十二月卅一日(月)朝九時から湾仔のImmigration Deptで香港身分証の再申請。九時に行つては爆満と聞けば用心して八時に赴けば果たせるかな開門前の長蛇の列は既にGloucester Rd越えつゝあり。待ちが長からうと創元推理文庫の日本探偵小説全集6巻小栗虫太郎集持参は正解。『完全犯罪』なる短編読む。で香港身分証申請は早い開門で建物の中にこそ入れはして八階だかのフロアに辿着いたが長蛇は相変はらずで、ふと後ろ振り向くと三、四十人しか尻尾はをらず。どうやら後続は折角朝早く来ても本日満額で追ひ払はれた由。で、本日の整理券配付となるがアタシに渡された整理券は、なんと正月三日の午後二時。べつに当然だがこれから53時間並ぶ必要も当然なく、先日の電話予約では一月十四日だつたのだから三日の整理券頂戴できただけでも御の字。バスで半山區。オリンピアグレコ珈琲店に珈琲豆購はむとすれば老店主は朝寝坊か近くの星巴珈琲に小一時間寛ぎ無事、珈琲豆ゲット。ふらふらと坂を下り数年ぶりに散髪……つてルンペンに非ず、自分で剪髪するやうになり十数年だからなのだが最近また少し髪を伸ばし始め、で数年ぶりにかつて贔屓の上海理髪店に寄り散髪。理容師もかなり高齢で後継者一人もをらず、は相変はらず。丁寧に髪を刈つてもらふ。手帳を無くし手帳も購入しないいけないが、ここ数週間の予定が朧げな記憶だけなのも怖いところ、もう二十年以上愛用したFilofaxか何度か浮気した倫敦のSmythsonか悩んだ結果、買つたのは地場のわづか8ドルの手帳。一ヶ月が見開き型。意外とこれでイケさうな予感。今回の遺失のなかで唯一、元手のかかる買物になつてしまふDunhillで財布購入。無印で小銭入れなど買ひ帰宅。明日の競馬の予想したりカメラの手入れしたり。夕方、近くの場外馬券場まで散歩。晩にモツのキムチ鍋、を頬張りながら焼酎のお湯割り飲みながらテレビで紅白ぢや、まるで日暮里の安酒場で、大晦日も故郷に帰れぬやう。このモツのキムチ鍋を日暮里鍋と名付ける。敢へて大晦日の晩はAram Il'ich Khachaturian(カナ書きだとアラム=イリイチ=ハチャトゥリアンか)が1936年、33才の時に作曲のピアノ協奏曲変ニ長調を聴く。ソヴィエト国立交響楽団をエミン=ハチャトゥリアン(作曲者の甥)が指揮してピアノはミハーリ=ヴォストレセンスキーといふ超重量級の、とてもとてもソ連らしひ曲と演奏。小栗『完全犯罪』読み終はりかけた頃に近所から若者らの歓声に年が明けたことを知る。読了。昭和8年に三十余歳の若き小栗の名を一躍有名にした短編。博覧強記ぶりの片鱗見せる。がアタシは推理小説で謎解き者が薬材や化学、病理学などに詳しく犯罪の要因にそれが関はつてをり!その知識ひけらかしながら謎を暴くのはアタシは安易過ぎて好きぢやないし、筋としてちよつと無理ばかり。
▼香港での普選遅滞に対して民主党の元党首・李柱銘さんは週末に抗議の絶食一日。普通実現、ふと思つたが明治の日本の普選要求と今回の香港には同じ普選要求でも大きな違ひあり。日本など選挙権が富裕層の男性に限られてゐたものを男性全般とし、さらに婦人参政権へとつながるのがかつての普選要求。香港の場合、すでに参政権はあるが(といつても選挙権登録してをらぬ市民のはうが過半数)全面直接選挙求める運動であり、問題は立法会の職業枠と行政長官の選挙人選抜が親中派で多く占められること。さう考へると2012年の普選実施要求も良いが、泛民主派は現実的には少なくとも立法会の職業枠での議席獲得と行政長官選挙の選挙人の中でのリベラル派増加に知恵を絞るべきではないかしら。蘋果日報の尊子さんの一コマ漫画も香港市民の普選要求が便所で糞尿と一緒くたに流される、ではちよつと……。ここまで書かれても「放つておく」措置とられるだけ一国両制は機能しているの鴨。
▼少林寺のある登封市の人民政府が少林寺を観光企業体として香港での株式上場計画中の由(SCMP紙)。資金調達で少林寺の寺院施設、周辺観光施設の充実を、と。福田康夫君訪れた曲阜もこれに倣ひ上場かしら。福田君といへば曲阜にて「温故創新」と揮毫してみせたが温家宝君も(日本ではあまり報道されてゐないやうだが)首脳朝食会で
常憶融冰旅 梅花瑞雪兆新歲 明年春更好
と俳句に似せた語呂で漢詩を詠んで披露。キャッチボールよりやはりこれ。
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