富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2016-11-18

農暦十月十九日。PageOne書店倒産。新加坡の大型書店チェーンで90年代に香港進出。当時或る仕事で糊口凌いでゐたアタシは新加坡から香港進出の準備に来たPageOne書店の経営者の面識得たがオシャレなのだが何か本屋としての拘りが見えず。英文書だけで始め徐々に中文書も揃へたが誠品書店(こちらも苦戦は同じだらうが)のほうが「これぞ誠品」のブランド力ありか。夕方から小雨。自宅の鍵の入つた小銭入れ自宅に忘れ晩に家人還るまでホームレス、太古の岡田屋にある意太利カフェで啤酒飲みながら待つ。
▼今日の都新聞の社説で香港議員失職につき「民意を踏みにじるのか」(こちら)は読んでゐて恥ずかしいほど。

  • 中国が香港の「高度な自治」を名ばかりのものとし香港住民の民意を踏みにじるような干渉は許されない。

と都新聞は憤りを見せるが香港市民の民意といつても市民に何か期待されて当選した議員が就任宣誓で中国を怒らせ議員としての自らの首を〆たのだから香港に干渉する中共中共だが中共の誤謬か議員本人の稚拙さによる判断ミスかと問はれれば私は後者だと思ふ。
アベノミクスでの黒田日銀のイカサマぶりなど最初からわかつてゐたことだが今になつてやつと正々堂々と批判が出てくるやうになつた。朝日新聞こちら)で上野泰也・みずほ証券チーフマーケットエコノミストがこの日銀の動きを太平洋戦争の泥沼に合はせて見せる。

いま日本銀行黒田東彦総裁が置かれた立場は太平洋戦争で旧日本海軍が短期決戦による勝利を目指して開戦に踏み切ったものの目的を達することができないまま連合国軍に長期戦に引きずり込まれた姿とダブります。
黒田総裁は2013年春の就任時に「物価上昇率2%を2年で達成する」とデフレ脱却の目標を掲げ異次元緩和に踏み切りました。しかし物価は上がらず達成時期は何度も後ずれし今月初めには「18年度ごろになる可能性が高い」と見通しを修正しました。2年という短期決戦のはずが5年以上におよぶ長期戦・持久戦に様相を変えています。
もともと2%のインフレ目標は欧米にとっても高いのでは、という議論がありました。潜在成長力が欧米より低い日本では明らかに高すぎます。出来ないことを目指し出口を考えずに無理やり金融緩和の洞穴に突っ込む姿勢は戦時中の日本軍のようです。
日本軍は負けを認めず「転進」と言い繕いました。「モメンタム(勢い)は維持されている」と強弁する黒田総裁も同様です。9月の会合で緩和策の「総括的な検証」を行い量的緩和長期金利の操作などを加え長期戦・持久戦対応にカジを切りました。勢いがないから長期戦になっているのであり総裁の言葉は矛盾しています。
よくないのは長期戦になっている原因を原油安など外部環境のせいにし失敗の責任を認めないことです。ミッドウェー海戦で大敗したのに連合艦隊司令長官も実行部隊の司令官も責任を取らなかったのと同じ構図です。
9月の段階で「無条件降伏」しインフレ目標を実現可能なレベルへ下げるべきでした。副作用が大きいマイナス金利も早めに撤回しておくべきでした。(略)
長期金利操作など4種類の追加緩和策も用意した日銀は持久戦の構えです。太平洋戦争でいえば短期決戦で勝てなかったが上手く戦力を配置して時間稼ぎできる態勢は構築した。あえていえばガダルカナルでまだ負けていない状態でしょうか。ただ目標が間違っているから何れにしろ勝ち目はない。外部要因に責任転嫁せず負けを認めて目標を再設定する。そこにしか勝機はありません。勝つ見込みのない持久戦を続ければ何れは兵糧が尽きる。歴史が教える教訓です。

これは非常に常識的な見方。それに対して元日銀行員で現在は舞台の脚本と演出をする松枝佳紀の黒田観が興味深い。

ある意味では確信犯なのかもしれません。異次元緩和もマイナス金利も、やらないうちは「まだ金融政策でやれることがある」という変な期待が残ってしまう。すべてやってみて、それでも目標は達成できないとなったときに初めて先へ進める。それを最初から狙っていたんじゃないでしょうか。

……そんな。その、まるで祇園で遊ぶ内蔵助で敵の目を欺くような芝居を黒田がしてゐるといふ。そのために将来の国庫破綻につながるやうな金融政策かよ。しかも具体的に、その「先へ進める」具体的な政策が(この松枝コメントでも)全く見えてこないのだから。