富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2007-06-17

六月十七日(日)朝寝貪りたいが早起き。新聞の朝刊(朝日)によればメタボ症候群の基準値となる男性の腹回りは90cmの由。あたしは胃を患いこの数ヶ月で7kgも体重減ったが腹回りはデブのようでいて当時でも32インチくらいで今は81cmくらい。メタボにはだいぶ余裕に見えるが数年前の超音波検査で医者に「運動もされているようですがずいぶんと美味しいものを食べて飲んでますね」と感心?されたほどの、医者もなかなか見たことのない鍛え上げられた肝脂肪あり。油断できず。三週間ぶり?かで珈琲。カフェラテであるとか自宅でも珈琲を豆乳で1:4くらいに割ったものはリハビリで飲み始めてはいたがブラック珈琲は久々。珈琲がこんなに美味いものか。午前中、ジムで一時間の徹底した有酸素運動。昼抜きで午後は上環に知人に頼まれた仕事のお手伝い。昏時まで。あまり暑からず中環まで散歩してPage One書店。かねがね不思議なのは本屋が、どの店も店内にはそこそこの客がいたとしてもレジに並ぶ人の数=売上げからして、どうして採算が合い高い家賃払い利益があるのか。竿竹屋が云々の経営学本が売れているが、星巴珈琲の場合はたかだか珈琲でも利益率の高さが秘訣なら、書店は何故か。とくにこのPage Oneなど中環の一等地やTimes Squareなどに大規模な店を構えていられるのか気になる。で何の本を購いに、かといえば今日のSunday Morning Post紙の書評欄に“Getting Rich First”という書籍が紹介されていたからで、実はこの本はもう数ヶ月前から出版の紹介がamazon.comなどに出ていてずっと待っていたもの。というのは著者のDuncan Hewitt君は1990年に深夜、佐敦から上水行きの恐怖の暴走ミニバスの中で一緒になり当時、香港中文大学の中国文化研究所でリサーチャーだかしてたDuncan君の知遇を得、かなりのマイナー映画好きで大埔のパブ、Bobby Londonなどに飲みに行き、よく映画や政治の話などで盛り上がった畏友。その後、彼は英国に戻ったが、BBCの国際放送のEast Asia Todayという番組で独特な癖のある彼の声が聞こえBBC World Serviceに彼が働いていることを知り、96年だったかに放映の折はZ嬢と彼のBBCのオフィス訪れ、またあたしらがブライトンに遊ぶ、と言ったら偶然に彼の故郷がブライトンで実家までお邪魔させてもらう。その後、彼はBBCの上海特派員となりまた暫く毎朝のようにBBCのラジオから彼のレポート聞いていたが、SARSの疫禍の頃にぷっつりと彼の声が途絶え、どうしたものか、と思っていたら今回の著作の上梓。大したもの。“Getting Rich First”は中国語なら「先富起来!」、先に豊かになれる人から豊かになれという?小平の先富論。高度成長続ける中国で、上海を舞台に「先に豊かになった人たち」と「置いてきぼりの貧しい人たち」の経済格差、不均衡についてのレポート(だと思う、まだ序章くらしか読んでいないが)。この書名と内容で彷彿するのはOrville Schellの“To Get Rich Is Glorious”という1984年の中国の経済改革論では先駆的著作。ダンカン君がこれを読んでいるか、或いは意識したかは定かでないが、この20年間の中国の経済成長を見る上で、この二冊を読み比べるのは面白いかもしれぬ。ところで余談だがアタシがどうして1984年(だかその数年後)に東京で、この“To Get Rich Is Glorious”という「洋書」を知ったか、といえば当時の『ブルータス』って雑誌は巻頭エッセイみたいなページで突然、この現代中国学碩学を取り上げ、而も取り上げ方ってのが若いうちにいっぱしの研究をして注目されながら半ば隠居でカリフォルニアの郊外でのんびり暮す、って(当時、Schell先生は四十代半ば)そこに着目し「そういう人生の理想」みたいなところにスポット当てていた(当時のブルータスらしいさ)。それで紀伊国屋だったか三省堂だったかの洋書売り場で注文して、この本を入手。でSchell先生は「ちょっと若隠居」していたが、その後また学界に復帰し今も加州大学バークレーのジャーナリズム大学院の院長だか現役。Page One書店ではこのダンカン君の本とペンギンブックスでサマセット=モームの『月と六ペンス』二冊購入して帰宅。今日は世間では「父の日」で、こういう日は飲食店には断じて近寄るべからず。で、端午節は明後日だが?記で購っておいた粽、それも?記だから「至尊焼鵝裏蒸?」なんて名前だけでも大それた、実際に内容も大それた(蒸すのに最低45分もかかる)粽を食す。意外にあっさり。リハビリで紹興酒を少し飲む。