富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2008-01-01

正月初一。寒波到來。気温は摂氏十一度の極寒。朝九時にZ孃と中環発の高速船で長洲島。アルピニストO氏とご一緒。毎年元旦恒例の長洲元旦健跑同樂及越野賽(Cheung Chau New Year Island Run)に參加。葉伯に新年のご挨拶。葉さん、1921年の生まれだから今年は87歳になるはずだが走りこそこゝ数年速度は落ちたが矍鑠とした姿に拜むばかり。昨年は戦後初めて生まれ故郷の日本に行かれた由。あなたは日本に帰らないの?とアタシに日本語で話し始めるとチャンネルが日本語になるやうで荷物預けのスタッフにも「すみません!」と日本語で話しかけるのはご愛嬌。香港で最も有名なランナーが突然、日本語で話すので相手が驚く。この元旦レース、狹い長洲島を島北の標高60m程まで上り、下つて波止場の沿岸の繁華街?通り拔け東湾の海岸に出て観音湾から基督教系のキャンプ場や修道院など多い林中を拔け長洲島の山頂道(高級住宅地か)から今度は長洲島の公共墓地と火葬場のある西湾から出発点と同じゴールに向う、10キロでかなりスペクタルに景色が変はり、観光客相手の店々が並ぶ波止場から団地、公立やミッション系、おそらくはかつて島は国民党系だつたのか国民路にある国民小学など学校や公共施設、宗教施設、墓場まで様々な「民生」が見渡せるのが面白い。レース終はり昼前にK会長、O氏とZ嬢で香雪梅茶樓に食す。長洲島では流行る食肆だが沿岸の正面とは裏、新興街の店は良く言へば鄙びてをり、いつもこちら。レースは寒かつたが終はれば麦酒で新年の乾杯。羊腩煲が美味至極。帰りの船の中でK会長より面白い話を聞く。K会長はずつと自分は未年生まれと思つてゐたが香港に来て黄大仙廟で占ひ師に「あなたは未年ぢやなくて午年だよ」と干支の違ひ指摘されたはK会長が一月十二日だかの生まれで旧暦では確かに十二月の生まれ。まだ年は明けてをらず。半世紀近くづゝと自分は未年と思つてゐたのが午年ぢや、確かに今までの人生は何だつたのだらう、と(大袈裟だが、確かに神籤の吉凶も異ならう)驚いたさうな。これが結局は日本の近代の誤謬そのもの。明治政府の太陽暦採用はそれはそれでいゝが端午の節句まで新暦にしてしまふ(合理性といへば聞こえはいゝが實は)節操のなさ。神事仏事も陰暦であるべきなのにNHKの「行く年來る年」など眺めてゐても新暦で坊さんも大晦日から年明けに仏事行ふのが滑稽そのもの。帰宅して元旦競馬テレビで観戦。G3の華商會盃はMoore廏舎でBeadman騎手のRiver Jordanから流したが四着でダメ。Coetzee騎手のPocket Money(Size厩舎)が10月1日の国慶節の記念レースでの2着から休養たつぷりで116磅といふ斤量の軽さ活かして一着。今日の3Tは9頭中6頭。3レースとも2頭ずつ入つてゐるがQではどれも馬脚で縱にきちまつた(香港では横に、だが)。ボケ防止でピアノの練習。究極のドライマティーニ。冷やしたグラスに(氷は取り除き)ベルモットを少し注ぎグラスをリンスしてベルモットは捨てゝ(=飮んで)そこにジンを注ぐ。晩に煮豆、蒲鉾、栗金團、数の子など簡単にお節。お屠蘇と思つたら菊正宗がお豬口に二杯分くらゐしか残つてをらず伊太利はトレントのPinot Grigio種のヴィーノタブロでお節。白葡萄酒も意外とお節に合ふもの。
▼廿九日の信報で鄧永鏘(David Tang)が面白い話を書いてゐる。二十年ほど前のこと、友人と大枚1000ドルを賭けたのは「包玉剛が自分の電話に果たして出るか?」といふネタ。包玉剛(Y.K Pao)といへば世界の海運王(1918〜1991年)。鄧肇堅の孫とはいへ当時は無名に近い若造のDavid Tangである、友人は「出ない」と確信したがDavid TangはY.K. Paoの会社に電話して秘書に「Sir Paoと話したいのですが」と尋ねる。当然のやうに「多忙につき」と祕書は答へY.K Paoが在社かどうかも曖昧なまゝ「どちら樣ですか?」と尋ねる。そこでDavid Tangは「こちらはICAC(汚職收賄取締る廉政公署)で、私はInspector Tangと申しますが。ちよつと個人的なことで彼に直接、話をしたいのですが」と述べると秘書は「……Inspector Tang、申し訳ございません、すぐにSir Paoにお繋ぎしますので」と答へ、本当にY.K Paoが電話に出て「Inspector Tang、何か私にお手伝いできますかな?」と答へたといふ。そこでInspector Tangは「いや、あなたとかうして電話で話ができただけで私の助けになりました、ありがたうございます」と電話を切り、友人から1000ドルを仕留めたといふ。David Tangの剽軽な話はこの先も続くのだが、一つ、マカオのカジノ王Stanley Hoについての評が面白い。Stanley Hoは香港の財界人大物にしては頻繁にテレビニュースの取材に答へコメントしてゐるが、この人は思想性には多少欠けるが趣味性は十分。例へば、Stanley Hoが「恒生指数は高騰して4万も突破だよ」といふと娯楽新聞の扱ひなのに、恒基グループ総帥の李兆基が「恒生指數は3万に到る」と予測披露すると相場が動く、と。御意。

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