富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

矢祭町の公共建築

辰年二月初八。気温摂氏7.7/21.2度。家人と二人で水郡線水戸駅発0923の列車で東館へ(1103着)。


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東館は昨年の夏に青春18きっぷで水戸→仙台を水郡線経由で実行したとき東館にある「奇妙な公共建築」が気になり機会あれば探訪してみたいと思つてゐた場所。本日はJR東日本ときわ路パス(大人の休日割引で1,670円)を利用。

このパス「ときわ路」名乗るが真岡鐵道なら栃木(下野)に入れるのに水郡線常陸大子の先、県境の下野宮で。下野宮→東館は追加料金。この列車水戸発は4両編成だつたが常陸大子で後ろ3両切り離され、その先は1両。東館で下車はアタシと家人の2人のみ。先づは東館駅前の〈矢祭もったいない図書館〉へ。「東北最南端の町」と謳ふ矢祭町の人口は5,327人(2023年3月1日現在)で図書館の蔵書は48万冊。町民1人あたり90冊。全国市区立図書館の平均蔵書数は134.9千冊(2019年)で1人あたりの貸し出し冊数は5.4冊なので矢祭図書館の蔵書がいかに多いかは明らか。

矢祭もったいない図書館は、平成19年1月14日に開館し令和5年1月14日に開館17年目を迎えました。
寄贈図書のみで開館いたしました「矢祭もったいない図書館」は図書館設置の理念である「もったいない精神」を受け継ぐことが原点と思っております。
図書館の設置は町民のボランティアにより図書の整理及び運営までを担っていましたが平成28年4月1日から町の運営になりました。
もったいない図書館の更なる読書の推進を図ることを目的に図書を増冊いたします。現在必要としている図書のみで新刊から3年以内に発行された図書のご寄贈をお願いしております。
受け入れしました資料につきましては広く利用に供して参りたいと存じますので、ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

元々は矢祭町の武道場だつたかの建物で今も公民館と共用。小さな図書館だが本当に健やかな愛情に包まれてゐる。


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矢祭町は公共建設には資金投入だが町役場じたいは昭和の頃の建物そのもので堪へてゐるから立派。

合併しない宣言で有名な元町長は今…「国から目の敵に」:朝日新聞

町議会議員選挙がもうすぐだが町議会議員だつて全国で唯一「日当制」導入してゐたほど。

福島 矢祭町議会 議員報酬を日当制から月額制へ 16年ぶり|NHK

それが来月から町の財政安定を理由に月給制に戻されることになつたが、それでも月給20万円余で「議員が儲かる」ではない。

矢祭町の東館の中心にある町立矢祭小学校。設計は三上建築事務所水戸市)。コンクリート打ちっぱなしで外見は斬新だが実に機能的な設計。平成28年4月に町内の5つの小学校を統合して開校で8年目。町内各地からスクールバスで登校。建築を見ただけで、この小学校がどれだけ素晴らしいか、はよくわかる。職員室だつて校庭と校舎内に面して全面ガラス張り。勝手な参観でさすがに校舎内には入れなかつたが正門から校庭に勝手に入つて学校の様子が「見える」のが立派。


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矢祭町といふと風光明媚な矢祭山公園が有名だが交通の要所でもあつて水戸からほゞ水郡線と並走して郡山からは会津若松に至る国道118号線常陸太田を経て(旧棚倉街道)阿武隈高地から阿武隈川に沿つて宮城県柴田町にまで伸びる国道349号線がこの矢祭町で100mほど交はりもする。その交差点のところに位置するのが矢祭町の山村開発センター(福祉センター兼用)で、これが水郡線の車窓から見えて「こんな僻地にいったいこれは何だ?」と驚かされて、それが今回の矢祭町訪問のきっかけとなつた。


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とにかく南東北の山間にあつて他の周辺市町村との合併もせず「矢祭は矢祭」で自主自立、個性ある町政を行はうとしてゐる。その成果として全国でも有名な「もったいない図書館」や矢祭小学校のやうな充実した学校教育施設や福祉センターなどが維持運営されてゐる。

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矢祭町の公共建築ツアーは勝手にまことによろしいのだが東館にある町内でお昼に飲食店で営業してゐるのは手打ちうどんの山田屋食堂一軒(おそらく間違ひない)。当然かなりの盛況。出前の注文は対応できず途中から「電話に出るな」と親方。お昼はこちらで鴨肉うどんをいたゞいた。そして交通の便も水郡線は郡山〜常陸大子間は1日8便で(常陸大宮〜水戸間は1日19便)上りはアタシらが東館に着いたときに東館を発つた1103発の列車の次は1521発である。東館から観光地の矢祭山に行く路線バスもなく東館から1駅区間なのだが6kmほど矢祭山まで歩く。

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久慈川に沿つて平坦な道。途中はサイクリングロードもあり。関岡の集落を抜ける。今では山間にトンネルのバイパスもあるが旧道をかつては大型車まで走つてゐたのだらう。矢祭山が近くなると旧道はトンネルから出てきたバイパスの高架道の下に隠れる。

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矢祭町は奥久慈県立矢祭山公園が名所で、もうすぐ桜そしてツツジが有名。山肌の樹木がかなり薄い色なのはサクラの発芽なのだらう。それが満開を迎へると、こんな桃源郷のやうになる。

その頃からツツジの季節、そして紅葉は矢祭山を多くの人が訪れるは今日など日曜日だといふのに矢祭山に遊ぶ人たちは数へられるほど。


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川沿ひの公園にある木造の休憩所がとてもきれい。畳敷きの小上がりもあつて他に誰ゐないので、こゝでのんびりと読書して寛ぐ。


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1450に矢祭山を通過する下りの列車を狙つて構図も考へてスナップショット。これが背景がサクラ満開だつたら本当にきれい。

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1526に矢祭山を発つ上り列車で常陸大子へ。矢祭山から下野宮まで1区間の運賃を精算。大子町茨城県)も市町村合併しない町。どうせなら矢祭町(福島県)と跨境同盟結んでは如何か。袋田の滝矢祭山と両町とも観光資源もある。


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時間はあるのだが大子の町内で何かする術もない。古民家改造のカフェがあるくらゐ。そこで狭い町内から久慈川を渡り道の駅へ。

道の駅 奥久慈だいご 温泉に入れる道の駅

天然の温泉に浸かる(500円)。とても良質な少しぬる/\のお湯。入つたときにちょうど先客が出てアタシが出るときに数人が入つてきた。町中に戻り早めの夕餉。

大子の割烹料理|弥満喜

お昼なら奥久慈軍鶏のしゃも丼でも良いが夜なので奥久慈軍鶏の各部位を用ゐたすき焼きとする。これが肉がまことにさっぱりで美味。お酒は会津坂下の〈飛露喜〉を1本だけいたゞいてから横手の〈阿櫻〉を5合。


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もう完全に寝静まつた大子の町。1919に大子発の水郡線上り列車で水戸(2046着)に戻る。