富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

吉右衛門〈石切〉

fookpaktsuen2016-01-18

農暦十二月初九。昨晩の雨が夜半に雪となり朝、夜明けに宿坊の障子開けるとお庭は一面の雪景色。暫くすると雨になる。旅寓を出ると歩道も雪が溶け鳥居坂坂下の交差点はぐちゃぐちゃ。慎太郎線で汐留。新橋駅の烏森口に出ると都内なら雪解けも歩けるかと思つたらぐちゃぐちゃ。打合せ予定の出先に着くと職員も大半が遅刻で閑散。打合せ済ませ昼前に虎ノ門の砂場。雪虎ノ門砂場の畦道。悪天候で此処も閑散としたもの。銀座。改修後初の歌舞伎座播磨屋の〈石切〉を見る。播磨屋高麗屋が近年多い演目で今回は久が原T君に吉右衛門が兎に角好演だから見てと勧められ、目利きの彼がそこまで言ふなら、と最初の二つの芝居は間に合はず播磨屋の〈石切〉から。成る程、播磨屋の円熟みたっぷり堪能。筋ぢたいは面白みに欠け梶原平三演じる役者が良いことだけが頼み。今なら吉右衛門仁左衛門でせう。もし辰之助が生きてゐたら、これを演じてほしかつた。続いて大和屋の〈茨木〉は、これを絶賛する人もゐるがアタシには大和屋で良さがさっぱりわからない。大和屋演じる老叔母は寒々しいほど枯れてゐるばかりで「実は鬼女」で鬼に化けてからは邪鬼ぶりに欠ける。相手役の嵐はリキ入りすぎ。平成になつた初夏に演舞場で芝翫の〈茨木〉を見てゐるが、老いても神谷町の身体能力のほうが、これを演じるには良い。1979年4月に歌舞伎座歌右衛門が演じてゐるが見てをらず、想像しただけで鳥肌が立つばかり。雨もすつかり歇み青空。銀座線で渋谷。さすがに人出も多からず。ずいぶんと浄化されたセンター街抜け東急ハンズ。ジッパーの部品一つ調達。高校時代の親友K君に顔本で繋がり最後に会つてから実に32年ぶりに再会。近くのカフェで旧交温めつ早飲み。くじら屋に飰す。識るバーで二更まで飲む。語るにもあれこれ語りきれず忸怩たるものあり。