十二月廿六日(日)朝三時半起き、で四時半過ぎに「三人の王様の銅像」。すでにフルマラソンのスタートのあとでハーフに百人はいるかしら?でチエンマイマラソンのハーフは五時にスタート。当日の申し込みも受理可だし、この規模でレベルは低いとタカをくくつてゐたら、ところがどっこい、中途半端なランナーがかなり少なくペースが速い。アタシは二年ぶり?のハーフで(ちょうど二年前の晦日にぎっくり腰をやつてから一年走れず、こゝ一年も10Kばかり)、日頃まつたく走つてをらぬので、今日もかなりゆつくりのペースで序走。チェンマイのほヾ中心に位置する三人の王様の銅像から城壁の東門(ターペー門)に出て掘割を左回りで東北から北門で折り返し。するとアタシの後ろに十数人しか走つてゐない。しかも3kmのポストで時計を見るとなんと24分過ぎ。キロ8分はセーブしてゐるとしてもあんまり遅すぎる、と慌てゝスピード上げたが、またも3kmの表示に「ん?」と思つたら、よく見たら3BB(Three Broad Band)なる会社がレースのスポンサーらしく、その宣伝看板。実際には4km過ぎで6分半とアタシにしては悪くない。北門から時計回りで、お堀沿ひの歓楽街はまだディスコなど飲み客の少なからぬなか東門、東南から南大門(チェンマイ門)、そして西門(スワンドーク門)からコースは城壁から外れ西に郊外に向かふのだがスタートにもいらつしやつてゐたZ嬢が西門外のスワンドーク病院角で応援。真っ暗ななか路上でランナー応援などコース全程でZ嬢たヾ一人。城外を西に向かひ、その先、空港の方に西南に向かつて折り返し。このころには寺院の僧侶が暗いなか托鉢に出られてをり信者が跪き僧の念仏を授かり米や食料など寄進するのを眺めつつ、のタイらしいランニング。ようやく東の空が白む。城市の西門まで戻り、また掘割を時計回りに西北から北門に向かい北門からゴール(三人の王様の銅像)へ。二時間余、キロ6分はアタシにとつては上出来。やはりマラソンは市街のほうが自動車の排ガスには閉口しつゝ面白いし夜明けに托鉢に歩くお坊さんたちのなかを走るのもタイならでは。ゴールすると白蒸の鶏肉かトンカツにカレーをかけたご飯やスープのお振る舞ひあり。これが美味ひ。路上で応援してゐたZ嬢にお礼をいふランナーあり。Z嬢の話では応援してゐるとタイのランナーはちゃんと合掌して返礼するのださうな、さすが。歩いて旅舎に戻りシャワー浴びて朝食。あまり疲労感もなく午前中は歩いてワロロット市場へ。花市場で仏壇を飾る花を選ぶ若い僧たち。食材など購ひピン河の参道橋渡り寺院参拝して、かなり「ん?」と驚く蒐集癖のあるワットゲート集古館*1。中華街からターペー門まで歩く。途中、ようやく開いてゐた銀の宝飾品屋。前回のチェンマイ旅行でZ嬢が白銀のピアス購つたが針の太さが合わずターペー街のその宝飾店でどうにか今日中に直せないか、とお願ひ。明日では?と店主。一昨日も昨日も通つたがお宅は閉まつてゐる日と時間が長くて、とZ嬢が請ふと「それぢゃ夕方までに直すから」と店主も請け負つてくれた由。「前回これを買つて」とZ嬢がいふと女将が「いつの客だつたか」といふ表情なのでZ嬢は「ほら、お宅のご亭主はライカのカメラが好きで、うちの一緒にきたアレ(アタシは店の外で待つてゐた)もライカのカメラを首から提げてゝ」といつたら「あゝ、あの……」とさすがライカは印象が強いらしい。朝も此処を歩いたが路上に坐して物乞ひの少年をり。あどけない表情で通りかゝる観光客に施しを請ふが日にどのくらゐの小銭が得られるのか。昼すぎの今もまだゐて、アタシはZ嬢が宝飾品屋にゐる間、コンビニで缶麦酒を購つて路上で喉を潤してゐたのだが、ふだんは物乞ひに施しなどせぬのに珍しく小銭を与ふ。世の中はクリスマスだと(仏教国でも)陽気なのに路上で何時間も坐つて通りがかりの旅行者を拝むのは修行僧より過酷な修行だらう。城内に入り昼飯をどうしようか?と歩いてゐたらソンベット市場近くで食堂の主人と視線が合ひ「まるで開高健のやうな」表情につられ、その開高健食堂で豚肉飯や麺を食す。それなりに美味い。ソンテオで城外西北のニマンヘミン方面へ。Z嬢がブッティクなど見て回るあひだにアタシはランニングの疲れ癒さうと按摩。夕方、ソンテオで再びターペー門へ。Z嬢が件の宝飾店へ。今度はアタシも入店。店主と少しカメラ談義(といひつゝ今回の旅でアタシはiPhoneと辛うじてGR-IIを持参したにすぎない)。双眼鏡はライカなのだが。旅ではカメラより双眼鏡のほうがアタシには面白い。宝飾店から路上を眺めてゐると昼に小銭与へた少年がまだ物乞ひ。だが先ほどは本当に寂しそうにしてゐた彼に友だちが一人。同じ年頃の(つまり七、八歳なのだが)観光で来てゐるらしい西洋人の少年で物乞ひの少年と一緒に路上に坐して最初は(多少、怖じ気づいてゐる)物乞ひ君の小銭を見たり数へたりしてゐたが数分のうちに路上の空きコップを投げたり滑らしたりで遊び始め息が合つたやうですつかり夢中。どうも西洋少年の両親は隣のカフェで寛いでゐるらしく息子が路上で物乞ひ少年と遊ぶことには良い意味、無頓着。物乞ひ君が布袋から鳩を取り出す。飼つてゐるらしいが鳩は飛べないやうで羽を広げ飛ぼうとするが路上に堕ちる。そのうち二人は路上でレスリングのやうに取ッ組み合つて遊び始めるほど意気投合。冬のバカンスをチェンマイに遊ぶ少年と、その街の路上で物乞ひする少年の暫しの友だち関係にアタシも思はず少し感傷的になる。写真撮るに能はず。日曜晩の歩行者天国と夜市の準備が始まる通り漫ろ歩きBarliなるちょっと緩いバーで麦酒一飲。マラソンのあと「ちょっと出かけるつもり」で七時間ほどの街歩きとなる。日暮れて南のチェンマイ門の方に歩き堀端の路上の屋台で夕食。香港の若いタイ人W君にタイのRegencyなるブランデーのこと聞いていたので酒屋で購ひ飲んでみる。350ccでB250と安くはないぶん確かにしつかりした味。ウヰスキーよりずつとイケる。さすがに眠くて二更に早寝。
▼チェンマイで驚いたのは喫煙率の低さ。政府の禁煙政策が大きいが銜へ煙草と歩き煙草はほとんど見かけず。バーに寛ぐ西洋人旅行者の喫煙率は高いが。
@fookpaktsuenhkg: URL 古本屋の路上の棚に本が並んでゐて「立ち止まるな!」と言はれてもねぇ……チェンマイにて。
富柏村写真画像 www.flickr.com/photos/48431806@N00/
*1:寺院からこの集古館の運営任されてゐる老人をり、この人のまるで頭脳のなかを見るやうに数百年前の仏教史料から数年前まで寺院で利用してゐたファクス機まで展示あり。この館長?にとつては仏教典もファクス機も外界と寺院の情報のやりとりでは同じなの加茂。