富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月九日(木)曇。朝起きて二週間弱の巴里滞在の果ての荷造り済ませZ嬢とぶらりぶらりとSt-Germans des Presまで歩けば巴里に到着した晩に時差惚けなどないといいつつ香港時間にては午前4時頃に朦朧と食した肉々しき晩餐もかなり昔のことに思へ、そのbrasserieもこの界隈(結局前菜、主菜にデザートと二人で一人前ずつ食したのはこの一回であとは一人前を二人で一半するばかりのか細き食欲)、毎日の如く夕方のマルシェへの買出しだの夜な夜な月本夫妻とカフェで一飲に通った道に旅愁ならぬ郷愁の如きもの感じ入る。この界隈にては最も馳名のLes Deux Margotsにてブランチしつつぼんやり。甚だ不便などと文句いいつつもやはり他を凌駕する巴里のこのセンスに惚れて次はいつの来里となるかと思案。自由だの個人主義というものがいかに厳しきものにて毎日が琢磨の日々であるのかといふことも学んだ思い。この濃厚なる珈琲もCafe Cremeも次はいつ飲めるものか。ホテルに戻りエミレーツ航空より遣られた自動車にて巴里市街を北上して高速道路に入りCharles de Gaulle空港。設備の老朽化甚だしい上に免税も酒を除けば化粧品や香水など物によっては香港の莎莎のほうが安く航空会社の契約ラウンジもまるで70年代のモスクワかワルシャワの空港の如きモダンにて惑星ソラリスの世界。EK74便にてドバイ。ブカレスト上空にて十四夜の月を愛でイスタンブール上空が雲晴れて夜灯のイスタンブールを楽しむ。サイード先生の遺稿いくつか、久々に『神聖喜劇』読む。深夜ドバイ着。この時間欧州各地よりのフライト多く到着し未明にかけてアジア太平洋に飛立つフライト多くこの深夜に空港の混雑甚だし。空港といふより巨大なショッピングセンター。最近どこの空港の中にも必ずIrish酒場があるのはどうしてなのだろうか。飛行機からひょっとして1km近くあったのでは?という距離を歩き(動く歩道で、だが)、入境カードの記入も要らぬと機内にて言われ、これだけの空港ゆえフランスの如きお気軽な入境を想像していたら入境審査は長蛇の列にて審査も入念にて驚くばかり。幸いにエミレーツ航空のExpress Trackの通行証あり列ばずに入境、かつての香港啓徳彷彿する混雑の中でエミレーツ航空手配のChevroletのリムジンにてBur DubaiにあるRegent Place Hotelまで送られ投宿。気温は午前1時で摂氏29度。木曜日の晩はいわば週末、何が回教国だろうか、ホテルゆえにか泥酔者多く「カフェ」は深夜三時になってもまだ客室までご乱痴き騒ぎ聞こえるほどのご盛況ぶり。