農暦五月初九。早晩に銅鑼湾。日本人倶楽部三菜に飰す。麒麟小瓶飲み肴は穴子白焼き。お酒がお燗と冷酒とあり一瞬困つてゐると「常温もいいですよ」と香港人マネージャー。かういふ機転は今では日本でも貴重。酒飲みの心地察すとは。常温供されぬ場合、お燗と冷酒のどちら頼むべきか?の香港的答へは常温……強烈な冷房ですぐに常温となるから。〆めでざるそば。これくらゐの一人喰ひが理想的。尖沙咀。文化中心音楽庁。家人とRussian National Orchestra、やゝこしいがThe State Academic Symphony Orchestra of Russia(ロシア国立交響楽団)に非ずミハイル“パタヤ”プレトニョフ先生創設の方、今ではロシア国立より評価高いのか、の演奏会。前半はプレトニョフのピアノで(弾き振りか、と思へばさに非ず)アシスタントの指揮でモーツァルトのピアノ協奏曲24番。家人にいはせればモーツァルトもプレトニョフ先生弾くとこんなに和音が美しいのか、とうっとり。私は元々この曲とかさっぱり理解できず、プレトニョフ先生のあの緩いピアノも「好きっ!」といふわけではないので今一つ食指動かず。アンコールはモーツァルトのロンド K485のピアノ独奏。それにしても何か面白くないのか(もうパタヤで遊ぶことができないからか)いつも笑はわないどころか鬱々としたやうな表情に見えるプレトニョフ先生。まだ63歳なのだが老衰して見えるから。後半はプレトニョフ先生ご自身の指揮でチャイコフスキー5番。この曲も「悲愴」と並び人気曲だがアタシは第三楽章のワルツが面白いと思ふくらゐで昔からピンとこない。プレトニョフあつてのこの楽団なのだが、どこまで指揮者あつてなのか、もしかするとプレトニョフ師ゐなくても真っ当な演奏が出来てしまふのではないか?と思はせぶり。香港フィルに勝るとも劣らず無表情なオケ。でも上手い。アンコールはハチャトゥリアンの仮面舞踏会よりワルツ。このオケこのあと日本ツアーで今週土曜日の、ロシア語的には Chiov か?で調布から。七月中旬の名古屋でのチャイコフスキーのピアノ協奏曲 1番とラフマニノフ2番は前者がプレトニョフ師のピアノではなく16歳の牛田君だとは……。スターフェリーの湾仔の波止場移転して数ヶ月、初めて海を湾仔に渡る。やっぱり不便。
▼日本の全国紙で沖縄の追悼式における翁長知事の発言や晋三のあまりに上っ面だけなぞつた沖縄への思ひやりは報道され晋三に「帰れ」と罵声浴びせた参加者もゐたことまではわかるが香港の新聞ではちゃんと晋三に講義する人の写真まで掲載されてゐる。これを掲載しないことは「配慮」なのかしら、日本では。