■ - 富柏村日剩

fookpaktsuen2016-10-30

農暦九月晦日。晴。SCMP日曜版で一面トップに香港で日本の中小企業や若手が企業云々といふ記事あり。けして昨日今日の話でもないのだが。典型的な提灯記事。気になるのは香港の日本人の居住者数。香港政府のイミグレの統計では6,900人なのだが総領事館は27千人といふ数字あり。香港のデモの参加者数の警察発表のやうな違ひ。イミグレの数字は就労査証の所有者数で永久居民と同伴家族は含まぬといふ説もあり（真偽不明）。総領事館は居留届に基づき出したまゝ離港した者の消去が追ひついてゐないのか。週末で月末の残務整理。数へたこともないが超過勤務月百時間にはなつてゐるのではないか。家人の進めでiPadにdマガジンなるソフト入れたら月数百円の会費で日本の雑誌ほぼ見放題。なんぢゃこりゃ？だが出版社も雑誌が売れないなら、このdocomoのサービスに提携していくらかでも収入得た方が得策なのか。
▼週刊朝日？だつたか誰が書いてゐたか失念したが日本政府の税収入の37％が国債費に消へ、これがアベノミクス成功すると2024年度には55％、失敗でも47％になるのだといふ。国民の税金を投入して国債を国が買ひ経済成長……それも演出された見せかけのもの。で誰が儲けるのか。こんなバカな政策掲げる晋三や日銀黒田はもはや犯罪者だが晋三のそれを支持する（指示した）のは有権者たる国民。バカにつける薬もない。
▼TPPとて甘利の頃は「これに加はらないといけない」だつたが賞味期限切れ。他の国の動きも鈍つてゐるなか日本だけが焦り月明けには衆院通過させ今国会で関連法案成立させるといふ。これにつき世論（共同通信調査）は「慎重に審議を」が67％で自民党と同じ「今国会で成立」は18％だが、その18％の意見が通る。自衛隊の南スーダンでの駆け付け警護に57.4％が反対。それでも自衛隊は不測の事態のリスク高き場所に赴く。これまでの自民党政権なら、これほど世論にかけ離れた政策実現が続けば嘗ての物品税導入等のやうに当然のごとく選挙で敗北となるのだが。これも責任野党がないといふ理由だけで自民党が永遠の与党化。それもかつての派閥の力学もなく巨大なファッショ集団なのだから。
▼天皇の生前退位については賛成、反対から意見出揃つた感もあるなか『国民の天皇 - 戦後日本の民主主義と天皇制』の著者Kenneth J. Ruoff 教授の「遅すぎた退位論議 - 「皇室の将来」と右派ポピュリズム運動をめぐって」（岩波『世界』11月号）読む。天皇制に詳しい学者らの間で立場は別として皇室典範に退位規定なきことが大きな欠陥といふ認識は誰もがもつてゐた。「他の体制をとる国に比べ民主主義国は緊急な修正が必要となる前に欠陥のある法律を予め手直しすることは不得手」だが、今回の生前退位は天皇明仁の意思尊重するのであればこの問題は「良識と基本的人権」の領域に属する緊急の問題。Ruoff 教授は自分は日本人ではないので……といふ立場で問題をタブー視せず列挙する。女性天皇認めなければ（秋篠宮を経る、経ないにせよ）悠仁親王に皇位が継承されることになるが皇太子（徳仁）にとつては自分の娘（愛子）が降嫁し皇族の地位失ふなか甥の悠仁に皇位授ける蟠りを生じさせるが、皇太子のこの苦しみを理解せず皇太子と皇太子妃への明け透けな批判となる。悠仁も何らかの形で孤立に陥る。もし悠仁が後継者（男子）まうける前に若死にしたり、ゲイであつたり、結婚しても子供ができず、子供ができても女子であつたら……と考へると問題の先延ばしはできぬのに放置される。「遅かれ早かれ必要な男子継承者がゐなくなる」のに。Ruoff 教授からすれば、さうした問題があるのに今上天皇の退位だけを今回暫定的に認めることで問題の回避が理解できない（当然だが）。たゞ当然だが女性天皇を認めるとか、それよりもそこから女系の天皇がうまれることが「万世一系」といふ國體の本義に関はるから手をつけられない。国民の感情や天皇の意思ではなく、さうした「国のかたち」にこだわる人たちが、この問題の解決を遠くする。