富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月十五日(水)快晴。那覇在住のU氏、網上にて余の日剩に惜しまれて夭逝せし天才ベーシスト・ジャ コ=パストリアスについての記述を読まれジャコ愛しむU氏珍蔵のbootlegなジャコのライブ録音をCDRにて数枚贈られる。多謝。案内請われ漢代の李 鄭古墓、客家圍村の三棟屋、1899年新界割譲にて英軍と果敢に戦った吉慶圍の城壁、屏山の厦村登β氏宗祠と九龍西より新界西をまわり日暮れ前に聚星樓と 呼ばれる古い仏塔で史跡見学終わるがこの聚星樓、周囲の開発激しいとは聞いていたもののすぐ横にKCRの西線の巨大な天水圍駅建設進み西線の高架鉄道走り その背後には巨大なマンション聳え仏塔もまるで駅前のライオンズクラブ建立の記念碑の如し。競馬場に行く元気もなく帰宅してテレビ中継見て競馬。鮪の中落 丼。メインレースはR8(二班1800m)にてSize厩舎のDynamic Funは11月より俄然昇り調子で5戦2勝1亜1李1負、而も2連勝中で2勝とも序盤から先行して他にハナ譲らず。今晩も同じくハナをとってそのまま2馬 身差で快勝。Size厩舎の、馬が何の苦労もないように楽に快走する様を拝む。Dynamic Funは一班でどこまでいけるか楽しみ。今季前半快調だった小飛象(呉厩舎)は韋達騎乗で三着にも絡まず期待下げる。
▼首相小泉君また靖国参拝。改革など曖昧模糊なまま依然として進まぬ中こうした海外からの反発招くを承知で 意思貫徹、余は靖国だの慰霊といふものを一概に否定せぬが少なくともその国威の被害にあった隣邦にとって戦犯祀ることに理解得られる筈もなく、であるなら 首相たるもの何れの意思の発揚か知らぬが敢えて近隣の逆撫でする靖国参拝を行うべからず。どうしても参拝貫徹するなら英霊に対して祖国の再建すらできぬこ とを詫びては如何か。
▼一昨日の法律年度開始(法曹界の仕事始め)の典礼にて香 港大律師公會(香港法廷弁護士会)主席の梁家傑氏23条立法について「香港の法律は政治目的に利用されて おり法律が政治の道具と化した」と政府非難。これに対して律政司司長(司法長官)梁愛詩即刻遺憾表明。終 審法院主席法官(最高裁判所主席裁判官)李國能は三権分立の立場から23条について直接の言及避けたが基 本法23条立法が社会分化を引導しており政府と反対意見を持つ者の対立を激化させているが社会の各界が法治と司法独立について徹底した認識が必要であり一 国両制がそれによって維持される、と暗に政府の23条立法を非難。天晴れ。民主、平和、自由、人権を普遍原理とした憲法ですら政治的に利用する国家にて法 曹界よりこういった声も上がらぬことを思えば香港は「まだ」理性的か。
▼経済紙『信報』の社主・編集長である林行止、その秀逸なる連載度々この日剩でも取上げるが本日の話題は氏 先ごろ旅したオランダでの大麻について。アムステルダムにていかに大麻が少なからず日常的に吸引され、大麻合法化がいかに理に適うかを経済学者として述べ る。オランダ政府の衛生省の研究によれば大麻による「酔い」は酒類のアルコールの泥酔に程遠く、それ故に酒酔運転を禁じても大麻運転は禁じず、と。日本な ど大麻が世にも恐ろしき人格破壊する麻薬のように思われ、ましてや経済専門紙が大麻肯定を述べるなど想像もできぬだろうが、大人が常識的に考えればオラン ダなり林行止の思考が正常なり。先日も「20代の若者を中心に大麻の汚染が拡大している」と朝日が一面で深刻に報じていたがこのような日本の合理性欠如の 深刻さこそ世界の物笑い。
▼新聞社といへば読売のナベツネは論外として朝日の箱島なる社長の権力欲も醜悪なもののようで大江健三郎君 の小説酷評が原因で週刊朝日松下電器の経営改革を論じた記事でのAERA、それぞれの編集長、リベラル派論説主幹と更迭続き。『噂の真相』によると箱島 君「55年体制や護憲といった考え方はもはや限界に来ている。部数低迷に歯止めをかけるためにも社論を転換する必要がある」と宣ったといふが(同じ新聞社の経営者として少しは「大麻ネタ」を気軽に而も学究的に書ける林行止の爪の垢でも煎じて呑むべき)だい たい社説など読まれていないのであり社論を変えて部数が上がるほど国民は新聞など真剣に読んでおらず。所詮、巨人戦の切符であるとか、朝日は難しすぎるか ら読売、といった程度の判断。社論を右傾化させ護憲から改憲だか創憲だかにしたら「それでも朝日」と購読続けた層が乖離して部数など余計に低迷するだろう が。どうれあれ新聞記事の拙さ見ればわかる通り朝日とてかなり質の低下していることは明白、それでも朝日なくなれば一億総ファッショの時代の幕開けと思え ば朝日の奮闘に期待したいところだが、こんなのが経営者にいてはダメであろう、きっと。