富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

5月7日(月)快晴。そういえば昨日、単発上映の日本映画が掛かった小屋で会わなかった例しのなきATV局に勤めしW君と当然のように『愛のコリーダ』の終演で会ったのだが、話題は『愛のコリーダ』で有名な、軍隊が街を行進していくのに逆らって反対方向へと徒然歩く吉さんのシーンとなり、あれが反戦を意図しているとか吉さんが実は単なる狂色ではないように読み取れるのだが、W君曰く「軍隊はああいうものではない」と、御意。確かに阿部定事件の当時は日本が軍国主義へと歩み始めた時代であり、それを象徴している場面なのだが、軍隊をそう安易に演出に用いていいものか確かに考えさせられ、しかも軍隊が向かう先も吉が向かう先も方向は逆であってもどちらも死であることにW君のコメントが発端となって気づく。競馬仲間のS氏が御成婚遊ばされることとなりS氏より祝言にと川柳を読めとの仰せ、私は自分を川柳作家ではなく俳人歌人だと自分で思っていたのだが、いずれにしても結婚のご披露で川柳はいけません……
結婚はまるで3T大博打 とか
当らぬも当るも馬の気分かな とか
ささ○さん君子外して君子勝ち とか(君子は香港の馬名)
重馬場に踵滑らし地獄かな とか
……いくらでも湧き出でる泉、でもお祝いでかういふのはいけません。エビと打つと蝦と出るのが香港の競馬好きの日本語変換の悪い点だが海老一染之助染太郎風にやはり……
高砂や今宵祝言めでたさは鯛が跳ねても馬が駆けても と
縁談に鯉も祝ふは五月晴れ
とお目出度く読み直し、
駿馬跳ね南の原へと駈け出でて人間万事塞翁が馬
とまぁ日本を出てみたら日本に比べて香港で良かったかなぁ、と詠み締める。
最近、バスの中で余計なお世話にて車内数箇所にあるモニタがエンドレスにて下らぬ放映を続け、しかも画像ばかりか音量もうるさくバスに乗るのが極めて不快、余計なお世話、こういうのが現代社会だとの野暮な勘違い、「安全な労働環境」だの「三分間英会話」だのあんまり煩いので最近はラジオを携帯し安静のためにラジオを聞く不条理。しかし今晩は昨日の『等候董建華發落』が10日から劇場公開されることをこのモニタで知り、こういった映画を上映できる良識と良心に香港は捨てたものではないと少なからず感動す。因みにこの映画、かなり社会的で堅い内容で商業映画として出資も厳しい状況にあったものが、李尚文(David Lee)と艾敬(Ai Jing)が出ることを条件に中國星による製作が決定、とインターネットで拾い読みして知るが、結果的にこの2人の起用は正解。それにしてもこの映画が董君の石頭に届くのか、届いても今度はたかだか映画一本にて煽られぬと強情を張るか、もしくはこの青年たちの釈放を自己の再選に利用し良心派ぶりを見せるか、いずれにしても23名のDetained at her majesty's pleasure のうち赤柱の監獄にいた5名だけを1997年の返還直前に釈放し良心の姿勢だけ見せたPatten総督を映画で梁議員が「政治家は10の要求のうち3は呑んでみせる」と言わしめた通り、いずれにしても政治的判断は汚い事ばかり。