農暦九月十二日。晴。朝六時半すぎに深圳羅湖の驛前旅館発ち香港側に入境。中共側の出境は外国人は行列もなく閑古鳥。それでも東鐡は土曜とはいへ早朝に香港への通勤客少なからず。澤山の農産物を発泡スチロール箱に引いた在郷の婆さん。
まさか深圳側からの行商に非ず。大埔で昼すぎまでの所用済ませ一旦、帰宅。一浴して家人と湾仔へ。中環廣場54階にある台湾の光華新聞中心にて「台湾月」の一連のイヴェントの一つで張照堂(1943〜)の写真展。
張照堂は台湾大学土木科の学生だつた60年代に父(医師)から譲られた写真機で撮影始め時代の要請か日本でいへば細江英公的な印象深い写真多く撮る。写真は無言で静寂だが語るところ多し。いつまで台湾がこの超高層ビルに広報文化機関置いてゐられるのかしら。
湾仔から路線バスでミッドレベルへ。長年、珈琲豆贖ふOlympia Graeco Egyptian CoffeeがOld Baily Stの再開発で立ち退き必要で22日で閉店。
半年前から移転先探してゐたが珈琲焙煎といふ職種柄なか/\好立地なし。家人からPMQのテナントになると聞いてゐたが店内に貼られた案内によると11月から3ヶ月の契約で、その後は未定の由。以前はこのOld Baily Stの坂道で少し坂下の反対側に先代が店を構へてゐたが今の場所に移つたのが1994年だつたと二代目の息子が語る。移転前の店を知つてゐるとは、と驚かれる。四半世紀も、こゝの珈琲愛飲。今日は殊の外、日本人客多い、と店主の弁。Hollywood Rdに面した舊中區警署やヴィクトリア監獄の建物と敷地一体が建物保存の上、大館(Tai Kwun)といふアート系施設となり(こちら)、そこを通り抜ける。これも何も「へぇ……」といふ感じ。香港で今は政治的敏感な?FCCへ。英国牛津から来港中のジャーナリストD君と会ふ。かつて上海に長く住みBBCの特派員もしてゐたD君には私が昨年深秋に上海訪れた際に再会してゐたが、彼は当時すでに愛娘の教育もあり帰英してをり偶然に査証の関係で上海に戻つてゐた。今でも中国専門とするフリーランスで中国での記者査証欲しいが居住もしてゐないと取得困難で愛妻は中国籍のため、その家族査証の申請をしてゐるとか。D君の話では香港でチャイナモバイルの携帯使つたらローミングでは香港でも自由社会のアプリやメディアに接続できぬといふ。つまり中共人民は海外でも中国の携帯ローミング使ふ限り当局の規制下。Wi-Fiにすれば規制外れる由。D君が中国留学時代からの友人S氏と今晩食事の予定ださうで大館で会ふ予定だつたS氏もFCCに来る。獨逸の方だがもともとはジャーナリストでアート業界に転じ今では倫敦の大手画廊。その香港事務所の駐在員。草間彌生刀自の作品扱つてゐるといふ話から草間スタヂオの畏友T君のことや東京のOギャラリーの話など。D君には別れ際「次は欧州か英国で」と。英国のEU離脱はどうなるのか。D君曰く習近平専制は何年かすれば過去の話となるが(晋三政権とて同様)英国のEU離脱は英国の将来へ遺す禍根多くEU離脱の国民投票は一度すでに実施され離脱となつたが民主主義であれば「民主主義は不完全であることが前提で、そのために衆議尽くすものである」から、判断失敗の上での再考はあるべき、と。御意。家人と坂を下り市大会堂へ。香港蕭邦ソサエティがDr Andrew Freris主席の私財投じる尽力で毎年秋に開催の“The Joy of Music Festival”(こちら)で今晩はGiuseppe Andaloroのピアノと弦楽重奏の演奏を聴く。
前半はドビッシー逝去100年での追悼。このコンサートでドビッシーといへばパスカル=ロジェ師だがドビッシー100年ではロジェ先生は多忙だらう。ハナはドビッシー18歳の作品、ピアノ三重奏曲ト長調。まだドビッシーらしさに浅い作品。そのあとはGiuseppe Andaloroのピアノ独奏でプレリュード1冊目の7番と2冊目の3番、12番。そして子どもの情景。かなり彼なりの解釈で力強く面白いが。中入り後はシューベルトの弦楽四重奏曲第12番、 弦楽四重奏断章ヘ長調とピアノ四重奏断章イ短調。マーラー初期の作品。昨日からの疲れで後半はかなり白川夜船のアタシ。
▼英国牛津D君との四方山話のなかで社団条例適用で活動停止処分となつた香港民族党の代表・陳浩天(Andy Chan)は中共の諜報家といふ噂の話となる。政治的背景なかつた陳が雨傘運動に参画して香港独立標榜に至つたのは実は中共による反中央運動内部崩壊のための策略といふ説。真意不明ながら、この説を信じる民主派リベラル大物もあり、と。ところで民族党処分のあと即刻、成立された香港共産党(こちら)が興味深い。
独立運動がダメなら逆に中共賛美の共産主義運動は社団条例上どうなのか、といふ言はゞパロディであるが、今のところネット上でのイメージだけだが香港政府はこれにどう対応するのかしら。「習思想」賛美し中国共産党の建党理念と同様に武装革命を目指し香港で資本主義制度の撤廃と共産主義の実現を主張といふ。
▼「個人の自由、無制限でない」 香港行政長官、独立求める動き巡り https://t.co/LGjQkU2jy1