富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

東京五輪まであと15日

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結局、東京に4度目の緊急事態宣言。我々はもうこの宣言に集団免疫ができてしまつてゐる。

首相が「コロナに打ち勝った証し」と位置づけている五輪を目前に、東京は4度目の宣言に入る。五輪のありようも、首相が思い描いた形とは異なるものになりそうだ。オリパラ対応に関わってきた自民党衆院中堅は、厳しい口調で語った。「『復興五輪』、『打ち勝った証し』を強調してこのあり様だ。首相は厳しい状況に追い込まれた」(朝日新聞

なぜ、これほどまでに「ダメな国家」になつてしまつたのか。

国境線に区切られた一定の領域から成る、主権を備えた国家で、その中に住む人々(国民)が国民的一体性の意識を共有している国家。(中川長夫)

市民革命を経た近代国家になつてゐないので「国民的一体性の意識共有」がない。これを求めると一億総ファッショとなる。更に問題は主権が存在しないこと。米国といふ宗主国下の隷属状態で主権も実はない。政府対応こそが重要の疫禍対策ができないのは、ある面、致し方ないことか。これは政権交代があつても、この国家の地位が現状のまゝでは何もかはらないだらう。この(上述の)中川先生の「国民国家」に対する定義を呼んだのは岩波書店『図書』2015年2月号で「日本史研究の今」と題する加藤陽子先生と吉田裕先生の対談(戦争を通して見えてくる近現代の姿)にて。そこで加藤先生が旧日本軍の分析を披露してゐる。

(要旨)参謀総長の権限が実は大きくない。参謀総長軍令部総長がもつてゐるのはあくまでも「指示を出す権限」で「命令する権限」はもつてゐない。統帥のトップは現地軍への権限を直接的にはもつておらず天皇の名前を媒介させなければならなかつた。よつて現地の作戦軍司令官や連合艦隊司令長官など前線への規制が弱く現地軍を統制できない。

……これってまさに今のワクチン接種でも陥つてゐる問題。いつたい誰が何を戦略として決めて具体的な戦術を何うするのか、決定権と責任の所在の曖昧。実際の現場を任された知事、自治体の首長レベルも何を信じて何を基準に判断すればよいのかわからない。ロックフェス中止に追ひ込まれた渋谷陽一氏の指摘する点もこれだらう。

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大谷翔平選手が米国プロ野球で目覚ましい活躍。これを同胞として喜ぶわけだが大谷君の力は「日本人の」力ではなく日本人が総体として何か強いものを有してゐることではない。ましてや国民栄誉賞になると辞退するイチローの見識すら感じる。

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アーケードのある水戸南町3商店街(ハーモニーロード)

 昨日の日剩に「パサージュ論」のこと綴つたが日本の商店街のアーケードは悲惨な状況。地方の商店街でアーケードのあるかつての繁華街はシャッター街に。水戸でいへば水戸東照宮に「宮下銀座」なるアーケード街があるが夜の飲食店が辛うじて入居してゐる程度でアーケードも店舗も老朽化でアーケードなのに雨漏りがひどく雨空だと傘をさしてアーケード街を歩く始末。水戸駅前の大通り(国道50号線)もかつては南町1から泉町を経て大工町までずつとアーケードが続いてゐたがアーケードの老朽化で撤去が相次ぎ今では南町3と大工町の雷神前に残るのみ。後者は老朽化で安全性にも問題があり撤去が求められてゐるが商店街がすでに存続できてをらず撤去費用の捻出もできず。南町3は水府の中心部では、まだ老舗店舗が存続してゐる方だが、こゝもアーケードは改修もできておらず雨漏りが目立つやうになつてきた。


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もうすぐ京では祇園祭。日本に戻つたら何十年も離れてゐた日本をあちこち旅行してみようと思つてゐたが、それも能はずのところ久が原T君から以前いたヾいた祇園祭の粽が疫禍、今年はネット通販ありと聞き、それを注文して今日届いた。本来であれば祇園祭でそれぞれのお会所に並んで頂くか、上洛の方から分けてもらふか、さういふありがたいものなのだが。今の厄難消除は「まさに」スガ除去なのだけれどスガは漢字にすると菅で、まさか「厄難菅除」としたら菅公に虞れ多く間違つてもさうは書けない。 

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岩波書店『図書』2015年2月号

杉田敦先生といふとかつて朝日新聞憲法学の長谷部恭男先生との憲法放談で、そこでは論客の長谷部先生の良き聞き役のやうだつたがじつは杉田先生は奥が深く了見の冴へあり。この「秘密」についての文章も、もう6年前のものだが政権と政府で「秘密」が堂々とのさばる現状からすると、これが余計に興味深い。じつに柔らかな思考。