富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月三日(水)快晴。夕方gymへと向えば道すがら駆友I君より電話あり大陸より戻った由happy hourの誘いありgymをいとも容易く断念し丁度Cnetralにて蘭桂坊はSchnurrbantなる独逸酒場にて落合いKonig Pilsenerを飲む。独逸の勇ましき女給がたっぷりと時間をかけて注ぐ麦酒は絶品にて二杯目の素人女給が独逸嬢の半分程の時間にていれた麦酒は著しく風味劣る。I君を晩餐に誘うがI君は大陸の連休中にて香港の会社に内緒で香港に戻りし故同僚に会うを怖れる。晩餐は天后の利休にて電話にて亭主S氏に問いあわせればI君の会社関係の予約はなし。I君と利休に向いI氏、Y氏とZ嬢。途中柬埔寨(カンボジア)より戻りしH君も合流。利休は香港の日本料理屋にて評価高き店なれど狭い店にバッテラの鮨詰の如く日本人サラリィメンが集い煙草の煙と仕事への情熱と鍋料理の熱気が店に籠り酸欠状態なのは苦しきもの。全席便所の前まで満席にて盛況甚だしきものなれど二更を過ぎればサラリィメンは銅鑼湾のカラオケバーにでも繰り出すのか一気に客はひきたり。繁盛はいいが最近厨房にて調理ばかりの女将さんは疲労困憊か。
昨日飲食店組合主催により大規模な反禁煙条例のデモ。飲食店が全面禁煙では不況の最中客足が遠のき大打撃と政府の禁煙政策を非難。政府の調査は全面禁煙を望む市民が大多数と真向から対立。デモには専欄作家の蔡瀾、料理評論家の唯靈、調教師の簡炳犀も参加、蔡瀾は飲食店全面禁煙するなら禁煙化は世界の潮流にていっそのこと香港を全面禁煙にしてはどうか(さうすれば蔡瀾も中国に移住するとすでに書いており(この場合、表現の自由の問題は考慮しておらず)香港からかなりの知財が流出しよう)と宣い、唯靈は飲食店全面禁煙は社会の二分化を促進すると警告、簡炳犀は喫煙者は高額を納税する市民であり吸毒ではないと叫ぶ。少なくとも煙草は毒。マリファナやコカインのようなサイコ〜なる快楽もなく、煙草を吸えば落ちつくだの安まるだの言うのはニコチンが切れた体調不活性の状態にてニコチンを吸入することにより安定した状態(つまり煙草を吸わぬ者の平常)に戻るだけの事。煙草を吸う者の自由は認めるが香港空港の如き一切二次喫煙のない隔離された場所だけとしマリファナ、コカインの類を合法化せぬか。劉健威の如き文人すら喫煙問題となると常軌を逸し「間接喫煙をせぬ権利というがそれが公共の場所を全面禁煙にする主張と釣りあうのか」「全ての公共の場所に行くのでもないのに自分の行かぬ場所まで禁煙にするのか」「これは自己の保護どころか他人の(権利の)侵犯である」と。更に或る精神病患者の事を採り上げ政府調査にて禁煙化にYesと答えた者よ!と呼びかけ此の患者の唯一の心の安らぎが喫煙なのだが公共場所たる病院が禁煙になるとこの患者の唯一の権利が剥奪され彼は破滅し死に急ぐ事となり調査にてYesと答えた者は自らの手を鮮血で染めることになろうぞ……と流石というべきか喫煙というドラッグ中毒者たるべき論調に我は唖然とす。ヘロイン中毒の患者の唯一の嗜好がヘロインの場合に病院にてヘロインを与えぬ事をヘロイン患者の権利剥奪と劉は言うつもりか。煙草というドラッグ(ヘロインの場合は本人の摂取は周囲になんら間接的影響はなく煙草の間接喫煙とは全く異る)の中毒者に権利などあろうか。また劉はかつて牢獄に入りし経験ある台湾の映画監督の辛い経験を例にして懲役中に無くて辛き事は一にオンナ、二に煙草、禁煙化に賛同する者は精神病院にも牢獄にも入ったことがなく其処に収監されし少数の者を迫害することを解っているのか、と。自らの権利を主張することが他人の権利を侵犯するのであり禁煙賛同者は排気ガスを吸わぬ権利を主張し、全ての自動車を走行禁止とし、伝染病にかからぬ権利もあろうから風邪を含めた伝染病患者は公共場所に入れぬようにしては如何か、と続ける。このようなことをせぬ事こそ相対の規準であり、そうできぬは身体は健康にて精神病である、と結ぶ。つまり煙草を吸わせろ、とそれ以外何ら説得力もなし。無様。