富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Prix de l’Arc de Triomphe

fookpaktsuen2013-10-06

農暦九月初二。気温は朝が摂氏25度で日晝は30度くらゐになるが湿度は36%だとか香港的には乾燥。目がちか/\するのは最初、大気汚染か、と思つたが中共国慶節連休、これは乾燥の所為かも。手もかなり乾燥でハンドクリームが手放せず。Z嬢と久方振りに裏山に上りカントリートレイルコース歩く。Trailwalkerも直前で精鋭たちが凛々しく走り抜けるなか日傘さしての漫歩。肌を灼くやうな強い日差し。鰂魚涌に下り歴史的建物一般開放の一環でESFの舊Quarry Bay Schoolを見学。すでに1926年の写真にある建物で当時この香港島東部の辺境之地に英国人学校出来たのは鰂魚涌にSwire財閥のTaikoo Dockyardあつたからで(こちら)創立50周年のQuarry Bay Schoolは1985年にBraemar Hillに移り、その後、培志男童院となつたが何かと訳ありの十代の男子のみ収容する施設たる男童院(Children and Juvenile Home)は外界から隔絶された施設ゆゑ水上勉的に何かと院童間の稚児苛めの如き悪さもあり話題少なからず(こちら等)。男童院廃止のあと廃屋の頃の写真(白黒)。その後、青少年発展聯會なる土共系団体が政府よりこの建物借り受け「徳育発展中心」なる青少年の健全たる発育目指す偏向教育施設に。植民地の英童学校から男童院、そして国民教育施設……とフーコー的に「教育がいかに政治的か」の証左の如きこの教育施設の歴史。Taikoo Placeの日曜マーケット。有機野菜やチーズ購ふのだが葡萄酒の試飲で晝前からご機嫌。ワイン商のフランス人青年が愛嬌あり雑談で「今晩は凱旋門賞ね」と話すが英語で、なのにPrix de l'Arc de Triompheだけはすら、っと仏語で出てしまひ青年に「かなり競馬好きだな」と笑はれる。凱旋門賞ロンシャン競馬場で見てから、もう10年*1Z嬢に「鰂魚涌のシンボル」のやうなビルコンプレックスである益昌大厦(英皇道に面するのは海景樓と福昌樓、それから山側に西から海山樓、益昌樓、益發樓が並んでおり、この集合体の総称は不明)に、それなりに人気の小さなレストランがある、と聞き訪れてみる。結果は「偉大なる素人料理」だが昨今の香港は台湾的に素人人気の「クロワッサン的な」食肆が人気なのだ。店の前がこの建築群の有名なテラス?で、そこに住民の矍鑠たる老人たちが机と椅子持ち出してトランプなど遊ぶ光景眺める。ジムに寄り風呂浴びて帰宅。午睡。今更、で先日トマト書店で入手の山田真哉著『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)読む。数年前のベストセラーと思つたら2005年で8年前。タイトルと着眼点の見事さで話題となつたが内容は容易な会計学入門。それと商売の基本。晩に生ハムや自家製の叉焼、それにパイを焼きLes Pagodes De Cos Saint-Estephe 2001年飲む。凱旋門賞は香港時間で22:15でこんな遅くまで起きてゐる自信なし。昨晩三更にテレビの鳳凰台「文化傾程」で白先勇先生の巻あり録画済みのそれを見る。まぁ老いて尚、壮健、崑劇に美学追求の姿勢畏れ入るばかり。凱旋門賞。スミヨン騎手騎乗のオルフェーヴル、昨年の、あの「無邪気な負け」から一年で一番人気。武豊騎手のダービー馬キズナも参戦。フランス馬のMeandreとオルフェーヴルのQでいくつもりがミアンドル欠場、で昨今の「重賞は牝馬」イメージでトレヴは二番人気で結果、こちらが優勝でオルフェーヴルは末脚及ばず二着。さう、凱旋門賞は国際G1でも馬齢でハンディキャップレース。五歳馬は大変だ。キズナ四着。また今年も日本馬優勝果たせずとも二、四着とはご立派。
▼昨日の日経夕刊が「中国映画市場2020年に世界一 興行収入で米抜く」とユネスコ見通し、いかにも土曜夕刊らしい一面トップ記事。それほどの映画市場が中共政府の制限で表現の自由もないのだから。2020年には果たして、どうなつてゐるのかしら。
蘋果日報が《信報》地震「獨眼香江」版全組人集體辭職と報じる(こちら)。信報の「獨眼」欄は敢へて多少ゴシップ的に、この新聞のなか他では扱ひにくいネタをまとめて多少面白可笑しく、多少その記事に書かれた本人が読んだら不愉快な感じのコラム記事が並ぶ一面大の部門。それが担当の副編集長はじめ部員が集団で辞職の由。信報がだん/\と言論自由確立の媒体から体制的になつてゐる、といふ指摘は昨日今日の話に非ず。この新聞の創始者で社主でもあつた林行止が新聞社を手放した段階で、その後の流れは見通せたことかも。だいたい書きにくい記事を一つの面に収める、なんて発想ぢたい窒息モードだつたが。
▼朝日読書欄より「消費増税」について。民主党政権が消費増税容認路線に転換するにあたつて社会保障機能を強化しながら経済成長を図る「社会的投資国家」の財源として消費増税を位置づけ、これは自民党が戦後主導してきた公共事業を軸とする「公共投資国家」に対抗する国家戦略だつたが、民主党政権にとつての不幸はこれを「ボトムアップで議論して鍛え上げ政策綱領化するところまで辿りつかなかったこと」。欧州では左派リベラル政党が福祉国家の充実強化と引き換えに逆進的な消費増税を容認してきたが日本では伝統的に左派リベラル政党が消費増税に反対するという「ねじれ」。民主党政権もまた「福祉国家を逆進的な租税でファイナンスする」というパラドクスを受け入れられずに惨敗。財政と民主主義の関係。……以上諸富徹による清水真人著『消費税 政と官との「十年戦争」』(新潮社)の紹介より。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

