富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-11-12

十一月十二日(日)晴。朝8時半にMTRのTsuen Wan站に七名で集まりタクシーで大帽山麓の駐車場。一昨日から開催されたOxfam Trailwalker終了後のMacLehose Trailの清掃ボランティア活動に従事の為。といっても地味な活動でこの大帽山手前から鉛鉱峠までの逆行9.7kmの清掃は我々七名のみ。特筆に値するは今回のTrailwalkerに参加し昨日午後2時に23時間52分の好タイムで完歩果たしたN氏が一晩の休養にて今日の清掃活動に参加。敬服に値す。昼過ぎまでゴミ拾いしながら山歩き。水やスポーツドリンクのペットボトル、予想以上に多いのがEnergy BarやEnergy Gelといった栄養補給食品の袋。それに悪質なのは電池などの置き捨て。山徑の清掃ボランティア活動というと聞こえがいいが本音は自分が山歩きしていて不愉快にゴミを目にしたくない、こと。鉛鉱峠でゴミの仕分けなど済ませ城門水塘に沿い5kmほど歩き城門ダム。公営売店で麦酒2缶。Tsuen Wanに出て午後3時くらいに山西刀削麺にて前回麻辣の激辛に閉口したこともあり上湯刀削麺食すがこれだと今度は辛さ足りず。ジムに一浴し夕方帰宅。着替えて尖沙咀。Z嬢と待ち合せKimberley Rd香檳大廈の中古カメラ店多い怪しげな商場にある新記餐庁に食す。猪頸肉評判で蕃加(トマト)猪頸肉飯。科学館にて寺山修司映画特集で『草迷宮』と『上海異人館』見る。Z嬢は本日夕方、寺山短編映画集その一見ていたのだが、その中で『トマトケチャップ皇帝』(1971年)では10歳くらいの男の子が数名の妖艶な女性に具体的に濡場の如く性愛迫られる場面あり、泉鏡花原作からかなり寺山的に解釈された『草迷宮』(制作は1978年、83年公開)も当時15歳くらいの三上博史が全裸で性器露わに演じる場面もあり、O嬢の物語を原作した『上海異人娼館』も未成年の男女の性愛場面も露骨。つまりはキョービのモラル(社会常識や道徳観念?)では好き嫌いは別として寺山修司の映画は撮れない事。乱歩やジイド、トーマス=マン、寺山修司も今の時代なら立派の犯罪者か。『草迷宮』が期待以上に秀作。『上海異人娼館』は『支那人形』『チャイナドール』という作品名もあり。偏見に満ち溢れた「中国舞台にした異人相手の娼館」が舞台では『支那人形』も『チャイナドール』も地元的には映画題名としては「よくない」が内容も「上海」舞台といいつつ実写は懐かしいほどに香港で、娼館のある港町は長洲島?、水上レストランのジャンボも映り、結婚披露宴の支那趣味な寺は一瞬、懐かしいタイガーバームガーデンかと思いきやリパルスベイで観光客に「お寺」と親しまれる拯溺會と天后像の辺り。色街の警察の派出所にも「香港警察仮派出所」なんていい加減な看板かかり正確には「香港異人館」だろうか、史実と全く関係ない作品なのは当然としても、フランス人の女衒だのフランス租界っぽさは香港にはないもので、すべてがディティール的にヘンなのだが、それは香港で見ているからエキストラも広東語話していたり香港の昔の俳優がチョイ役で出ていたり風景が香港らしすぎるから、の違和感であり、日本で廿数年前にこれを見ていても「支那趣味」という点では上海だろうが香港だろうが関係ないか。いずれにせよ、例えば三池崇史の『インプリント』が米国向けホラーである点で日本人にとっては全く論外な日本趣味である以上に、この『上海異人娼館』では上海(或いは香港)の租界?舞台に日本人の若者がフランス人のO嬢(桜嬢)に恋するだけで上海(或いは香港)は支那趣味な舞台にされるだけ。どうであれ寺山修司の映画のなかでは香港ロケまでして大掛かりなだけに失敗作。この『上海』のあとに78年の『草迷宮』が公開され84年には『さらば箱舟』を撮り(これが遺作となり)少なくともこの『草』と『箱舟』で「寺山の後期の映画は失敗」と烙印押されずに済んだことになろうか。出演者の演技ではピーターの娼館の女将役は上手いが美輪明宏に比べ怪しさはなく銭勘定に精出す
ばかり、で全盛期の山口小夜子が妖艶。

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