富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

武肺に話題尽きず(拾遺)


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昨日の林郑不貞のおかげで医管局員工スト昇級。公共病院で職員の1割にあたる9千人とか言はれ局員陣線は本夕までに7千人がスト参加と発表。


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HA(医院管理局)も4.4千人が罷工と確証。林郑がこれにつきまた火に油を注ぐ懸念表明。発言時の苛立ちもひどくもはや精神疾患ありかと疑ふばかり。林鄭曰「採購不很成功 公僕按準則戴口罩 稱官員若不符戴了都要除」 明報

政府在全球包括內地採購口罩都「不是很成功」,所以作為政府要帶頭「慳啲使」,已發內部指引要求所有部門按準則戴口罩,即生病、前線工作人員才戴,目的是將口罩留給醫護,官員若不符合要求,「戴了(口罩)都要除下來」。特首辦其後出稿澄清,政府沒要求同事不可戴口罩,內部指引不適用於公務員自備的口罩。

林郑はこの2日、記者会見でもマスク着用せず、それを記者に問はれたところ「香港市役所は防疫のためマスク確保を企図したが内地も含めこれもできず」「医療防疫の現場などでのマスク確保のためにはマスク節約も必要で」「政府職員には疾病の場合、防疫の前線で作業する場合と人混みのなかにゐる場合はマスクするよう内規を設けている」とコメント。 行政長官辦公室回應傳媒查詢 林郑办が慌てゝ林郑発言を追従し補足説明。林郑のコメントはあくまで政府備蓄のマスクの必要数確保に関する林郑の所管であり政府は職員にマスクせぬやう求めてはおらず内規も個人で入手のマスクまでに適用するものではない」と。林郑も原稿読まず発言は淀みないが、こゝまで言及するか?の内容。かなり切羽詰まつてゐる。

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武肺感染者数では日本はタイを抜き中国本土以外では首位の20件。陸続きで人の往来多く封関もしてをらぬ香港ですら15件。日本は大丈夫だらうか。中国に次ぐX地域でパンデミックになりませぬやう。 

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(写真左上)郵便局は始業を午前11時として15時までの時短。営業時間短くすることで職員の感染リスクを下げるといふ。それで11時の開局前は長蛇の列。開ければ客が密集で、これでは防疫にならず。いつたい何を考へてヰるのか。香港の宝くじにあたるMark Sixも昨日の開催を最後に再開は無期延期。競馬場は一般席を閉めてゐても場外馬券場は平常通り営業なのだからMark Six購入だけ制限はおかしな話。今回の防疫では本当にちぐはぐな対応ばかり。本来必要がないことをやつてゐるから判断に了見がなく対応がまち/\になる。(写真右上)さっそくだが武肺にきく漢方処方薬なんてネタの出てきた。アホな防疫判断よか、こちらのほうがまだマシかもしれない。

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陳腐なデザイン多い香港郵政の記念切手で立春の今日発売の二十四節気シリーズの第一弾「春」は珍しくデザインも良いし丸い切手という意匠も面白い。だが普段なら孔あき点線を一旦折り曲げ、それでさっと切れるところ丸ででは何と切りづらいことか。今日の発売は穀雨まで。ではその頃に「夏」が発売になるかといふと年内は以降発売の予定なし。来年に持ち越しといふ息の長い企画。画像の上部の香港島風景の切手は1997年1月からの香港返還前移行期に発売されてたもの。エリザベス女王の肖像など入った英国領香港の切手は返還以降使用不可となるため返還の半年前に発売中止となり、この移行期切手を返還後も使用可条件で暫定で発行。返還後は「中国香港」の切手となるが、これが英国領香港時代の切手の意匠の美しさに比べ意匠も色使ひも安っぽく陳腐に。
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それにしても外を歩けばマスク、マスクでうんざり。澳門では路線バスではマスク着用必須。このマスク着用なんて「重圧」にポルトガル系市民は耐へられるだらうかしら。Rejeitadas lacunas na prevenção da epidemia | JTM(肺炎予防で余地もなし……とでも訳せばよいかしら)と澳門地元葡報紙。

