富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農歴十一月初十。冬至。薄曇。諸事済ませ晩に慌て湾仔上海三六九飯店に「湯圓」求む。冬至には湯圓食す習しあり。だが三六九の店の者「香港人冬至というと湯丸、湯丸と湯圓ばかり食すが冬至は別に湯圓ばかりぢゃないのにねぇ」と雑談。上海語だがたぶんそういう話。帰宅の午後六時半の地下鉄混雑甚し。冬至の晩ゆへ家族での晩餐に皆帰宅急ぐ。季節の節句に家族団欒愉しむ羨ましき風習。身動きとれぬ車内にて目の前十二吋の至近距離にて大声にて携帯で電話する女あり。口臭あり口唾飛びオマケにゲップと嚏まで。銅鑼湾より乗り込み北角で下りるまで三方に通話。歩く公害の如し。思わず無理にこの女に背を向けせめてもの避難対策。日本の車内での携帯禁止も一向。何より携帯通話料金の安さに元凶あり。急がぬ無駄な通話ばかり。一通話三分十ドル程に値上げすべき。ミニバスもさぞや長蛇の列と察し自宅まで站より夜風浴びつつ歩く。といってもわずか十数分で日本なら歩いて当然だが香港らしくミニバス三分に一本走る。ミニバス三本待つなら歩いても同じ。帰宅。冬至で南瓜煮。二晩我地農荘の野菜でサラダ。明太子のパスタ。赤葡萄酒はChateau Marsac Seguineauの98年。ずっとどちらかといふと苦手であった葡萄酒をば最近飲む原因は何といっても斉藤さんのサイトで毎日の葡萄酒美味そうでI社長に長野での葡萄酒話など聞かされ久が原のT君まで最近は静かに夜は葡萄酒と。ついつい葡萄酒の杯。三六九の湯圓頬張る。葛湯に一浴……嘘、柚湯に浸かる。ビジネストラベラーズ誌読む。NHKのニュースにて台湾李登輝氏来日に査証給付につき外相町村君「一民間人が私人となっての来日なのだから」と発言あり。「一民間人が私人となって」といふ表現ぢたい矛盾あり(笑)。民間人ならもともと私人。「中国十三億人の敵」だそうな李登輝君もともと一民間人に非ず。余が思うは確かに李登輝の「廿二歳までボクは日本人だった」的なアイデンティティは特異。だがそれを敵視する了見の狭さ。在日コリアンもあれば朝鮮族の中国人もあり。李登輝の日本人性をば含有できぬのが異質なる者否定のナショナリズム
マカオの中国返還五周年記念(廿日)にて胡錦涛主席マカオ絶賛。式典参加の董建華と会談後董建華並びに同じく式に参加の香港主要高官との記念写真撮影済ますと胡主席マカオ行政長官同席の場にて香港高官に対して「以香港的整体利益和長遠利益為重、以国家利益為重、要加強団結・和衷共済・相互支持」「多本着以人為本的執政理念、推動香港経済発展、努力改善民生、維護好香港社会的穏定」「認真回顧香港回帰七年来、実施一国両制港人治港、高度自治走過的歴程、総結経験査找不足、不断提高施政能力和管治水平」と述べる(紐育時報)。国家主席のこの苦言に董建華メンツもなし。人民日報は国家主席董建華の会談については記事にするが苦言部分は報道なし。
▼埼玉県の教育委員に「つくる会」の元副会長選任(朝日)。「つくる会」だからいけないとはいわぬが明らかな翼賛体制。県議会で公明、民主、共産が反対しても自民党の賛成で選任される埼玉県。県には二千三百通の意見寄せられ八割がこの人事に反対だそうだが、それは県側にしてみれば「反体制派の危険思想がかった」県民や埼玉県の決定に干渉するヨソ者であり県知事上田某はこの人事をば「教育委員会に新しい風を吹き込んで欲しい。いたずらにレッテルを張って非難するのはひどすぎる」と宣ふ(嗤)。この「いたずらにレッテルを張って非難するのはひどすぎる」といふフレーズは傑作。どんな非常識も非難に対して「いたずらにレッテルを張って」と自らをば良識ある被害者化する妙。NHKの海老沢勝二も自らに「いたずらにレッテルを張って非難するのはひどすぎる」が使えるし西武コクドの堤某も「いたずらにレッテルを張って」と使えるフレーズ。選任されたこのつくる会の高橋某は「一般の常識と教育界の常識のずれを解消するために」と宣ふが現実は「一般の常識と教育界の常識のずれと「つくる会」の非常識」。つくる会名誉会長の西尾某は「周囲を徐々に感化していくことで教育委員会を変えてくれるだろう」と発言。恐ろしや恐ろしや。県議会で自民党安定多数の因果。先日の学習到達度調査だかでほぼ上位独占のフィンランドだったか朝日新聞の報道によれば政府はカリキュラムの概要提示するのみで授業内容や教科書の選択、授業時間の割り振りまで現場の教師に委ねられた学習の結果が児童のあの理解度。教育委員会が翼賛体制化し国定歴史教育ナショナリズム育成続けたければ続ければよし。そこから何が育つのか。誰にも相手にされぬ真の日本人なり。
朝日新聞加藤周一夕陽妄語。毎年十二月に一年の総括のこの文章を読むももう二旬か。この老知識人がいかに日本の姿に警笛鳴らそうともはや国民の一割が反応するかどうか。老加藤の警笛も年々弱々。

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