癸卯年五月初八。気温摂氏19.8/28.5度。東京でランチの家人を水戸駅まで送り、お寺に寄り掃墓……といふか草花の手入れ。日陰の苔がよく育つてくれてゐる。
昼に泉町2のひろ壽で母に御馳走になる。今でも蕎麦が供されるが季節の食材を使つた盛込みのお料理がメインのやう。もう今日は自動車の運転もないので暑気払ひに麦酒とお酒も一合いたゞく。
水戸芸術館で志の輔独演会。いずれも前座の噺のあと「ちりとてちん」と「千両みかん」。滑舌がけして良いわけでもないし、むしろ難もあるのだが、やはり上手い。「千両」を聞いてゐて、ふと談志のいふところの「人間の業の肯定」を具体的に落語で聞くと、このやうな高座になるのでは?とすら思ふ程。それくらゐ立川流としての進化。だが “Ce n'est pas du Rakugo” と思つてしまふのは、一人語りといふより演劇的でイッセー尾形の一人芝居のやうに感じるのは、志の輔師匠もやはり演劇出身だからなのかしら。落語といふのは本来(といふかアタシが伝統的と思ふのは)噺家はあくまで客観的なストーリーテラーであつて、どこか登場人物に対して白けた見方があつて、状況を見せるのに風が何うの、だの路地の朝顔があれこれとか、近所の小唄の師匠のところから三味線の音が聞こえるだの、角の飯屋からイワシを焼く煙が流れてきて……といつた言葉に、その情景を思ひ浮かべて、その世界に入つてゆくだのが(ネタにも依るだらうが)アタシが何度か聞いた限りでいへば志の輔師匠の落語ではさうした状況の描写はあまり似合はない(やらない)。その噺に登場する人物の心情の描写に尽きる。談志の「芝浜」の流れか。だからこそ芝居のやうに熱がこもり、それはそれですごい高座となるのだが、それは志の輔独自の世界と、とくと理解。
独演会が跳ねて会場を出るなり今日の宝塚記念の結果を見る。今季G1最終で誰が見ても◎イクイノックスだらう。5枠も最善。昨年の皐月賞とダービーこそ2着に甘んじたが秋の天皇賞、有馬記念にドバイ(シーマクラシック)まで三連勝。単勝1.3倍。それもいつもより0を一つ足して単層1点買ひといふ選擇もあり。だがシーズンに1度くらゐは三連単もありかといふ邪念が過り◎軸にアシに選んだのはジャスティンパレス、 ディープボンド、ジェラルディーナ、アスクビターモアだつたが見事に2〜5番人気。せめて1頭だけでも穴馬を入れたいと思ひ5枠◎の前後でポッケリーニかスルーセブンシーズか。いずれも前走はGⅢ1着だが日刊スポーツで井上記者が◎とした前者を入れた。結果10番人気の後者(スルー)が2着。3着にジャスティンパレス。結果論だがスルーは前走(中山牡馬)の上りの時計(33.8)は17頭でダントツ。それを見過ごしたとは。芸術館の館内Wi-Fiで前走の映像も見たが(アタシは最近、スマホのモバイル通信を繋いでゐない)前走の走りはじつに美しかつた。今季最後の最後でトンだ緩い予想とは。
家人が東京から戻るのに合はせ水戸駅。昨日から外食続きだが今晩は水戸東照宮近くの、奈良屋町に下る坂の途中にある小さなフランス料理屋(Au Grand Cèdre)へ。「大きな杉の木の下で」は不思議な名前だが店を一人で!切り盛りするオーナーが大杉さんなのかしら?と家人。もう一組の客との料理、酒をとても適宜なタイミングでサーヴされて実にお見事。料理も本当に美味しく満足。最近は食事中に料理の写真撮らないやうにしてゐるのだが今晩はいたゞいたデザートがあまりにダイナミックで、しかも美味しくて思はず画像を残した。小さな店で4人卓2つと2人卓もいくつか。明らかに狭いが、その狭さもまるで巴里の小さな料理やの客席の距離感そのもの。こんなフレンチの料理やが市街の狭い通りに佇んでゐたとは。