富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

七年ぶりの台中

fookpaktsuen2011-09-24

九月廿四日(土)空港へZ嬢と。ラウンジで朝食済ませAE1820便で一路、台中。台湾の台中空港は国府の清泉崗空港で国府空軍の最重要拠点の一つ。ながく民間用途には解放されず。台湾海峡の海から数粁と近いが広い丘になつた独特の地形にもともとは日本軍の造った航空施設で戦後は国民党が反共軍事拠点として拡充。空軍の精鋭たちが結集され民間人とは別に軍幹部の住宅が宛てがわれ幹部子弟教育のための学校が設けられ中共の間者も少なからず。空路の発達する台湾でも台中だけはさうした特殊事情で空港の民間利用が制限されたが先づ国内線、そして今ではその反共光復の拠点だつた空港から香港や大陸の福建、新鮮などに航路あり。台湾西部沿海州の市街地を眺めながら、それよりずっと高台にある清泉崗空港の滑走路に飛行機が着陸。広大な空港で空軍施設は遠い。空港ターミナルに向かう途中に小型の戦闘機が四機ほど丘陵かとカモフラージュされた格納庫にスタンバイしてはゐるが、まるで民間機で利用する者への見せ物のやう。空港ターミナルも石垣島の空港くらゐの施設。正午すぎだつたが台中市内行きの空港バスは今日の始発が12:50で90分毎くらゐ。アタシらと同じ便の大方の客はみんな迎えの自動車かタクシーで散つてしまひ空港バスのバス停にはアタシら含め5人の客。空港の職員のオヤジが「空港バスよか道路の向こう側から路線バスの方が「まだ」頻繁だよ」と教へてくれ9系統の清水から台中市内行きのバスに乗る。台北の郊外にある大雅の町を抜け台中市内に向かふバスは私服の高中生で満員なのは土曜午後の予備校通ひ、もあり。台北のどの都市にも駅周辺に予備校あり日本より更に高い大学進学熱で高中の学生は否応なく大学進学のためのお勉強。台中駅まで行く目的もなく、ただ途中でバスの混雑で後部からトランク、小さなキャリング一つなのだが、を持つて降車も難儀。高中生たちのかなりの数が中友百貨、台中一中近くの若者相手の商業地区で降りるのに合わせアタシらも。どーでもいいチープなファッション売る商店街抜け「市長公館」なる文化施設ご見学。戦前は宮原なる眼科医の邸宅だつた洒落た洋館が戦後、台中市長の公邸として利用され十年前だかに市庁舎など郊外移転に合わせ、その公邸が芸術活動などの拠点に、と下賜されてゐる。建物だけでも歴史的価値あるが民間利用は今ひとつ上手くいつてゐないやうでカフェもあつたやうだが閉めてしまひ後継の募集中、公邸の二階に上がりたかつたが「展示準備中」で上がれず。台中一中街を駅の方に歩き出すと昼食時はたうに過ぎたのにやたら繁盛する牛肉麺など供す小汚い食肆あり。王印製麺だつたか確かになか/\のうどんで牛肉麺を食す。台中在住のY女史より携帯に電話あり自宅に戻つてゐるとのこと。タクシーでそごう百貨近くの台中港路にあるY女史のマンションへ。投宿。アタシらが誰彼のお宅に寄寓なんて本当に珍しいことだが台中は「泊まりたい」といふやうなホテルもなく何よりY女史の独居のマンションが寝室が三つもあり下手なホテルよかずっと立派でお言葉に甘えての寄宿。アタシは午後遅く一つミッションありZ嬢はU女史と市街へ。ミッション完了でお待ちかねの誠品書店へ。勤美誠品なるオシャレな百貨店?の1フロアで書籍の量的には巨大書店としては大したことないが質とセンスの良さは誠品ならでは。エスカレータ上がててすぐのCDコーナーが大掛かりなLPレコード文化復興主義!とかでアナログレコードの集大成。クラシック中心に品揃へと何より廉価に垂涎だが旅行中にLPレコード購入も能はず。現代思想のコーナーはサイードが特集。台湾の書店らしくソファも床も立ち読みならぬ坐り読みの客があふれ書籍読み耽る。広いフロアに2つの収銀台はかなり暇さうで、だうして採算が合ふのかしら、といつも不思議。欲しい本は澤山あつたが、どん/\進化する「聯合文學」誌の「帝國的哀寫」と題された号を一冊購ふ。なぜ「賽絀克巴莱(Seediq Bale)と植民地文学」が特集されるか、といへば台湾で霧社事件が映画となり好評で、「海角七號」の魏徳聖監督が賽絀克巴莱(Seediq Bale)の短篇映画制作したことなどによる。精明商街にゐたお二人と春水堂の角で待ち合わせタクシーで朝馬の方へ。台中市政府のある市街西域の開発ぶり、前回、台中訪れたのは確か2004年だつたか当時はまだ/\郊外の殺伐した……だつたが高級マンション立ち並び、それが異様に外装がローマ風建築だつたり正面玄関のファザードなど豪華さが面白いが、飲食店など拡充し驚くばかり。朝富路の元手寿司。香港から「月の井」の四合瓶持ち込み。Y女史のマンションに戻り今朝三時に起きてしまつたので流石に眠くて他所様のお宅で恥ずかしながら晩十時に就寝。
民進党の祭英文女史が台中で来年一月だつたかの総統選の向け決起集会あり晩にテレビで生中継眺める。集会は民進党色=緑色を一切封じて祭女史のテーマカラーはピンク。演壇の看板の民進党の民の字もなく数千人の支持者も緑色はほんと数へるほど。演説も「維持和平隠定、更要維護主権」と現状維持を強調。かうなると国民党の馬英九と抗して大した争点が失せ馬総統も見た目よりパッとせず祭女史も地味で、北が国民党、南が民進党となると台中がキャッチングボードになるわけで台中を制した者が総統選を制す、なのも明らか。