富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

北陸フリーきっぷ4日目

天皇誕生日。陰暦正月廿三日。(金澤)気温摂氏▲0.8/2.7度。金澤で本日の降雪は11cmで積雪は34cmなのださう。

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温泉のお湯がじつによく効用を発揮したのか昨晩のお酒と肴が良かつたからか熟睡して薄い布団でもよい汗をかいて朝起きると外はまた夜中に雪が積もつたやう。それでも能登は金澤に比べると、これでも雪が少ない。今回は金澤でのお能に村上湛君から誘はれてが発端だつたがJR東日本の大人の休日倶楽部で北陸フリーきっぷが4日有効だつたので今日まで。もう帰らなければいけない。


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昔は能登半島の鉄道は、この七尾(和倉温泉)から先、七尾湾を回り穴水まで進み、そこから輪島線が輪島まで、能登線能登半島の最北の蛸島まで走つてゐた。その当時に来ておくべきだつたが今は和倉温泉〜穴水までが第3セクターで「のと鉄道」として運行されてゐるだけ。アタシたちが今日これから穴水まで向かふ列車は和倉温泉を10:39に発つ列車なのに宿から09:40に送迎バスを出すといふ。他に客もゐないのだし(同宿の他2組は自家用車で来てゐた)列車の時間に合はせてくれゝばよいのに、その時間で和倉温泉駅に往くと加賀屋はじめいくつもの旅館の送迎車が集まつてきて加賀屋などさすがに随分の人数が大型バスから降りてきた。こんなに人がゐたら穴水に向かふ客も少なくないと思つたら大半は10:16に出発する大阪行きの直通の特急サンダーバードの客で、何うやら送迎バスのこの運行時間はそれに合はせてゐるやうで、その特急の前の金澤行きに乗る客も少なからず穴水行きはほんの数人。能登島を眺めつゝ七尾湾に沿ひ列車は穴水へ。七尾湾の海水はかなりきれいで海中の岩や藻が列車から見えるほど。こんなところで獲れた魚介なのだから美味くないはずはない。ちなみに〈北陸フリーきっぷ〉は能登半島和倉温泉駅までで「のと鉄道」は別料金。休日で七尾~穴水間乗り放題の周遊きっぷ(1千円)あり。


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穴水で列車を降りたのはアタシらと一人旅のオジサンだけ。何をするでもなく穴水の町を雪のなか歩く。本当ならこの季節「かきまつり」が人気で穴水の町の海に面した廣場では巨大な屋根の下、屋外で牡蠣を焼いて食べる客で賑はふのだが今年は古呂奈で中止。この廣場(あすなろ廣場)には人影もなく廣場は厚い雪で覆はれてゐる。町なかも祝日の所為もあり休業の商売家ばかりで辛うじて理容室が開いてゐる程度(理容室はアルヘイ棒が回つてゐるので営業中なのだらう)。この辺りは埋立地なのだらうが川と堀割が幾條もあり川島といふ地名。
f:id:fookpaktsuen:20220223190316j:image「かきまつり」は中止だが穴水の数軒の旅館や料理屋が観光客を相手に定額(4,800円)で生牡蠣、蒸し焼き、カキフライに蠔のご飯や汁物などの「牡蠣づくし」を出してゐるのださう。〈力〉といふちゃんこ鍋やもこれに入つてゐて、こちらは店内から客の賑やかな声が聞こえてきたので(他の数軒ははたして開けてゐるのかも微妙だつた)こちらに入る。「蒸し焼きとかフライ、蠔めしで良い?」といはれたのは「フルコース」だと事前予約しておいてほしかつたかららしい。旅館の朝ごはんでお腹もそんな空いてゐないので、それで十分。歩いてきたのでまる啤酒。ナマコが美味しいから食べていつてよ、とナマコが前菜。酒は立山。牡蠣の蒸し焼きは10個だつたが12個にサービスされてゐて、生食よりも牡蠣のエキスが出て、これがまた美味しいのなんの、って。これに牡蠣の炊き込みご飯で、ご馳走さまでした。こんなところでちゃんこ鍋やなのはご亭主が相撲とりだつたから。横綱輪島が引退後こちらに来た写真が飾ってある。この穴水は遠藤関の地元。停車場の売店にも遠藤関グッズがたくさん並んでゐた。


