癸卯年九月十七日。気温摂氏10.3/21.7度。晴。週刊読書人(20231013号)で小出裕章氏(元京大原子炉実験所助教)が福島原発の「処理水」について語る「〈汚染水〉問題について」をきちんと読む。「小出裕章」といふ存在自体が偏向と思はれなくもないし主張をそのまゝ鵜呑み不可といはれるかもしれない。政府と東電が目標とする理念ありきで事実が歪められるのと真逆に「小出的なるもの」も反原発といふ目標があり、それに向けて事実が不正確になりがち、と。たゞどちらの方が本当の事実に近いかといへば後者だらう。前者の方が明らかに嘘をついてゐる。未来に懐疑的に、慎重に考へる保守的な立場でさう思ふ。
市民会館のフリースペースでこの記事を読みながらノートをとつてゐたのだけれど放課後の高校生も勉強より友だちとのおしゃべりだし商談のオジサンたちもゐて静かに机に倚かるには図書館の方がやはり良いだらう。夜はセミナー聴講なので家人と早晩に市民会館周辺で食事を済ますことに。いつも町中華(香龍苑)になるので今日はカフェアルコイリスへ。ハンバーグが評判の食肆で和風のおろしハンバーグを選んでワインじゃないだらうと日本酒で菊水(1合で550円)とメニューにあつたのでそれにしたら「今日は菊水がなくて」と出されたのが兵庫の香住鶴であつた。それもタンブラー(トールグラス)に7分目くらゐ注がれる。330mlのグラスだとしたら230mlくらゐで1.3合か。食前酒にしては十分でありがたい。生野菜のたつぷりと敷かれた上のおろしハンバーグも美味。だがそれを15分で平らげて市民会館へ(家人は少し遅れて来る)。
水戸市民会館での所謂「市民大学」の水戸キャンパス100 (こちら)で稲葉寿郎さん(水戸桜川千本桜プロジェクト代表幹事)のセミナーで「牧野富太郎と水戸の人々」拝聴。牧野博士に絡む水戸の人として松村任三、額賀次郎と五百城文哉の三人を取り上げる。松村任三はNHK朝ドラ〈らんまん〉では徳永教授(田中哲司)として登場。水戸藩でも高萩の出と思つてゐたが高萩(松岡領)は水戸藩筆頭家老中山備前守の配分領で松村家はそこの家老職。任三の父親がその松村家に養子で実家は水戸藩士で任三の水戸生まれ。5歳のときに水戸藩主(慶篤)御前で四書五経講読と神童。東大の植物学教室での牧野富太郎との関はりは朝ドラ見てゐればご覧の通り。そして富太郎の次女(鶴代、ドラマでは千鶴)の夫·額賀二郎(1893~1965)は生まれは長崎平戸だが父親(静次郎)の家は水戸藩士で平戸は裁判官としての赴任地。二郎が東京大学在学中に牧野の娘と知り合つたのも松村教授の引き合ひではないか、と(牧野博士自身は松村教授からの縁談を断つた過去あり)。二郎は水戸で弁護士となり無産運動に没頭して昭和に入ると右派の革新運動に。鶴代とは離婚。そして五百城文哉(1863~1906)は水戸の生まれで父親が天狗党だつたため掃討され子どもの頃から苦学ののち画家となり高橋由一門下。他にも日光の東大植物園で助手ながら「園長」と呼ばれた望月直義も水戸藩士の子で、他にやはり旧水戸藩士で皇太后大夫香川敬三伯爵のつながりで土佐の田中光顕が牧野博士につながるなど稲葉先生の話の実に面白いこと。