富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陰暦正月廿四日。雨水。晩にテレビつけるとNHK奥むめお刀自のお姿。懐かしいあのイントネーション。NHKアーカイブで「あの人に会ひたい」が戦後の主婦連率ゐた女傑の映像を流す。刀自も立派だが所得倍増計画宣ふ池田勇人君といひ蔵相の藤山愛一郎君といひ、きよーびの季節労働者の如き1年ももたぬ首相や酩酊大臣に比べなんと気品高きことか。夕食で「どなん」を常温の水割り(氷なし)で飲む。生(き)ではさすがに強いし氷で割れば水つぽくて不味くなるしお湯割りでは匂ひ強すぎる、での氷なしのちよつと濃いめの水割りは正解。ゐたゞきもの、Island Shangri-la Hotelでの販売で好評ださうなTeuscher(トイスチャー)のチョコ頬張る。
▼中華国貨の裕華が佐敦の本店残し中環と尖沙咀の店を近々廃業の由。家賃高騰と消費冷え、百年一日の如きマーチャンダイジング、外国人の観光土産も中華趣味からの乖離等々で営業縮小。残る佐敦本店はいまだに島尾伸三的なキッチュな中国物産の勧工場的価値あり。文化財として存続させるべき。
村上春樹さんがイスラエルエルサレム賞を受賞されました。この受賞が「イスラエルの政策を擁護する」といつた批難もありましたが、ご本人はエルサレムに来たのは「メッセージを伝へるため」として、体制を壁に、個人を卵に例へて
高い壁に挟まれ、壁にぶつかって壊れる卵を思い浮かべた時どんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、私は卵の側に立つ。壁は私たちを守ってくれると思われるが、私たちを殺し、また他人を冷淡に効率よく殺す理由にもなる。
とスピーチをしてゐます(17日朝日新聞衛星版)。これがまた「曖昧だ、軟弱だ」と批難もされます。難しいところでせう、が同日の朝日(衛星版)には大江健三郎さんの「意志の行為としての楽観主義」なる連載(定義集)の掲載もあつたので、これを読みました。これが私のやうなレベルでは大江さんの言はんとするところがよく読みとれないのが、恥づかしながら事実です。ならば、世界の正義のために何らかの寄与をしようとする作家としては、私は「言ひたいことがはつきりとわかつた」村上春樹をとらう、と思つたのです。……と大江健三郎風に。

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