富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2011-03-20

三月二十日(日)晴。成田からのフライトは18:20発のCX505便で陋宅から成田までは直線距離なら80kmくらゐだが空港行きのバス不通*1で往路と同じく筑波経由。筑波への臨時バスは毎時出てゐるが常磐線の(土浦以北の)不通で筑波経由の方はまだ多いか、と10時のバスに用心して30分前に乗り場に行くがバスは土浦行きもあり東京駅行きは20分に1本!……普段からこれくらい出してよ、で乗り場まで送りに来てくれた母はそのまゝ東京駅行きに乗車の即興。火曜日に香港からの往路から原武史の「「鉄学」概論」読んでゐるのだがまだ読み了らず。やはりどこか落ち着いて本が読んでゐられない。飲んではゐられるのだが。筑波。月曜晩はひっそりと静まり筑波快速鉄道は節電で運行中止に長い行列、何本かのバスが出るだけで皆が皆、罹災者のやうに見えたが今日は平和な、あまりに平和ないつもの休日の、筑波といふ「選ばれたやうに」恵まれた環境の商業地域。月曜にはそれなりの被害もあつたが応急措置は見事。きれいなショッピングセンターに見事に商品が並び……なんだか「日本だなぁ」といふ感慨。空港行きバスで成田。出発フロアに米国大使館のデスクあり。米国だけはさすが……。CXのチェックインカウンターには香港の入境事務處のジャンパー着た職員の姿も。用心してぎり/\間に合ふ一本前のバスにしたが順調で三時間近くあり。CXのラウンジ閉鎖中ださうでJLかAAのラウンジお使ひください、で前者。JALが第二ターミナルに移つて佐倉ラウンジの利用はお初。机上で所用済ませラウンジーバーで淺酌。甘めのドライマティーニ一杯。ぎり/\「「鉄学」概論」読了でCX505便に搭乗。成田空港内の照明は節電でかなり暗め。不便なやうだがいつもこれくらゐでいゝのでは。かなりシックで電気が暗いと人々も自然と大騒ぎせぬし子どもも走り回らず。普段のフライトより観光でもビジネスでもないやうな、なんとなく「離日」といふ家族連れに映る。Yは爆満でCは三分の一ほど。地上乗務員が搭乗前に列でC客に話しかけ「地震発生以降、連日こんな感じ」「CXは客室乗務員組合が強いので成田便業務は懸念あり調整もいろ/\難しい」と。機中いつもあまり酒を飲まぬが今回は気持ちが落ち着かず葡萄酒数杯飲み寝るやう努める。何だか明るさに起こされると空に見事な月。Super Moonは昨日未明と今更気づく。それにしても大きな月。下界は台湾か雲が立ちこめ月は拝めぬだらうが機中からは実に見事。夜なのに雲海が月に照らされ白色の絨毯。星も月の光に負け明るい一等星だけがキラ/\と輝く。摩訶不思議な光景。思ひ出すのは先週木曜の報道(蘋果日報)で十九日は2005年以来のSuper Moon到来で、2005年にはこの数週間前に南アジアの大津波。今回は1992年以来の大接近。この報道の前日(九日)に東北地方でM7.3の地震あり仙台で震度5観測のこれもSuper Moonの仕業か、と書いてゐるが、まさかその翌日にあんな震災にならうとは……。偶然なのか、本当にこの月の磁力が地球に与える影響なのか。それにしても強烈な月を暫し眺める。香港空港到着で被爆検査もなし。期待?外れ。半夜三更陋宅に戻る。さすがに疲れ旅荷解く気力もなし。今晩は香港芸術祭でLeipzigの歌劇団の「トリスタンとイゾルデ」の公演あり観劇の機会逸す。
蘋果日報の連日の地震関連の一面トップ記事。大袈裟はこの新聞の得意だが福島牛乳、茨城のホウレン草に加え東京の飲料水でも放射量数値が出たさうで、牛乳とホウレン草は写真があるが生水は困つたのか浅草・浅草寺の参拝者お浄め用のお水舎の写真(笑)。よく考えるねぇ、とヘンな感心。でも飲まないよね、これは。
▼福島の原発事故。武蔵野のD君より反核筋は「それ、見たことか!」と戦慄走つたが反核筋でも現状は「再臨界はないだろう」といふ現時点の評価の由。反核筋の想定する「最悪の事態」は「冷却がうまくいかず炉心が溶融、格納容器、圧力容器がともに破損、溶けた炉心が床面を溶かし地中に落下、地下水脈に触れて水蒸気爆発を起こす」といふ筋書。そこまでいなくても圧力容器が破損すれば現在よりも更に放射性物質の飛散が強まるといふもださうな。現時点ではそこまでの大詰めはないかしら。筑波の独立行政法人の某研究所の研究員の知己も東京で悪い噂が出ているやうだが、このやうな研究所ではデマ情報は出さぬし政府の情報統括も受けぬ、ときつぱり。放射線影響の元凶たる放射性同位元素も半減期は8日程度で「供給が止まれば」8日あれば放出された物質からの放射線は半分になり「直ぐ無くなつてしまふ」もの、と。今はたゞ放出が可能な限り早く収まることを願ふばかり、と。御意。
▼古典劇評論の畏友・村上湛君が「春在枝頭已十分」と題し京都で「天皇さんも、もう京都に来てはるんやて」の噂について書いてゐる(こちら)。興味深い指摘。

「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史 (新潮文庫)

「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史 (新潮文庫)

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*1:東北の惨禍で潮来あたりの報道はあまりされぬが水郷(茨城県と千葉県にまたがる利根川下流域から霞ヶ浦にかけての低湿地帯)は地震による地盤沈下と水位上昇で液状化現象で道路も陥没、隆起や地割れの被害甚大。北浦・鹿行大橋も通行不能の由。