富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2016-01-19

農暦十二月初十。晴。朝食後に旅寓の図書室で日記綴つたりしてゐると老紳士に「素敵にボウタイ結んでゐらっしゃる」と声かけられる。その方も同じように一見して手結び。「手結びでいらっしゃいますね、私もそれが好きで」とお答へすると、その方は「結んであるやつはボーイやドアマンが仕事ですものですよ」と仰り、さっとボウタイを解き「たゞ僕はもう首も細くなっちゃったから、かふしてピンで短くしてゐるのよ」と見せてくれる。で「鏡を見ないほうが勘と手の指の慣れで結びやすい」なんて暫しボウタイ談義。アタシに比べ、さくさくっとボウタイ結ばれる。名刺いたゞくと松本某とお名前あり、この会館のInntakerと肩書きあり。元々は理事で、こゝの建物の別館は……って故・松本重治氏のご子息(この方のお姉さまが槇文彦氏夫人)。曽祖父は、が松方正義の話になる。楼上の宿房から下り図書室に朝から来るだけだつたがボウタイ結んでゐると良いことがある。家人と一番町の村上開新堂に昼餉。これぞ日本のフレンチ、量も丁度、宜しい。タクシー拾はうとすると外まで見送りに出られた女将が戻らずタクシーまで止めてくれ恐縮至極。代々木で夜まで出先仕事、そこで欧州に転勤だといふ旧知の若者に逢ふ。新宿に出て晩六時に開く識るバーで独酌。まだ若いママと四方山話小一時間。麻布十番。さかな料理の「富ちゃん」で家人と飰す。お通しが鮟鱇の肝、白子、刺身もやはり美味い、ヤナギカレイ。焼酎二杯。もうかなり出来上がつたが鳥居坂旅寓に還る途中で中華エリートが仕舞ふ前でスープソバ啜る。女将が亡くなり一人で店を切り盛りするご主人もかなり老けた。たふたふ一晩も奥麻布のバーHに寄れず。