富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

5月6日(日)快晴。暑さ猛々しき極み。午後映画を二本観るため晝前に競馬投票(こういう場合だいたい外すのだが今日も例外なし)、Z嬢と灣仔は新鴻基中心の海都海鮮酒家にて30分待ちで飲茶、同じ海都でも金鐘はCITIC Towerの海都に比べさすが本店、玄関の接待姐から慇懃にて極めて心地好し、但し香港での点心の雄と賞される店だが、ここの点心がそれ程美味いか私には理解できず、とくに味が甘いも塩っぽいもかなり強すぎて、喉が渇いて茶を啜るとは……。この程度の点心なら海都に行かずとも親店の東海にて安く済ませば十分。芸術中心にて大島渚愛のコリーダ』、当然オリジナル版、仕入れを間違え英語吹き替え版という間抜け、とくに藤竜也の声優がまるでジョン・ウェインばりの強い男の声にて吉さんの呟くような言い回しは台無し、何度か観た作品だが更めて松田英子の演技と幇間役の松廼家喜久平の踊りに感服、藤竜也の全裸でビキニの水着の日焼け跡は絶対に赦されないが、こういうところの詰めの緩さが大島渚的、それこそ卑猥など修正するよりこのビキニの日焼け跡こそ修正すべきじゃないのか。日本では昨年、『愛のコリーダ2000』なるタイトルにて「ほとんどオリジナルに近い」作品で上映されたそうで露骨な性器描写など10箇所だか芸術性を損わない程度での修正が加えられたそうだが、75年という既に四半世紀前の作品、むしろ露骨な描写こそ卑猥さを超越しリアルすぎると思うのだが。それにしても20年近く前に76年の日本上映版をビデオにて観た時のあの無惨な修正の醜悪さ。明日より江沢民クリントン李鵬だと世界の不要人、否、要人が集まって開催される某フォーラムにて厳戒体制が敷かれる灣仔界隈、Grand Hyattも準備に余念がないがGrand Cafeにて休息、安部公房の『第四間氷期』を読み始め(これが40年前に書かれたとは!)、豪州はBalgownie EstateのCabernet1998はグラスワインではかなりお勧め(食事にはどうか知らぬ)。芸術中心に戻り、続いて邱禮濤が監督の『等候董建華發落』、そもそもDetained at her majesty's pleasure 直訳すれば「女王が如意にて拘留」とでもするか、法律用語として無期限拘留(終身刑とは違ふ)、但し女王の特赦もあり、未成年犯罪にて有罪服役刑を科せない場合にこの言葉の下に拘留しているのだが、1985年におきた寶馬山での英国人少年少女の殺害は加害者(他に22名)がこの「等候英女皇發落」のまま1997年の香港返還となり、返還前にかなり積極的に返還前の特赦請願が行われたが返還前の最後の立法議会にてこの少年犯たちの減刑は否決され、返還後は最終裁審院は無期限拘留を最高30年の懲役とし(この寶馬山の少年がそれに当る)、これが成人の殺人罪の場合よりも重いという点が問題、その上、すでに司法から「等候董建華發落」となり行政へこの件が回されているため被告本人が上訴できないという問題もあり、こういったかなりシビアな司法問題でしかも返還と現在の特区政府への政治的提議が主題、それを邱監督はかなり上手く話を仕上げ、この主題に三つの崩壊しかかった家族の物語、この懲役囚とそれを支援する女(彼女自身少女の頃、殺人を企図した傷害罪を犯しているのだが偶然に捕まらず自由の身)のラブストーリーと、商業映画としても十分に通用する作品に仕上げ見事。今年はドリアンの当り年、昨日超級市塲にてしかもHK$10に値下げされていた傷むかなり寸前の熟しきったドリアン貪り食す。『噂の真相』で糸井重里を扱下ろす記事あり、糸井のサイトが日本では蹴鞠の中田のサイトと肩を並べるとあり、両サイトを見学。糸井サイトは私がすでに卒業してしまったアトの『ビックリハウス』で連載していた「ヘンタイよいこ新聞」から何ら変わっておらず(ちなみに私の時代の『ビックリハウスはえのもと亮壱のジャパベン合衆国だった)、中田サイトは中田本人の日記を読み、蹴鞠など興味もない私も中田個人にはかなりあの孤独感がいいと思っていたが素人が日記など公開するものではない、「またMAILするね〜」とは、その中学生じゃあるまいに。長嶋茂雄を更めて偉人であると敬服したのは、長嶋はあの全くもって爽快な意味不明の言動をもってしても長嶋の株価を下げず寧ろ長嶋神話を創設し続けるわけだが、中田日記は中田のニヒルで哲学的な蹴鞠神話を悉く崩壊させてしまっている、残念。