富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2016-10-15

農暦九月十五日。建築家の小嶋一浩氏急逝。57歳。昨年の十月末に香港大学建築学科で講演を拝聴。

二十世紀が経済発展など大きな⇨の時代だつたのに対して今は人の価値観や流れがけして集約される個々の違った方向、流れの小さな無数の→の時代で、それにどう建築が対応するのか。

といふ話。“Group of Small Arrows”である。熊本の宇土小学校や立川第一小学校等の作品。その講演の翌日、小嶋先生はじめ関係者の皆さんと香港で流行るフォスター卿やロジャース卿によるコンセプトデザインの「高級」集合住宅見学ツアーにご一緒(こちら)。あれから一年。今年も年内にまた来港かもと聞いてゐただけに……。周末。官邸で残務整理。電通の社員が重労働で自殺に至つてゐたが先月などアタシも月100時間は超過勤務してゐたのかしら。一旦帰宅して晩に家人とアイランドシャングリラホテルのPetrusに晩餐。いはゆる銀婚が今月で、その祝ひ。フォアグラと牛肉のタルターレの二皿を前菜でシェアしてメインは子羊をシェアといふ選擇にソムリエからの提案はDomaine de Trevallon(2004年)。あの噂に高きテーブルワインを今晩に、とは、これも一興。
天皇生前退位につき日経が一昨日「上皇」といふ提案が聖上自身から出てゐたこと報じてゐたが昨日のこの続き記事曰く

官邸は杉田和博官房副長官を中心に少人数で検討作業を進めていたが、象徴天皇制を定めた憲法との関係などから生前退位の実現は難しいと判断。今春「摂政で対応すべきだ」と宮内庁側に一旦伝えた。官邸が摂政案を軸に検討していたところ陛下の意向が突然、報道で明らかになった。寝耳に水の官邸は陛下が自らのお気持ちを直接、国民に働きかけるという異例の対応に出たことで生前退位を本格的に議論する方向に舵を切る。

……実に生々しい動き。あのNHKが政府の意向も気にせず生前退位報道したのだから。そして是々非々の日経が有識者会議開催を直前に、のこの記事。この生前退位について瀧井一博(国際日本文化研究センター教授)のコメント(朝日新聞こちら

天皇のあり方は憲法にしたがって設計され時々の環境や必要性に応じて決められるべきだという観点から生前退位はきわめて難しい問題をはらんでいます。今上天皇の個人的意思によって今後の天皇のあり方が規定されることは禍根を残しかねません。
天皇老いていかれることに国民が思いを致し、お隠れになった場合にそれを悼み服喪するということも象徴に伴う重要な機能と考えられます。ひとつの象徴が去り新たな象徴が誕生する一連の出来事は悲しみから新たな時代の自覚へと国民の意識に再生を促す作用を果たしうるからです。
そういったことも念頭に置きながら今回の天皇の「お言葉」を国のかたちにいかに反映させていくか考える必要があります。退位を認めるとしても特別立法で片づけるのでは意味がありません。「お言葉」が皇室制度のあり方を総体的に考え直すきっかけとなることを願っています。

……なぜ聖上がここまでのリスクがあつてまで生前退位の、実は戦後の象徴天皇制での見極めの覚悟を決めたか。かなり際どい賭けではあるが、ある面「晋三に感謝」である。
▼「自民党により」憲法審査会が近く再開。さう、これは本来は国民の要請を受けた国会によるもので形の上では各党入つてゐるが今回は自民党によるやうなもの。これについて朝日新聞(国分高史)がよくまとめてゐる(こちら)。

自民党憲法改正という「党是」の実現に最も近づいたのは、いつか。それは衆参両院で「改憲勢力」が3分の2を占める現在でなく10年前の2006年12月だったという説がある。
当時、改憲手続きを定める国民投票法案が衆院憲法調査特別委員会で審議されていた。自民、公明の与党と民主党はそれぞれの案を提出。民主党改憲そのものには反対でなく双方は共同での修正による法案の一本化を模索していた。背景にあったのは改憲には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要で、それには野党も含めた合意形成が必要だとの考えだ。共同修正はその試金石と位置づけられ、双方が歩み寄る姿勢を明確に示したのが2006年12月のことだった。
だが2007年の年頭記者会見で安倍晋三首相は「憲法改正を私の内閣でめざしたい。参院選でも訴えたい」と表明。これを機に協調ムードは壊れ、共同修正は政局の波間に消えた。
議員の数だけに着目すれば、いまの「改憲勢力」は10年前よりもはるかに議論を進めやすい状況にある。ところが現状は、圧倒的な数の威圧感が公明党の慎重論や民進党の警戒心を呼び、かえって自民党が望むような議論の妨げになっているように見える。安倍首相は憲法審査会で改憲案を示すことが「国会議員の責任」であるかのようにいうが、それはあまりにも先走った物言いだ。これからの審査会では国民が切実に改正を求めるような不備がいまの憲法にあるのかどうかという原点から議論を始めるべきだ。そうでなければ国民不在の「改憲のための改憲論」になりかねない。
「3分の2」の多数派に含まれない少数会派が意見を述べる機会も、これまでと同様に十分に尊重される必要がある。憲法審査会は政府と議員の質疑ではなく議員同士の自由な討論の場だ。それだけに個々の議員の見識もよくわかる。そして何よりもその行方は国民全員の将来にかかわる。議論を注視し自分たちの問題としてともに考えていきたい。

▼かのやうに天皇制だ憲法だと大きな問題の検討が浮上してゐるなか「あの」櫻井よしこが名言(毎日新聞こちら

戦後日本の仕組みは憲法も含めて大幅な見直しが必要だが、その際は賢く深く考えた対処が大事だ。きちんとしたところまで時間をかけて英知を結集するのが国家の責任だ。

……よくぞ言つた!つまりこれらの大事は晋三に任せられぬ。櫻井よしこの発言で初めて感銘を受けた感あり。天皇制や憲法に比べればネタとしては小さいが「母さん、ぼくのTPPどこにいつてしまつたのでせうね」みたいに忘却の彼方にいきさうなTPPについて。TPP参加12カ国のうち国内で承認手続き終へた国はまだ皆無であるなか、日本は国会で審議始まるが一時の晋三による甘利のあまりなTPP推進の動きに比べると、まるで勢ほひがない。タイミング逃したた上に自民党にとつては東北や北陸で惨敗の元凶がこれ。是々非々の日経は社説(14日)で「TPP承認で世界の自由貿易を主導せよ」(こちら)と嘯くが当の米国が大統領選挙でTPPに加はらぬこと選挙PRしてをり米国抜きのTPPは換骨奪胎、否、少なくとも日経のいふやうな「日本が主導」はだうであれば無理。新加坡にでもお願ひすべきでは。晋三は14兆円だとか絵に描いた餅のTPP効果をどうにかアベニミクスに、と願ふばかりか。