富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Ai Weiwei’s Appeal ¥15,220,910.50

fookpaktsuen2014-03-31

農暦三月初一。午後遅くジムで5km走る。佐敦のパブで麦酒飲んで九龍站圓方の映画館。“Ai Weiwei's Appeal \15,220,910.50”見る。艾未未師の件んの脱税容疑についてのドキュメンタリー。艾師が脱税容疑で検挙されたが本来はかりに所得隠しがあつたにせよ艾師のプロダクションによるもので師自身は直接このプロダクションの経営者に非ず、訴へられるとしたらプロダクション代表であり、なぜ艾未未が容疑者にされたのか、それぢたいがこの脱税容疑が茶番で艾師拘束が目的だつた、と。それを、この現代中国代表する芸術家が人権派弁護士たちと与み徹底した司法闘争挑むところが立派。北京の司法や公安の当局も艾氏らの主張に内心はどこか共鳴してゐるやうな表情を見せる時もあり艾師のスタジオ(FAKE公司)前に常駐する公安の一人も親しげで可笑しい。中共の建前がいかに虚妄であるか。1500万元に及ぶ追徴金のうち9百万元が艾師支持する市民の募金で集まり、それへの借入証の発行だけでも芸術的パフォーマンスにしてしまふ艾未未の発想。司法判断もなされぬまゝ一旦納めた追徴金は返金もされず……の混沌。Z嬢来て青山真治監督『共喰い』見る。田中慎弥の原作は読んでゐたが小説で読める思索的な部分が映像では隠れる分、普通の小説→映画化だと「そんなシーンぢゃないだろ」と落胆するものだが青山真治も当然、文学的なので「あ、あの物語はこんな風景だったのだ」と納得してしまふほど。主人公(菅田将暉)と彼女(木下美咲)も適役だが父母役の光石研と田中裕子が醸し出す人格が凄すぎて原作の物語からは超越した存在感あり。父の愛人役の篠原ゆき子が映画の冒頭のバカな酒場女から徐々に魅力的に映るのも素敵。たゞ閉塞感たっぷりの絶望的な物語のなかで最後のあのシーンはないだらう、山田洋次ぢゃないだから……は正直なところ。あの昭和の終はり頃の風景、懐かしいのはあんな小さな町でも「ヘンな人」がまだ社会のなかでヘンな形ではあれ認知されてゐた、といふこと。自分が幼いころの戦後の社会では郷里の町にも(今なら完ぺきに排除されてゐるであらう)ヘンな人たち、犯罪に近いこと(今なら犯罪だ)をしてゐる人たちも、かなり過去に傷ある人たちも近隣の者がそんなものも受け入れて社会が平気だつた、と思ひ返すばかり。