富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七月廿五日(月)快晴。世界が黄色く映るといふのは聞いたことがあるが(実際に体験はない)北角の寶馬道のこの一角はなぜか赤色系の看板やビルの塗装が多く朝日を浴びて一面赤色に染まる。早晩に灣仔の新華書城。開業し半年以上経ち初めて訪れる。中共系である新華書店の香港の旗艦店。店内はかなり広く新宿の紀伊國屋書店本店のフロアとほぼ同じ面積が3フロア。良く云えば近年の台湾の誠品書店に代表されるゆとりある店内、悪く云えば品薄。レイアウトと木目調の内装は誠品系そのもので、中共系とへば油麻地の中華書局の印象からは格段の違い。当然、毛沢東暴露モノであるとか天安門事件真相究明や中国民主化など「敏感」な書籍は扱つておらず。賈平凹の(当然か偶然か『廃都』は在庫なし)『白夜』と『高老庄』の二冊購入。Z嬢と待ち合わせ鵝頸橋街市。香港島では九龍の九龍城街市に匹敵する野菜と果物の品揃えと安さ。青果購ひタイムススクエアのシティスーパーで食材購ふ。博多屋で豆腐買うなら「ざる豆腐買わなあかん」と奈良出身のA嬢に一昨晩に云われ試しにHK$19もする「ざる豆腐」購入。帰宅。夕陽がきれい。ドライマティーニ一杯。晩のNHKのニュース見れば東都の地震に続き今度は台風が関東直撃か。地震といへば東京都の地震対策での不備が指摘されていたが都知事石原某の防災とは震災の日に合わせ銀座で防災「軍事」訓練など挙行し見かけの勇ましさばかり。石原都政は張り子の虎。倫敦は倫敦でスコットランドヤード(Metropolitan Police Service=首都圏警察)の警視総監(日本のマスコミはMPSをロンドン警視庁と云い、その長は警視総監)がブラジル系市民をテロ容疑者と間違え殺害したことについて「もし地下鉄で爆破テロが起きていたら、と考えると被疑者の殺害も止むを得ない」と発言。これこそ無差別テロ。倫敦の警察の良識は何処に。少なくとも「シティ」は今もつてロンドン市警の管轄でロンドン警視庁はシティを除くグレートロンドンが管轄なのでシティに逃げ込むのは安全なのか更にテロ対策が徹底しているのかどちらだろうか。ところでNHKのニュースでも The War against Terrorism をなぜ「テロとの戦い」と呼ぶのだろうか。直訳で「反テロ戦争」でいいのだが。「テロとの戦い」と呼ぶほうが「反テロ戦争」より正義が正当化されているように聞こえてならず。あれは「反テロ」を口実にした覇権のための侵略なのに。晩飯は牛丼など。博多屋の「ざる豆腐」はデザートのような食感の上質の絹ごし豆腐。我には厚手の大豆臭い木綿豆腐が合ふのだが「法王様、やはり所詮、東国の田舎者は田舎者。豆腐ひとつとっても田舎者の口には京の上品なものは合いませんようでごじゃりますなぁ」で昨日放映のNHK大河ドラマ義経」録画ビデオで見る。それにしても毎回のタイトルの幼稚さはどうにかならぬのだろうか。今回が「母の遺言」で次回は「忍び寄る魔の手」である(嗤)。小学生が少年推理ホラー小説大賞に応募した小説の章立てぢゃないのだから、もう少しマトモに出来ないのだろうか。NHKの水準もかなり低下。「常磐最期」とか「法王の碁盤」とか大河ドラマには大河ドラマらしいタイトルがある筈。いただきもので福岡は八女の巨峰頬張る。美味。
▼築地のH君が司馬遼太郎読んでいたら「文化は、交流するものである。どの民族がすぐれている、という迷信は人類が最後までもちつづけたがる迷信かもしれないが、おずれは衰弱してユーモアになってしまうかもしれない。ついには、その国の民度を測る基準として、極端に自文化についての優越感情をもっている民族こそ、卑陋で安っぽいといわれるようになるにちがいない(あと何世紀もかかるだろうが)」と『街道をゆく』「南蛮のみち」に記述あり。自由主義史観が卑陋で安っぽい、のだがH君の言う通り、そう言われるには「あと何世紀もかかるだろうが」と加えるところが司馬的。ワンクッションおいて一応「自由主義史観」の人の顔も立てている。自由主義史観の御仁が目の前にいれば「いや、まあ、いまの時代ではそんなものかもしれませんなあ」というくらいの。或いは、この「あと何世紀もかかるだろうが」は読み方によつては「人類はそれくらい時間がかからないと真実もわからないほどバカなのかも知れない」という風に読めたりもする。この幅が司馬的な旺盛なサービス精神。朝日だからちょっとコスモポリタン風に、産経や文春に書くときは、それらしく国士風に書けるのが司馬遼太郎。いずれにせよ、である、いま教科書を採用しようとしている人たち、とくに田舎者の栃木県大田原市茨城県大洗町教育委員会のオトーサンたちはこの言葉をよく噛みしめるべき、だが、地元のカラオケスナックにフィリピンからのホステスさんもいるし工場にはブラジルからの日系人も働いているし「文化的に交流してっぺよ」だろうか。
▼昨日の産経新聞に「大江氏、岩波を訴える」と記事あり築地のH君は何だかわからぬが蜜月である筈の大江と朝日が「進歩派の内ゲバか?」すわ面白いことになつたと記事読めば「大江氏と岩波書店を訴える」でフランス語より日本語難しい、とH君。記事はこちらだがネット上では「大江氏・岩波を訴える」となつている(こちら)。沖縄戦での集団自決が日本軍の命令かどうかでの当時の将校らが大江先生や岩波書店相手に名誉毀損で訴えたものだが産経新聞は「この時ぞ」とばかりに一面トップ扱い。「つくる会」の人たちもしょっちう訴えられているが……。

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