富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2009-02-19

二月十九日(木)昼ごろ下雨あり。午後晴れる。昼にかなり久々に渣甸山益新に食す。文字通り「名人食堂」で新聞などでお見かけの諸氏の数々。筆頭は前任の警務署署長氏。彼の前任の「文革曽の弟」君が「新世界」グループ率いる商人・鄭裕彤傘下の新創建社に天下りしたのに比べれば引退してお気楽さう。中文大学の地理学科卒業といふ地味な彼は1997年の香港返還の記念式典で梁「長毛」國雄君らの抗議運動に対してヴェートーベンの「運命」をば大音響で流し抗議のシュプレヒコールを江澤民主席(当時)らに聞かせず、で香港警察の高層部でも目立つ存在に。晩に尖沙咀。ペニのバーでドライマティーニ飲む。一杯で終はりにしようか、と思つたところにバーテンダーP君ご出勤で祝儀にヘンドリックスの胡瓜マティーニ一杯処方いただく。香港文化中心。香港芸術節で京劇名家匯演と題して各派の歌唱上手の一流ばかり集めての折子戯。梅派の王艶が穆桂英役で歌ふ楊家女将で幕開け。青衣(姫役)では「春秋亭」で薛湘靈役の李海燕(程派)も良いが何といつても老旦(刀自)では天下一品の袁派の袁慧琴が「李逵探母」で楊赤役を歌ひ上げ拍手喝采。中入りでロビーで香港政府の某署T署長と邂逅しご挨拶して少し芝居談義。会場の「とちり」のと列中央に中信泰富のLarry榮智健氏夫妻の姿あり。昨年の金融危機でのデリバティヴ失敗での大損出と粉飾決算での株価操作で大顰蹙、でそれ以降あまり目立たぬ隠遁生活か、と思へばさすが大物、で堂々と観劇。 後半は老生(立役)の歌唱が続く。譚派の七代目・譚正岩には期待してゐたが容姿はさすが梨園世家の嫡子、と唸るが「定軍山」の黃忠役の歌は今ひとつ。老生では、この譚正岩に続いた馬派の朱強の「淮河營」蒯徹の役と、それに京劇界の澤瀉屋か、と思はせるほど見事な動きで客を涌かせたのは田磊の、賺歷城での馬超の役。で〆めは折子戲の「大登殿」は王寶釧に旦角ではトップの李維康、王寶釧役が老生の大看板・耿其昌、で袁慧琴が王夫人役といふ、これは京劇好きには垂涎ものの豪華な配役。今晩の演目は歌ばかり、と覚悟してゐたが期待以上の「大登殿」を見せていただいた。帰宅途中に天后で途中下車して華姐清湯腩で牛腩麺食し帰宅。

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