一月四日(土)晴。午後、沙田にて競馬。12月15日の国際レース以来の観戦。当ったり外れたり、ど う見ても騎手なら韋達、厩舎はSize師というのが堅いとこの組合せで賭けるがなかなかそう上手くはいかず。晩に視たNHKスペシャル「千年の道具を守り たい」、輪島の漆塗りの蒔絵に欠かせぬのが1mmに数本の線描ける熊鼠なる鼠の毛、これが日本全土にいる熊鼠の中でも琵琶湖周辺の葦原に生息する熊鼠だけ からしか採れぬもの、だが乱開発だの農薬散布だのでこの葦原の鼠がもう獲れなくなりその漁師も亡くなり京都の絵筆屋に一匹の熊鼠の皮が残るのみ、今後輪島 のこの蒔絵が廃れてしまふ懸念あり、と。これを見ていてZ嬢と「中国ならきっと広州の清平市場で鼠さがせば食用だし毛皮なら入手できるのでは?」などと軽 口を叩いていたら、欧州にて数多く残る蒔絵の修復師!をするSさんももう筆先の僅かな熊鼠の筆を二本もつだけで、この筆がなくなれば蒔絵装飾の修復もでき ぬとSさんが得た情報が中国、番組はこのSさんの中国行きを追うのだが、「香港から電車で四時間くらいだそうなんですよ」と語っており「え、まさか?」と 思ったらマジに広州。さすがに映すのもおぞましき清平市場ではなく郊外の肉食市場だったがちゃんと鼠肉屋あり郊外の鼠飼育場を訪れて、もしかすると熊鼠の 毛にかわって蒔絵用の細筆となる毛を持ち帰るS氏。……長くなったがただ「広州〜!」と言って笑っていたら当った、とそれだけの話なり。
▼昨日、川端康成の『雪国』の「国境の長いトンネル……」の国境が「くにざかい」か「コッキョウ」かといふ ことを綴ったが、そこで紹介した日本語面白言葉のサイトのYeemar氏にこの 「関西人のクニザカイ発言」についてメールしたら早速ご返事いただき、面白い例として東海林太郎の歌「国境(コッキョウ)の町」では歌詞が「橇の鈴さえ寂 しく響く 雪の曠野よ町の灯よ一つ山越しゃ他国の星が 凍りつくよな国境(くにざかい)」となっており「タイトルは「コッキョウ」なのに歌詞では「くにざ かい」なのです」と教示いただく。面白い。
▼尖閣列島で魚釣島など民有地となっている三島について日本政府は土地所有者より借り上げ、これに中国、台 湾が抗議。そこまでは事実だが「尖閣列島は日本固有の領土だが、石油埋蔵の可能性があることなどから中国や台湾が所有権を主張」と(朝日)。中国は中国固 有の領土と主張するであろうし、日本とて琉球占領によって得たにすぎぬはず。政府見解ばかりか新聞まで「日本固有の領土」とするのは報道が政府のプロパガ ンダ報道に成り下がらぬか。領土権を返上した上での日中台での共同での自然環境維持であるとかリゾート開発であるとか、打開策の検討できないのだろうか。 同じ朝日に「20代の若者を中心に大麻の汚染が拡大している」と。これも大麻=悪いもの、という前提。政府ですら大麻取締法を麻薬取締法とは別にせざるを 得ぬほど、国によっては所有、喫煙が合法化されているほど大麻は麻薬に比べ社会的許容があるのに、煙草汚染はいっこうに減らないのは放置したまま大麻蔑 視。「大麻の汚染が拡大」と書いている記者が煙草吸いつつ、でも許されるのは、客観的に煙草と大麻の身体に及ぼす影響だの中毒依存性の客観的評価でなく、 たんに煙草が合法で大麻が非合法である、という法的基準に依存しただけのもの。報道といふもの公正のようでいて前提からして明らかに偏っている場合少なか らず。
▼揺滾楽隊ロックグループBeyondの黄貫中が一昨日商業電台TVBの音楽番組の収録中に演奏終了後「実 際、おれたち一人一人に自分の空間があって、自分の素直な気持ちをそこで語る、おれはおれの口を封じる全てのものに反対、おれが何を言ったかみんなが知れ ることが大切、強烈反対!……何にかは言わないけど、みんなわかるよね」とコメントあり観衆が声援と拍手と。これがその晩に放送され、このコメント部分が カット。局側は政治的敏感とは関係なく単に放送時間により編集上カットされただけ、と説明。明らかに23条絡みの政治的問題だがカットされることも当然 で、カットされればされたでマスコミが取上げぬわけもなく、さすが大御所・黄貫中の作戦勝ち。