富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Winter Sleep

fookpaktsuen2014-12-19

農暦十月廿八日。早晩にかなり久々にFCCでZ嬢待ち独酌。Z嬢来て軽く夕食済ませ油麻地。廟街の源記で渣咋啜る。この店の老女将のまぁ客に親切なこと。今日の天気予報では朝少し降雨だつたが小雨が続き晩にかなりの本降り。晩九時からCinematiqueでNuri Bilge Seylan監督の映画“Winter Sleep”見る。トルコの厳冬のアナトリア舞台に3時間余の作品でカンヌでPalme d’Or受賞。主人公は俳優を引退して岩窟のホテルを経営しながらトルコ演劇史をまとめてゐるアイディンで財産と若い妻をもち、この人を中心にした家族と狭い地域社会の憂鬱とした人間関係、冬の季節を延々と描く。途中のホテルとホテルにある彼の書斎での延々と続く会話がまるで舞台劇。この会話劇は実に面白いのだが地域では嫌はれ物のアイディンの主張がやたら理に適つてゐると思へ、何だか心情的に私は自分の姿をば投影してゐてしまふ。映画のなかで登場人物の誰かに自分に似た人格を見つけ出せるのは、まるでドストエフスキーの小説世界。だがアイディンが若妻と仲違ひして厳しい寒さのなかイスタンブールに行かうとするあたりから「このまま話は何処にゆくの?」といふ不安が生じ最後はこれでお終ひか、結局は何も変はらないのね、また春になるのを待つのね、と3時間余の最後で少し辛くも感じたのだが考へて見ればムーミンだつてそれは同じで、となると淡々と冬の閉ざされた生活を描いただけで、それで3時間余見せてしまふのだから映画としてはやはり大したものだ、と思ふ。

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