怖ひが）香港に出入りする通貨管制に乗り出す、とか。流通するから「通貨」でその担ひ手は商人だらうとテロリストだらうとアタシは一向に構はないと思ふのだが当局はダメらしい。まぁマッチポンプの世界。香港の場合、テロリストより実は中国本土からの泡銭による香港投機対策が目当てだらう。
▼蔡瀾先生が蘋果日報の連載随筆で太宰治の小説「ヴィヨンの妻」取り上げ（これの漢題が「魏而連的妻子」はすぐに判読できなかつたが）映画「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ」について書いてゐる。太宰について語り「斜陽」は二、三十年代に日本で好評で「斜陽治」と呼ばれる、米国でいへばヘミングヱイのロストジョネレーションのやうな人生に消極的な若者たちが現れた、と。「斜陽」は1920年代のヘミングヱイの「失われた世代」と同じではなく敗戦後の没落貴族の物語で「斜陽族」だし安吾の堕落論や石原の太陽族のやうな若者への影響もないだらう。随筆の最後では突然、「ノルウェイの森の作者」は「只是一個弱智児童」（ノータリンの子どもに過ぎない）と罵倒。なぜ太宰の評価するのにハルキムラカミをここまで言葉汚く貶す必要があるのかしら。蔡瀾先生も酒に酔つてゐるし耄碌したから「これでいゝのだ〜！」では困つたもの。
▼大阪の母子殺人事件（2002年）を最高裁が死刑を破棄、差し戻し。最高裁が死刑判決破棄し差し戻すは終戦後の松川、八海事件などの例がある21年ぶり。裁判長は藤田宙靖（東北大で長く法学部教授）だが他の裁判長が「代読」なのは藤田氏が今年すでに定年退官ゆゑ。定年で最期にこんな思ひ切つた判決は志村喬の「生きる」の世界かしら。
▼昨晩讀んだ岩波「世界」五月号で元防衛事務次官の守屋武昌君が沖縄基地問題について
「シュワブ陸上案」は陸上部隊の訓練との関わりが問題になります。伝聞ですが、シュワブの地上部隊の運用携帯に問題があるようです。前回の日米協議で、「シュワブ陸上案」の障害となった地上部隊の訓練が現在どうなっているのか、議論の余地はあると思います。この案なら移設作業の加速化を図ることができるのは事実です。
……とさすが転んでも元軍幹部。コメントが「伝聞ですが」やたら具体的で信憑性あり。それを載せる「世界」も守屋次官ばかりか宗男議員、ラスプーチン佐藤など「エグい」方ずらり、で岡本厚路線が最近面白い。
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