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さて、こゝからが今日の旅のメインイベントで〈里山里海号〉に乗車。土休日のみ七尾〜穴水間を2往復半してゐる。特別料金は500円。昨夕、旅館で客室係の大ちゃんと話してゐて「明日は里山里海号に乗るの?」といはれアタシは「えっ、明日は観光列車走るの?」といふ感じ。平日は14:15に穴水を出る上りは通常の列車で、それに乗る算段だつた。この観光列車の運行は週末のみで明日は天皇誕生日で祝日なのだから、この列車の運行があることすら考へもしなかつたとは。まだ席があるかしら?予約は前日迄で穴水の観光案内所がそれをやつてゐるが、昨夕もう閉まつてゐる。当日は七尾、和倉と穴水の驛での切符発売のみ、とあつて今朝それでも観光案内所に電話すると「大丈夫ですよ、たくさんお席がまだありますから」といはれて、実際に今日、穴水について驛で確かめたら先客は1人のみ。


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さすが水戸岡デザインで金澤と輪島の工芸の粋をふんだんに用ゐた美しい車両。定員は最大38名だが、今日のこの列車1両に乗客は3人。客接待の乗務員が3人。海に向いた4人掛けのロングシートを2人でのんびりと。防疫でバーカウンターもあるのにお茶のサービスすらないのが残念。


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往路では走る車窓から「あっ」と気づくと景観を通り過ぎてしまつてゐたが、この列車は絶景のビューポイントで速度をおとすどころか一時停止してくれる。一般車両の地元の乗客にとつてはうれしくもないだらう(この特別運行は通常より15分時間がかゝる)。

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それにしても北海道の平原を走つてゐるかと錯覚するやうな雪景色(北海道は記録的大雪で昨晩も新千歳空港で立ち往生で一晩を明かす客がゐたのださう)。
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能登中島といふ驛で15分の停車時間があつて(単線のため)下り列車を待つて、といふが随分と長い停車時間だと思つたら、この驛には昔の「鉄道郵便車」が保存されてゐて、この観光列車の乗客にはその見学時間が設けられてゐた。


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鉄道郵便車(オユ10)は昭和32〜46年まで72両製造され、このオユ10-2565の車両は主に東京〜北海道で仕事してゐたさう。オユ10の車両は全国でも2両しか保存されてゐないさうで貴重。その鉄道郵便車両が何ういふ経緯で、この能登中島駅に保存されてゐるのかはホームの案内板に明記されてゐるのだが、この保存会がかうして管理する以前、この車両は旧・能登線の甲駅に保存されてゐたさうで現役引退で能登に来る経緯は不明。それにしてもこの観光列車を繋げた一般車両の地元乗客にしてみればビューポイントでの停車は1分くらゐだが、かうして15分も停車されるのは楽しくもないか。


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この里山里海号は七尾行きなので折角だから七尾まで乗りたいところだが乗り換への特急能登かがり火8号が和倉温泉駅始発なので里山里海号を和倉温泉駅で下車。わずか7分とはいへ惜しい。特急の自由席は2両で古呂奈以前の祝日など混雑したのだらうが本日は1車両に数組のみ。これなら七尾駅からの乗車でも全く問題なかつたのだが。JR西日本の681/683系の車両は平成の始めのころの製造で車内の設へもかなり老朽化。

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金澤駅で1時間ほど時間あり、といふか当初は15分ほどの乗り換へで帰路につく予定だつたが先日、生麩とか生菓子とか帰りの新幹線の前に買ふのに、と乗変。17時56分発のかゞやき514号に乗車。定刻での運行だつたが金澤を出てから富山にかけ雪もかなりで「車体に付着した雪の除去」で糸魚川に臨時停車9分。長野を過ぎてから3分取り戻して(この速度だと数分の短縮もおそろしく大変なことだらう)東京着は定刻の20:23より6分遅れ。夕食は金澤駅で買ひ求めた蟹ちらしと鯖の押し寿司など頬張る。酒は能登の〈恋路海岸〉とは何とも安っぽい銘のやう、だが恋路は能登の地名。朝から御酒をそれなりにいたゞいたので珈琲が飲みたくなり車内販売でホットコーヒーはないので東京駅で常磐線特急の乗り換へで珈琲買ひ求めたら〈STANDBY TOKYO〉といふ店で一口飲んだら美味しくて好みの味で、よく見たら猿田彦珈琲であつた。台湾でかなり話題になつてゐたが飲む機会なかつたのでありがたい。恵比寿の間口1間ほどの珈琲店からの展開がすごすぎる。水戸に戻る。東京駅で30分の乗換へ待ちがあつたが金澤を午後6時に発ち水戸に10時には着いてしまふのだから。

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香港では感染拡大で全市民強制検疫ださう。香港の公立病院の医療崩壊につき中央政府の支援で「方艙医院」が火急のスピードで建造されてゐるのださう。香港だけでは何もできない。尊子の漫画(明報)は端午節の粽売りがもう始まつてゐるのは古呂奈で学校の夏期休業が3月からに前倒しになつたからの皮肉。で客は中秋の月餅はいつから売るの?と。
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