農暦閏九月初七。先週木曜が陰暦で九月晦日、翌日からてっきり十月と数へてゐたら今年は九月が閏月だつたと今日=初七日になつてやつと気づく。荷風散人が戦時中さまざまな統制のなかで何が困つたかといえば陰暦の使用禁止され暦も新暦のみとされたことで陰暦がわからぬ、と書いてゐたこと、ふと思ひ出す。咳が止まず喉痛もひどいが仕事休めず。午後、湾仔の公立病院。高血圧と高血糖の定期診断だが診察の前に「香港大医学部でアジア人に多い心筋梗塞の研究のため心房顫動のチェックに協力してほしい」と言はれ顫動?……意味不明、英語で“atrial fibrillation”と言はれたが余計にわからぬ。まぁいゝや、とテストに応じたらbluetooth機能の小さなディヴァイスを持たされ両手の指三本で押さへ、学生はiPad miniで作業。あとで調べたら心房細動の検査……まだわからん。いずれにせよ異常なし。iPadが出たときに、これが医療現場で活躍するとまでは思ひもせず。相変わらず待ち時間短く半時間で診断と薬局済ます。いつも供される処方薬のうちJanuviaといふ血糖値制御のための薬だけは公立病院では扱はぬ新薬で「院外処方」となるが高い。いつも香港のWとMといふドラグストアの二大チェーンいずれかで(せめてクレジットカードでポイント貯めよう、と)購入してゐたが官邸に戻る途中で昔からある下町薬局で、薬剤師はをらぬが院外処方扱へる香港の何だか認可はのだが、そこで処方箋見せると「箱から開けていゝ?」で16週分=4箱でHK$80引き、しかも逆算するとHK$14.3/錠で大手ドラッグストアの8掛。侮れぬ。ちなみに日本でこのお薬の並行輸入は1箱(4週間分)で7,281円で260円/錠でやはり香港のほうがずっと安い。晩遅く帰宅して昨日の水炊きの汁残りで雑煮をつくり飰す。
▼一昨日の都新聞夕刊、佐藤卓己先生の論壇時評の「気まぐれサラダ」選ぶか、が面白い。朝日新聞叩きのなか慰安婦(())強制連行といふ吉田証言の嘘暴いた秦郁彦氏による22年前の「従軍慰安婦たちの春秋」が『正論』11月号に再掲されたさうだが、その秦論文の最後は
ともあれ、日本統治時代に数万にのぼる朝鮮人慰安婦たちが、故郷を離れて辛酸をなめたのも厳然たる事実であってみれば、何らかの形での「補償」を考慮する必要があろう。
とあるさうだが、この秦論文含む『正論』の朝日叩き特集に秦氏のやうなかうした「他者への配慮」ないのが残念と卓己先生。朝日叩きも週刊金曜日や『創』の反論もお互いシンパ囲ひ込むだけで敵対的な読者まで読ませ説得する意欲も見られず、そこに論議など成り立たず、かうした不毛な「炎上」のために消費税やTPP、少子化といつた問題が周辺化では、それこそ国益を損なふ、と。御意。(アタシも手元に届いてゐる未読の)『Journalism』10月号はアベノミクス特集ださうで小田嶋隆「経済政策を隠蔽する用語として『アベノミクス』は役割を果たしている」は、そもそも互いに異なる方向を目指す「三本の矢」を強引に束ねたアベノミクスという「オレオレ経済用語」の使用こそダメ、世論調査で「アベノミクスを支持しますか?」と問ふのはメニューで「シェフの気まぐれサラダ」選ぶやうなもの。それは思考が面倒な人向けのサラダ(戦略)でありシェフ(首相)の印象だけで食材(政策)の中身まで検討しようとせぬ、と。御意。
▼意太利大統領なんて名誉職でよく知らぬが珍しく新聞記事に出てゐたのがマフィアのボスに関わる裁判で大統領としては異例の証人尋問の所為。そのナポリターノ大統領は旧意太利共産党出身で1992〜94年に下院議長、で2006年から大統領なのださうな。名誉職とはいへ、この方が温厚で清廉な人柄とはいへ「共産主義者」を国会で大統領に選ぶ、やはり意太利は面白い。
@fookpaktsuen: 東京新聞(社説)香港占拠1カ月 法治は党のためだけか URL 朝日の「貧乏人による抵抗」論に比べ、とても普通にきちんと問題点を指摘している。