十二月二十一日(金)晴。気温14度にて12度まで下がる厳寒と予報あり。新聞を開けば「巨額の政府債務のために経済危機が続き、住民による暴動が国内各地で……」とあり日本かと思えばアルゼンチン。ビン=ラディン師はパキスタンはカシミール目指し逃亡中か、と。すわカシミアの値段が高騰するぞ、カシミアの買い占めだ! 今ごろになって朝日新聞に言語学者チョムスキー氏「アフガンを語る」。遅すぎる。チョムスキー氏の論理は真っ当。左派知識人の旗色が悪いという質問に対して「左派右派ではなく人間の品位の問題」と……日本でここまで云えるのは康夫チャンか、「人間性の」問題などと野暮なことを言わぬがさすがチョムスキー、そう、品位なのである、問題は。ブッシュは野暮、品位がない。カーターは野暮だったか大統領という経験をして引退後に品位が現れた。品位と康夫ちゃんのいう皮膚感覚があれば間違った判断はできまい。それにしてもチョムスキー氏の紹介で「生成文法理論を提唱した言語学の大家『ながら』反戦平和運動家としても知られる」って、この「ながら」の使い方はいったい何だ?、若い記者が書くともはや学問と政治信条は両立せぬのか。元立法会議員程介南有罪判決にて収監される。立法議員でありながら経営コンサルタント会社を設立し議員としての秘匿義務事項を企業に流し収入を得たが罪状、日本にてはごく当たり前の議員活動(笑)、日本ではそれがあることで企業は議員を利用する価値あり、それのできぬ議員など用無し、この行為が法で裁かれるだけ香港は健全か。程介南、一介の教育者でありながら政治的野心強く親中系の培僑中学の教員から教育界で30代にて台頭し立法議会に躍進、90年の立法会一部直接選挙にて初めてその尊顔に拝したが銅鑼灣はそごう前の交差点に程介南の大きなポスター掲げられ、どう見ても教育界だけの資金ではないと察したが、そのご尊顔に「共狗」(共産党のイヌ)と落書きされ可笑し。あの当時はまだ香港に自由な空気。いま親中派議員の顔に「共狗」と書くはかなり勇気要る行動なり。それにしても程介南捕まるとて程介南より情報を買い上げし財閥系企業はお咎めなし。さすが財狗が行政長官をする香港なり。といえど程介南が提供できる程度の情報を財閥系企業が把握できておらぬ筈もなく程介南の会社との取引きは親中派議員への政治資金援助にすぎず。それにしても親中派である民建聯の主導者である程介南による財界(=親中)癒着を蘋果日報(=反北京)がスクープし、それにより程介南が議員辞職し実に英国的なICAC(香港政府から独立した権限のある廉政公署=汚職摘発局)(それにしても日本の公的機関もこれくらいのサイト作れないものか)が調査に乗りだし、これまた中立を標榜する上で北京にしてみれば面白くない香港司法が有罪判決を下しており、北京にしてみればかなり不愉快な事件なり。夜、気温は13度と厳寒続き自宅にて味噌仕立てにて牡蠣鍋。酒は日本酒きらしてサントリーの山崎。NHKのニュースにて日本が中国産の葱や椎茸など農産物の輸入に制限をかけ中国側がそれに対して自動車などの品目の関税率を上げて実質的な輸入停止に陥っていた事態が政府間事務レベル交渉にて解決の見込み、と。この葱問題にて香港に数ヶ月間かなり廉価にて中国産日本向け葱が出回りかなり賞味させてもらったが、牡蠣鍋にて煮えるこの葱も今日が最後か、と思ふ。
加藤周一『夕陽妄語』(朝日新聞より)神はどこにいるのか。科学的知識の増大と宗教的信仰の力とは、どこで矛盾し、どこで降りあうか。諸家の議論を見わたしたところ、少なくてもその大部分は、今もガリレイの「われわれの中に」=不可知論を大きく超えてはいないようである。世界を知るためには科学、世界を変えるためには信仰なのかもしれない……。
(加藤周一風に)南洋の香港もこの季節となればそれなりに寒くなり、聖誕節の連休をひかえた金曜日の夕方はいつもの週末以上に市街は賑わい、乗ったタクシーの運転手は機転をきかせ街中におりずビクトリアピークを越えて車を走らせ、私を自宅へと運んだ。ビクトリアハーバーは雲のむこうの夕陽で黄金色に輝き、私はネオンが灯り始める街を見下ろしながら、香港の広告市場について"In Your Face"なる興味深き記事を読む(Far Eastern Economic Review, 13 Dec 2001)……、って感じか、加藤周一。記事は情報と広告産業について、いくら先端情報経済が盛んでもやはり人気は旧態依然としたビルボード、と。季嘉誠のtom.comすら昨年の創業板(香港版Nasdaq)上場(8001番なる番号が優先的に供された)にて株価は3.4倍まで急騰したのだが、そのあとのNasdaq系の先端技術市場への不信感からtom.comもやはり低迷し、実はtom.com、実業伴わず(この記事には書かれてもいないが季嘉誠系のマンション、団地などで無料配布される雑誌の印刷などまで請負っているのが事実なのだが)ついに9,700万USドルを費やし中国本土の旧態依然とした広告会社七社を買収し、それにより収入は2000年第三期に1,300万香港ドルが今年同期には15,900万香港ドルにまで上昇。今年一年で中国でのビルボード収益が35,000万香港ドルに及ぶ、と。インターネットだ携帯だと情報化社会と謳う時代にあって実益はビルボードとは可笑し。そんな時代にあってこの記事でも注目されているのが新媒体として脚光浴びるバスにて無線を使いテレビ番組を流すRoadshowなる媒体にて、余はこれがうるさくてたまらずバスに乗るのが憂鬱、まだ地下鉄の音声なき電光掲示板のほうがマシなのだが、この媒体を視る市民は実に300万人/日と会社側は豪語(香港人口の半数!)、それゆえにビルボードにせよバスでの無線テレビ中継にせよ、こういった屋外型広告媒体は効果高コスト安なそうである(ちなみに新聞の一面広告がHK$10万/日なのに対してバスの側面の塗装広告は月HK$3,000!)。このバスの無線テレビは実に憂鬱、野暮な番組が続いたかと思うと英会話一日一句の如き趣味乏しき番組が続く。但し昨晩乗りあわせたバスにてサム・ホイの古いフィルムによるプロモーションビデオ流れ、さすがにサミエル・ホイともなると聞かせるものあり。続きアニタ梅艷芳の最近のライブにてこれも梅姐はお見事。ゲストはアンディ劉徳華にて実は書家として素晴らしい才能ありこの人の書を入手したいと思う。珍しく視る価値ありのRoadshow。