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*1:二〇〇三年十月五日(日)快晴。昨晩の深酒で起きれば早十時。凱旋門賞にて朝食もとらず珈琲一杯にてZ嬢とRER-3からメトロ乗り継ぎ送迎バスでLongchamp競馬場。昨日までの温かどころか暑さから急に冷え摂氏15度ほど。さすがに昨日など比べものにならぬ人出。第1レースまで時間ありどうにか卓子確保してluncheon一箱購ひ食事しつつ予想。第1レースには騎手Eric Legrix君Businessmanに騎乗、paddockより馬場への通路にてZ嬢声かけるとEric君もそれに応へご挨拶。せめて三着期待したが着外。(略)で凱旋門賞、一番人気も競馬紙Paris Turfの扱いも貴公子Soumillon騎乗のAga Khan王の持ち馬Dalakhaniがダントツ。展開として同氏のDiyapour(Gillet)が先行してレース引っ張り直線でDalakhaniが、と判るのだが、一昨年のSakhee、昨年のMarienbardと二連勝(他に95年にLammtarraで計三勝)の天才騎手Dettori君、今回はDoyenに騎乗ながら10倍と揮わず。Dettori君、香港での騎乗を見る限りすでに最盛期は過ぎた気もするが凱旋門賞に三連勝すればPeslier君の三連勝に並び計五勝目と、その神話づくりを佑ける気持ちでDettori君に賭けるが予想通りの展開でDalakhaniが優勝、Detttori君のDoyenは四着と無念。Soumillon君の悦びの表情とそれへの満場の歓声、それが美しき雲流れ柔らかい早晩の日射しのそそぐLongchampの競馬場、これを観に来たのだと余も感激一入ながら、そのDettori君に続く新しい巨星の誕生に賭けなかったことは無念極まりなし。実に素晴らしき凱旋門賞の一日。(略)最終の第七戦にLegrix君再び登場ながら帰路の混雑あり複勝のみ購い送迎バスに向えば帰宅ラッシュになる直前のバスに乗り込め早々に競馬場離れメトロにて市街へと戻る。遅晩に食事済ませた月本夫妻とSt-Germain des PresのBonaparteにて一飲。Longchampにて余とZ嬢凱旋門賞終り早々に退場したがSoumillon君の表彰の頃にきれいな虹かかったと月本氏より聞く。Soumillon君といふ新しい巨星の誕生に相応しき。この日のその凱旋門賞に立ち会えたことの素晴らしさ改めて感激、月本氏とそれを物語りする。とくにEl Condor Pasa(蝦名騎手)がMontjeu(Kinane)に刺され二着となった99年の凱旋門賞の頃から未だ見習いであった若干17歳のSoumillon君を見て大成を予感していた月本氏にとっては感慨無量。新之介君の登場を見た時のような一つの時代の幕開き。半月から丸みをます月がSt-Germain des Presの南の空に美し。