端午節といえば石?尾の南山邨にある嘉湖の素朴な粽を頬張りたいのだが今年はバタバタ続きで注文もできなければ買いに行く暇もなし。食後、録画でNHKの特集番組で「オペラ座の弁慶 団十郎海老蔵パリに傾く」を見る。番組の冒頭「団十郎のもとに巴里のオペラ座から一通の招待状が届いた」って、あなた、この成田屋親子の巴里オペラガルニエ公演のためにどれだけのおカネが動いたか……は、まぁいいとして、それにしても大病から舞台に復帰の團十郎に本当にこれでこそ成田屋という、やはりそんじょそこいらの人とは違う、神仏にも通じるもの感じる。オペラガルニエに下見で舞台に立った成田屋が小屋の反響を確かめるのに大声でフランス語での口上をやってみせオペラのように歌い出す姿など面白く、稽古場での浄瑠璃方や三味線への自分で歌ってみせての姿などじつに絵になる。目黒の自宅でMacのノートブックに向い成田屋HP成田屋通信(四月以降更新されておらず)の原稿をカメラに見せる団十郎、ナレーションが「じゅうにだいめ」というので団十郎の使うMacintoshがメカ好きの団十郎ゆゑ十二台目なのか、と驚いたら「十二代目」團十郎であった。海老蔵君は、確かにそりゃ並大抵の格でないのは重々承知で敢えていえばオペラガルニエでの勧進帳を見てもやはり、表面的にそんなに役を作らなくても、と思う。父親が海老蔵だった若い頃に人柄はいいが役づくりが出来ない、表情が単調と贔屓筋をいらいらさせていたのとは対照的。海老蔵君はいろいろ私事も含め芸能マスコミ賑わせ祖父の十一代目と瓜二つ、と言われもするが、聞いた話によると(関容子の『海老蔵そして團十郎』などにも松島屋とのことで少し触れられている話でもあるが)高麗蔵時代の祖父と比べると私生活でもまだまだ芸域が狭いかも。Time誌の香港返還10周年記念の特集記事を読む。ネタが少ないなかでよくまとめた、とは思う。25頁だ。あまり書き残すべきこともないが北京精華大学の先生のコメント引用した
China's leaders didn't really know what they pressured the outgoing British to keep thins as they were (top-down rule, cozy nexus between government and big business, no politics); hey wanted to inherit a known quality. China didn't want any surprises, and some believe that's still Beijing's attitude. "Since 1997, China wants one thing from Hong Kong: no trouble," says Tsinghua University's Yan. "Don't cause financial problems don't cause political problems, don't cause social problems; don't cause trouble." Yet that assessment is so pre-handover. China's leaders today are worldlier than ever.
という指摘は興味深い。いずれにせよ、香港のマスコミはこのTime誌の特集が香港を10歳の子どもに喩えたということばかり強調していたが、実際に読んで見ると、香港商工会議所のO'Rear経済分析主管の話を引用して
"I can't see what reason people in Hong Kong have to be pessimistic. We're part of China, but we're not subject to China's rules. What could be better than that?" What indeed, when you are 10 and have the world before you?
と、けして10歳とバカにしたものでなく、まだ特区成立から10年で(懐疑的であろうとも)これから未来があろうものを何を悲観的に、という結びであった。日本のマスコミもこの返還10周年の報道でかなりテコずっている由。結局「返還から10年でこんなにひどくなった」「こんなに変わった」或いは「変わってしまった」なら記事になるが「あまり大きな問題もなくそこそこ上手くいっている」ほどニュース性がない話はないわけでマスコミにとっては困ったところなのね。

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