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マスクといへば今朝のRTHKラジオで新西蘭の医者がマスク不足でもマスク洗つて使ふのなら今回の武肺の感染力や致死率*1ならばマスクせぬ方がマシと。それに対してNHKのNW9では東邦大学看護学部の先生はマスク不足の場合は洗つて使へると。イソップ童話のやうな世界。

▼情報の混乱。フェイクニュースの蔓延は武肺より迷惑。まさに口罩災禍なり。そのやうな中で冷静な分析を読むと溜飲下がる思ひ(SARS疫禍の時と同じ)。

張炳良「新病毒在散播 管治失效之病也在風土化」明報

香港市役所で運輸及房屋局長務めた張炳良教授(香港教育大学公共行政学研究講座)が役人といふのは免職となると実によく喋るもので今回の武肺をSARSとの対比で何が状況深刻か明晰に指摘。2003年当時はSARSと50万人デモのあと

① 「一国両制」の両制関係が中央と香港で和諧を基に良好で政治圧力を経済復興協力で乗り切るといふ明確な政策あり。

基本法23条に基づく国家安全条例の立法化撤回のあと民主派は普選を政治目標とし中央と香港市役所も対話の上、出口探る方向性あり。

③ 一旦は高揚した民意も社会分裂にまでは至らず公務員体系に対する信頼あり董建華後任の官僚出身の曽蔭権への指示高く政治不安からのリカバリー迅速。

それが2004年以降、政治改革は一向に進まず中央政府は愛国教育推進や2004年に831決定で普選実現を困難にして雨傘運動で本土自決が台頭し反修例風暴から昨年末の区議選に。林郑主導の香港政府に対する信頼もなく行政府組織もかつてのやうな制度や効率的、建設的なシステムも崩壊してをり中央政府も中联办通して得策を持たず。張先生は一国両制の再構築で中央は高度自治と港人治港に対してある程度の譲歩が必要とするが、それが习近平にはできない(それをすれば国内が騒がしくなる)。一つ興味深い指摘は普選実現のバーターとして23条立法といふ策略。23条立法は逃亡犯条例よりはまだマシで立法化はあくまで形式的なこと(事実、現状ではほぼ国家転覆云々で議員資格DQあり)。

 林行止「全殲武肺指日可待 中國興旺重創全球」信報

武肺の中共メディア眺めてゐると科学に立脚の医学的公衆衛生対策よりもまず国家主席の精神論が先立つことのおかしさ。この「戦疫」に対して「最强攻略以达致必胜」の重要指示(指令)习近平より発せられる。「第一位要求」は「坚决遏制疫情蔓延势头」であり「疫情就是命令、防控就是责任」といつたスローガンの提唱(前者は意味不明と林行止*2)。そして「坚定信心、同舟共济、科学防治、精准施策」とか4x4の訓示习主席が各級の幹部に対して「坚守岗位、靠前指挥,做到守土有责,守土担责、守土尽责」といつた訓示垂れ解放軍は「闻令而动,勇挑重担、敢打硬仗、积极支援地方疫情防控」といふ国運に関はる重大任務に挑む。このようなプロパガンダの「空砲」が「平疫」にどれほど効果あるのか。

醫家也許另有看法,筆者則相信有立竿見影效果,因為如果「習獨大」下了這麼多指示,疫情仍壓不下去,他的威權豈非要大打折扣(甚至如「謠傳」他可能要「下台」)。看習指示中還有「加強輿論引導,堅決維護社會大局穩定」以至「科研機構要加緊開展科研攻關,積極為打贏疫情防控阻擊戰作出貢獻。」料「特效藥」快將研發成功而社會回復和諧穩定可期。除非對中共全方位牢牢掌握內地國事民情沒信心,不然便不能不認同習主席「必勝」最高指示必會全面貫徹。

