七月廿七日（火）朝は晴れてゐたが午後から天気崩れ下雨一時ひどし。
▼内地からの香港ツアーの客を「在家窮就沒有所謂，走出來就不要這樣子。」「現在是你們欠了我的……我給你吃，給你住，但是你們不付出，你這輩子不還，下輩子還是要還出來。」「這個世界，怎麼可能有免費午餐呢？」「今天晚上住酒店，我會把酒店的房門全部鎖起來。」などと狂罵して一躍馳名のツアーガイド「阿珍」が記者会見。湖北省から10年前に来港、夫と離婚して一人で娘を育て小郷里には中風の父を養ふ阿珍は、廉価（三泊四日でHK$610）のツアーは代理店の利益などあろうはずもなく、ましてはツアーガイドは固定給もなくツアー客の買物でのバックマージン頼り、それが買物せぬ客についカッとなつたと釈明、ツアー客を鬧する（罵る）つもりはなかつた、と謝罪。もしこれが香港人ガイドが「広東語訛りの下手な普通話で」内地客を罵倒してゐたらそれはそれで問題視されようが極悪ガイドが新移民で内地客を絞り上げてといふのが何とも……。
▼この八達通（オクトパスカード）、香港の公共交通機関共通のICカードで1997年秋に登場。世界初でソニーが開発のICカード規格の採用で利用開始当初は不具合もいくつか指摘されたが急速に普及。日本のSuicaなどもこれの後追ひ。香港では2000万枚発行され交通機関ばかりか日常の買物まで必要不可欠の生活道具化してゐるが*12009年の純利がHK$2.9億といふ桁外れに収益のある、この八達通公司*2がオクトパス使つての
「日日賞」だか何だか買物特典キャンペーン参加のオクトパス利用者（240万人）の個人データを民間企業に提供。当初この会社のCEO（陳碧鏵）は太々しさうに事実否定したが個人資料私隠專員公署が捜査に乗り出すと陳女は1996年からの四年半で197万人分の個人データを民間企業に提供、その見返りとしてHK$4.4千万を収入としてゐたことを発表し利用者に謝罪。だが陳碧鏵の傲慢さうな態度は相変はらずで余計に顰蹙かふばかり。この陳女、2006年秋までVisa Cardの香港及澳門地区総経理*3で八達通のCEO就任の年が八達通個人データの民間企業への提供に重なつてはゐるが日日賞のキャンペーン開始は2005年で陳女の八達通の時はすでに個人データ提供始まつてゐただらう。いずれにせよこの陳女になつてから八達通のキャッシュ代替の覇権目覚しいものあり、利益は５年前に比べ３倍。日日賞や自動チャージなど利便性も逆から見ると「なるほど」はオクトパスカードの９割が利用者不明の単なるプリペイドカードで顧客データもないが、日日賞や自動チャージにすることで利用者名、連絡先など利用者個々との特定化がされる……と、その情報までが商品化されるとは、そこが狙ひだつたのかしら。
▼今回のこの八達通騒動で災難は陳碧鏵ばかりか個人資料私隠専員の吳斌。この呉某、ベテランの事務弁護士で2005年から５年の専員の任期がこの７月末で満了、大した仕事もなく平凡無事に退任のはずが最後の最後で大騒ぎ。しかも五月末にこの陳某専員、知己との食事会で専員公署が手がけてゐる調査先が香港ディスニーランド、個人信託データ会社の環聯香港と八達通であること漏らしてしまつたが退任の最後の週に立法会（財経事務委員会）に出席する羽目に。この個人資料私隠専員で呉の後任となる蒋任宏は郵政署の元署長だが在任中に立法会議員の郵便局参観で長沙湾郵便局に議員案内の際、郵便局員による郵便物窃盗防止のため作業場所に監視カメラ設置してゐること紹介し、それが洗面所や更衣室などの撮影をせぬことで個人資料私隠専員公署のガイドライン遵守と説明。職員に内密に監視カメラ設置は私隠条例に抵触するはずで監視カメラ運用は注視されたが、そのような感覚の蒋某を個人資料私隠専員に何故に選んだか、と香港政府の感覚に疑問の声あり。
*1:発行枚数２千万枚は人口の３倍で、１日にHK$100mの利用あり。銀行やクレジットカードからの自動チャージ可。近々、深圳の「深圳通」カードとも利用共通化の由。カード購入時の預かり金HK$50だけでHK$7.2億が累積。
*2:MTRが筆頭株主：57.4％で2009年の配当HK＄149m
*3:この陳碧鏵CEO、駆け出しは文具業界で富士ゼロックス、３Mと渡り歩き1989年に香港テレコム（現PCCW）に加入しIDD部門やマーケティング、顧客服務部門の要職を経て1999年に携帯の数碼通（Smartone）のMDとなったが携帯電話業界の薄利でリストラに遭ひ辞職。2002年にVISAカードの香港及澳門区の総経理と、ずっと「顧客データ」あつてなんぼ、の業界に在つたこと。蘋果日報によれば2005年にこの立法会の財経事務委員会に招かれクレジットカード会社の立場からカード利用者データの保障について講釈たれたさうで、まさか５年後にその問題で出頭命じられようとは皮肉。
