富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月十六日(木)快晴。Y氏来港と報せあり新蒲崗にある氏の香港事務所訪れたことなきことに気づき地 下鉄にて黄大仙に赴き黄大仙下邨を抜けて新蒲崗の氏の事務所に参る。黄大仙下邨の団地には団地下の運動場にて子どもら多く遊び歓声団地建物に響き曾て当た り前だったその光景も今では珍しく思えしもの。仕事済ませたY氏と散歩して九龍城、潮州料理の創發にて煮魚、茹蟹など肴に、それから尖沙咀の某酒場で一飲 歓談す。
▼昨日宮中にて歌会始あり。朝刊で見れば陛下の御製は
 我が国の旅重ねきて思ふかな年経る毎に町は ととのふ
と、H君からも指摘あり「我が国」といふ言葉が枕になるは伝統に悖り、お題の「町」が俳句じゃないんだから 和歌に合わぬ(これは陛下とて致し方なきことか)。歌の意は「全国の行幸を何年もやってきたけど、ふと気づくと、いく度に街並みが整備されてきたことだな あ」といふ公共事業推進を賛美される歌か、小泉改革に異を唱える意図かとすら思ったが、それでは「あんまり」、実はサンフランシスコ条約から50周年にあ たり陛下の「今日の日本を築くために人々が払った非常な努力に思いを致し、より良い未来を求めて皆で力を尽くしていきたい」といふお気持ち反映されている と説明されれば「なるほど」と思ふ、が「町が整ふ」といふ語から陛下のお気持ちを読むは易しからず。寧ろ
 現の世の旅重ねきて思ふかな年経る毎に失す佇まい
かも知れぬが歌会始めには雅びに欠けるとすれば、寧ろ来年の「幸」を用いてよいのなら
 現の世の旅重ねきて思ふかな年経る毎に幸多かれと
とか如何なものであらうか。皇后陛下
 ひと時の幸分かつがに人びとの佇むゆうべ町 に花ふる
は東京(とうけい)の街の路樹より花が舞ふ都会の「町」の瞬く間の美しさあり。それにしても若い詠み手によ る
 夕闇が僕の体を押してくる光へ走る夕暮れの 街
といふ歌、躍動こそあれ、これが召人により「古式ゆかしい発声で披露された」と思うといつたいどう詠まれる のか、不気味、むしろ現代の音にて詠んでこそ心地よき歌。別な詠み手の
 君が住むただそれだけで愛しくてあなたの街 と呼びて親しむ
はH君曰く80年代のニューミュージック。一つの歌に二人称の「君」と「あなた」が使われ、君を「あなた」 といふことに愛情をもたせているのかも知れぬが「君」はいやしくも陛下。せめて中島みゆきっぽく
 わが愛しき人の暮らさん町の名を耳にするたび涙流れむ 
とか如何か。それにしても「半紙を横長に使い」「自ら毛筆で縦書きで記す」と伝統といへば伝統ながら「海外 からの場合、用紙は自由で毛筆以外でも可」としており、海外からなら邦人もそれでいいのか。「障害などあり代筆を依頼する場合は理由」盲の場合は点字も可 と心配りこそあれ「ワープロやパソコンで印字する場合も理由を別紙に書いて添える」とはいったいどういふことか。障害あり口にスタイラスくわえてなら容易 とか具体的な理由がある以外は「便利だから」しか理由はなし。寧ろ指定の葉書に気軽に歌を書いて宮内庁まで送ってください、と広く募ることこそ大切。
で来年のお題で
 つらきこと悲しきことの多き世にただ愛しき人あれば幸
じゃちょっとξか……。
▼十三日の日剩で綴った、NHKニュース10での朝鮮中央放送制作「子どもの時間」なる番組の放映、平壌 の中学校にて反アメリカ帝国主義が果敢に教育される模様を伝えたものだが、教育の政治的利用の深刻さもさることながら他局制作の映像についてはスポーツや 音楽などかなり厳密に規制あり衛星放送での放映を避けていながら朝鮮中央放送の番組などガンガン流しているが問題ないのかどうか、といふこと。疑問に思い NHKに質問する。
ワールドプレミアムでNHKの報道番組を見ていて気になるのですが、どうしてイチローであるとかナカタのプ レーは著作、放映権の問題があり、1コマとて衛星放送で流せないのに、北朝鮮朝鮮中央放送の番組だけはニュース映像として「がんがん」流せるのでしょう か。著作、放映権とか問題はないのですか?
それに対して丁寧に返事をいただく。
いつもNHKワールド・プレミアムをご覧いただきありがとうございます。ご理解いただいているとおり、国内 で制作した番組を海外で放送する際には、新たに海外放送権を取得しなければなりません。たとえば、スポーツ番組を放送するには、主催者団体と契約を交わし て放送権を取得する必要がありますが、その際、権利者から法外な権料を求められたり、海外での放送が許可されないことも多々あります。ニュース番組などで 映像の一部を放送する場合も、その都度権利が発生します。交渉の際は、使用時間何秒以内、放送回数は何回以内、といった細かい条件づけが行われます。もち ろん海外での放送が許可されないこともあり、この場合、使用できない映像部分について、時差で放送している場合は事前にカットしていますが、生放送の場合 はそのシーンをカットすることができないため、かわりに「放送権の都合により」の画像を表示するなどの方法で対応しています。なお、ヨーロッパのサッカー については、国内向けという条件で映像使用が認められていますので、海外発信ができませんが、米国メジャリーグのシーズン中の試合映像については、試合終 了後36時間以内に限って海外発信が認められており、条件にかなった映像については、NHKワールド・プレミアムでも放送しています。同じメジャーリーグ の映像でも、海外発信できる場合とできない場合があるのはこのためです。一口に放映権と言っても、その都度細かな条件があって、許された範囲内でしか海外 発信ができないことをご理解いただければ幸いです。これからもNHKワールド・プレミアムをよろしくお願いいたします。
詳しく説明いただいたが残念ながらお答えは余が前提理解しているスポーツ番組などの放映権について、であり 朝鮮中央放送については一切述べられておらず。再度質問をする。ただし考えてみれば海外の放送局のニュース報道などの流用はかなり行われており、慣例と なっているのか。キングギドラが世界中で暴れまわる様を北京放送だのモスクワ放送のニュースが伝える映像が映画でも使われていたものだが、とくに共産圏の 報道番組はよく使われていた記憶もあり。ただし朝鮮中央放送の「子どもの時間」など5分ほどの番組がそのまま使われており依然疑問釈然とせず。