また中共成立百年を来年に控へる中共。釣魚台は日本に佔領されたまゝで台湾は独自路線をあゆみ「一帯一路」計画も陰りが見え香港もこのあうな情勢では党の威厳回復には「武肺全滅」しかなないと林行止。“Nature”誌からの記事(Warwick Mckibbin)紹介も興味深い。武肺疫禍の経済的損出はSARSのそれ(US$40b)の3-4倍と推定されるのは、この17年間での中国の経済規模の巨大化によるもの(SARS当時の中国GDPは全世界の4%が今では17%)。中国人民の海外渡航は年間2千万人が1.6億人に。海外旅行での消費もUS$100億からUS$2,773億に。武肺の致死率はWHOによれば4-5%でSARSの14-15%に比べ低率ではあるが経済的損失は巨大。余談だが“Bloomberg”と“Business Insider”が伝へるところで格安エアチケット販売網のKayakが見つけたさうだが中国南方航空公司が5月20日香港→紐約の片道チケットをUS$193-201でオファー(正規料金はUS$1,200)。ただし条件は武漢空港でのでのトランジットあり……如乏人問津,反證「杜疫」未竟全功!と林行止。

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研究加强新型冠状病毒感染的肺炎疫情防控工作(人民日報) 习近平代表党中央,向奋战在全国疫情防控工作一线的广大干部职工、医疗卫生工作者和科研人员、人民解放军指战员和各方面人员致以崇高的敬意,向患病者及其家属表示诚挚的慰问。习近平在讲话中指出……习近平强调……习近平指出……会议强调……会议指出……会议强调……会议指出……会议强调……会议指出……会议强调……要针对这次疫情应对中暴露出来的短板和不足,健全国家应急管理体系,提高处理急难险重任务能力。

打响疫情防控的人民战争(人民日報) 中国人民是伟大的人民,中华民族是伟大的民族。面对无情的疫病,只要我们更加紧密地团结在以习近平同志为核心的党中央周围,继续全力奋战、英勇奋战、团结奋战,排除万难、一往无前,我们就一定能打赢这场人民战争!

……全く林行止指摘の通り読んでゐる方が恥ずかしくなるやうな、この中共プロパガンダの洪水。言葉の空虚さ。

これにつき今日の報道でこの朝日もNHKテレビも感染の乗客を「香港で下船した客」として「香港人」と呼ばず。偏見になることへの配慮か。運行会社のサイトでは「新型コロナウイルスへの対応について」プリンセスクルーズ で

前航海において、横浜~香港までの区間クルーズを実施し、香港国籍の男性が1月20日に横浜で乗船し、1月25日に香港で下船しました……

って「香港国籍」はまずい!港独!と叱られる。そして次のクルーズはダイヤモンドプリンセス 2月4日横浜港発「運航中止について」プリンセスクルーズ なのだといふ。さすがにこちらについてはお詫びである。これも重箱の隅を突くやうで申し訳ないが「検査対象となっている乗船中のお客様及び乗務員全員の検査に要する時間を鑑み、誠に残念ではございますが」の「鑑み」の用法は拙い。「を鑑み」が「に鑑み」なのは(最近よくある誤用だが)いふまでもないが、ここでの「考慮して」の意で使つた「鑑みる」は「先例や規範に照らし合わせる。他を参考にして考える」(大辞林)であつて「先例に鑑みて」「過去の失敗に鑑み」と用ゐるもので自社運行の船舶での現状は「鑑みる」ものではない。

朝日新聞に「日本の停滞」という耳に痛いMIT教授の指摘。反発を忘れた日本人。それと読者投稿で実に「日本らしさ」のほっとするやうな話。前者の指摘にはピンとこないが後者の優しさは琴線に触れる。まったく異なる内容のテキストだが、この二つが同じプラットフォームに並立してゐるのがまさに〈日本〉なのだ。悲しいかな。 


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▼晋三動静(3日)18:21 築地のふぐ料理店「つきじやまもと」森喜朗元首相、青木幹雄・元自民党参院議員会長と食事……どうかフグに当たつてくれないものかしら。


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*1:SARSの致死率10%に対して武肺は中国国内で2%、外で1%以下

*2:疫禍情報の掌握が重要といふ命令か。