富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月三十一日(月)快晴。健身。擦背。Dashing Winnerの馬主C氏の倅B君より電話あり先日の香港国際賽日のDashing Winner口取の写真出来上がりと電話あり尖沙咀の源吉兆庵にて桃ゼリー購い夕方九龍湾のC氏の会社訪れる。九龍湾も小奇麗な購買中心など出来てふと入った文房具屋など地域特性か工業設計など需要があるのだろう精密文具など殊の外品揃えよし。C氏の会社にて口取りの写真頂く。C氏の社長室に夫人机をおき経理だろう目を光らせ息子二人がすでに家業に従い幼少の息子と娘が大晦日で晩は家族で食事だろう社長室で遊び暖かい光景。日本にもこのくらいの実業はいくらでもあろうが何故香港の事業主はベンツに乗り不動産をいくつも有し競馬馬を二匹養せるのか顕かに日本の事業制度に損益があることは必然。アルゼンチンの市民騒乱、鍋を打つが統一行動にてお伊勢様の御札を掲げたり踊ったり天安門事件北京では小瓶を割るなど、市民騒乱にはきまって象徴的行動あり面白し。毎度目から鱗落ちる『信報』は林行止専欄だが、今日は昨年の今ごろは世界中がY2Kのウイルスに脅え企業など万全の体制をとり(少なからぬ知人はこれのために徹夜にて会社に「詰める」……まさに詰めて固唾を呑んで年を越すだけの滑稽な出来事だったが)結局は経済発展を阻害することも日常生活にも何ら影響もなかったが、そのためにいったいどれだけの浪費がなされ、これは香港市民が97年返還をまえに海外脱出のための「保険」への投資(HK$10億ともいわれる)と同様、まぁ97年前の保険支出はその後の香港バブルの不動産と株価上昇にて相殺できているのだが、今年の状況はこのY2Kや97移民保険と異なり(少なくともY2Kは一夜にして、97も数年でその保全が見られているが)人類は全く不明朗な未来と対峙してしまっている、と。NHKの国際衛星放送では紅白中継せず21世紀のビジネスのあり方など真面目顔で討論。中国中央電視台の年末特番は深センは世界の窓(リトルワールド的な世界の名所旧跡をミニチュア化した娯楽施設なり)より生中継にて、先日『時装』(ファッションの意)なる雑誌にて日章旗をモチーフにした服装で登場したことで非難を買い本人も釈明と陳謝に必死だった人気アイドル歌手趙薇は一昨日だか長沙での演唱会にて聴衆の一人が舞台にあがり趙薇を舞台に押し倒し人糞を趙薇にかけた事件あり、湖南省の警察当局は保持緘黙、インターネットでの民意調査でも趙薇はやられても当然という意見が過半数を占め、暴力をもって愛国を示すことは政治的正確な行為と中国では映ったか、いずれにしても趙薇は精神的打撃と疲労甚だしく今晩のこの深センでの年末特番の出演急遽取りやめ。ちなみに広東電視台は広東省交響楽団(?)の年末演奏会にてワーグナーのかなりテンポ早いニーデンベルグスメタナのモルヂウの流れなど。広東のオケにかかるとモルヂウ河はまるで大雨の降った後の珠江の激流が如き流れに聞こえる。スメタナといえば李登輝スメタナの『我的祖国』第二楽章に歌詞つけて台湾国歌にするを欲す、と。年末特番といえばソニーが提供から急遽外れし台湾での音楽興業は行政院新聞局が主催にて総督府に電飾掲げ総督府前広場に特設舞台組むかなり大掛かりな音楽会にて香港でも有線電視のMTVにてこれを中継。香港ですらMTVが中継できる番組にて何故にソニーがその提供を懸念するか。総督府といえば戦前は日本支配の象徴にて戦後は蒋政権の威厳と圧力とその戒厳体制の象徴のような建物、そこが平和裏に若者の音楽の祭典の会場となりしこの年の瀬。昨晩が満月ながら今宵の朧月美し。テレビに齧りつくほど面白みもなく競馬の予想などして荷風日記寝台にて灯下読めば市街から絶叫のような歓声とハーバーに浮びし船舶より汽笛が一同に鳴り年が明けたことを知る。午前二時頃まで新年を祝い酒に酔い歓喜した若者たちの絶叫が屡々轟く。祝うがよい。ただし祝うことより精進すべきことを弁えることを忘れてはならず。