富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月三十日(日)快晴。この季節香港の天気はHazeyにてこの言葉は気にも止めずにいたが独逸人H氏がHazeなどという英単語は香港に来て初めて知った、と。靄や霞みのかかった状態がhazeなれど春霞みのような心地よきものにあらず乾燥した冬に塵や埃が街を覆いビクトリアハーバーの向こう岸しら朦朧とする、それがhazeyな天気なり。Z嬢とKCRで大埔、休日だけ運行の郊外バスで大尾督を越え名も美しき新娘潭(Bride's Pool)へ。船湾淡水湖の源流となる沢にて照鏡潭の瀑布、その滝音とは一転して滝の上の潭は見事な静寂。烏蚊騰より九担租の村を抜け吊燈籠(Tiu Tang Lung)416mの急な斜面を上る。香港東海の島々と入り組んだ岬を一望する絶景。頂上から先人がつけた目印の布切れを頼りに急な薮を下りて蛤塘の村、かつては十戸ほど家屋あり廃村かと思いきや一戸だけ住人あり、この山中でどう暮らすのか、廃村となった梅子林から分水凹の山道はかなり昔に丁寧に石が敷かれ見事なまでの自然を活かした敷道ぶり。山を下り谷埔より目前の入江の向こうは沙頭角の街、この辺境に突然二、三十階建ての超高層ビルが点在する隠れた中英国境の街はまか不思議な光景。厳密には海岸線の歩道から先は「禁区」にて立ち入り禁止のはずが引き潮の泥地には浅蜊、蛤をとる人が点々と緊張感もなく、注意していると薮の中に水泳しただけでもHK$5,000か三年以下の禁固刑という古い朽ちた看板あり。鶴頸に出てミニバスにて粉嶺。新娘潭より吊燈籠が4km、吊燈籠より鶴頸が8kmほどの行程。帰路鶴頸かミニバス車中に行山杖忘れ灣仔のProtrekにて代品を購う。一旦帰宅して晩にZ嬢と中環は閣麟街の蛇王芬、厳寒はやはり蛇羹、草羊月+南保/火が格別。蛇は当然として羊月+南もこれだけ美味いとは敬服。紀伊国屋書店のサイトで中上健次の本を注文しようと検索していたら『俳句の時代』なる中上健次角川春樹が遠野・熊野・吉野という聖地を巡礼しつつ対談する角川文庫あり、これは凄い本だと注文しようとしたが絶版……そりゃそうだ追放された書店が春樹の本を出すはずもなく。SCMPの報道、ソニーミュージック台湾が明日の大晦日台北総督府前で開催される大規模な年末イベントのスポンサーを急遽降板、と。この年末のカウントダウンに阿扁総統が出演することが発覚し、中国の顔色を窺ったかソニーソニーほどの企業ともなれば中国がこんな些細なことでソニー外しできるはずもなく、むしろ中国がこれを非難でもすればそれの宣伝効果を考えるくらいでよいのでは?。